59.ロヨダ、漆黒の空に刻まれる闘志
ロヨダ、漆黒の空に刻まれる闘志
崩れ落ちたロヨダ市の上空に、漆黒の亀裂が走る——
五人のデーモン・エグアマは計画を練り上げ、至近距離まで迫った瞬間、サタンは姿を消した。その目の前で、サオ・バイ所有のゾルントラ号が四機のロゼボール号との戦いに敗れ、動きを止めていた。
鬼外夜叉。
禍月ユラ。
八尋ヒノカ。
紅墨コウヤ。
釈見ニカ。
五人の悪魔は一斉に高い足取りで疾走し、宙へと躍り出た。浑身の力を体内に凝集させ、炸裂するような気迫を纏って——
地上にいる一機のロゼボール号へ、五人が同時に斬りかかる。紅き炎を纏った刀身が、空気を切り裂く。
体を左右に巧みに動かし、連続して斬りつける!
夜叉「斬れ!!」>>
<<「斬れ!!」ニカ
ユラ「斬れ!!」>>
<<「斬れ!!」コウヤ
そして——
ヒノカ「ざっせえ!!」
ロゼボール号の腕部は瞬く間に粉々と砕け散り、慌てて上空へ逃げ上がる。既に機体には大きな損傷が見られた。
「鎧の硬度が高いな」
夜叉は微笑みながら囁いた。
残り四機のロゼボール号は高く浮上し、漆黒に輝く巨体が一瞬——姿を消した。
空気が鳴動し、地面が轟音を上げる。
だが五人のデーモン・エグアマは一歩も退かない。
夜叉がゆっくり刀を掲げる。瞳は鋭く、呼吸は穏やかだった。
「姿を消したね」
ニカが低く言う。
「違う」
ユラは短く答えた。「フェーズを変えただけだ」
ヒノカが膝を曲げ、僅かな微笑みを浮かべる。
「金属の匂いがする……左上だ」
コウヤは頷く。
「そして一機は地面の裏側だ。俺たちが目潰しかとでも思っているのか」
その次の瞬間——
轟!!
一機のロゼボール号が突如現れ、巨拳を地面に叩きつけた。だがその攻撃は空しく、虚空を貫通するばかりだった。
夜叉は既にそこにはいない。
宙に舞い上がった彼は、麗らかに体を回転させ、ロボットの首筋へと真っ直ぐ斬り込んだ。
エネルギーの火花が炸裂し、ロゼボール号は後ずさり、制御システムが混乱していた。
第二のロゼボール号が姿を消し、ヒノカの背後に現れようとした——
だがヒノカはその前に体を回し、悪魔のオーラを纏った肘を叩きつけた。
衝撃でロゼボール号の胴体に亀裂が走り、金属の悲鳴が響き渡る。
第三のロゼボール号はユラとニカを同時に狙い、体を断片化させて三方向から現れた。
「本能か」
ユラは冷たく言い放ち、目を閉じた。
刹那、世界はスローモーションのように遅くなる。
ユラが目を開け、空中の一点を指差す。
「そこだ」
ニカは即座に体を躍らせ、ロゼボール号が現れる瞬間に刀を突き刺した。
撃ち抜かれたエネルギーコアが激しく震える——
コウヤが跳びかかり、巨体を上方から拘束し、引き摺るように地面へ叩きつけた。
地面が割れ、爆発が噴き出す。
一機のロゼボール号は崩れ落ち、二度と動かなかった。
だが残り三機は即座に適応した。
単に姿を消すだけでなく、完全に動きを同調させて——
あらゆる方向から攻撃が襲い掛かる。空、地、後ろ、前……全てが死地と化した。
しかしデーモンたちは揺るがない。
まるで一体の生き物のように戦う——
夜叉が攻撃軌道を断ち切り、ヒノカが圧力を粉砕し、ユラが戦闘の律動を読み、ニカが隙を突き、コウヤが束縛して打ち倒す。
ロゼボール号のどんな攻撃も、常に一瞬遅れてはじかれる。
第四のロゼボール号が上空へ逃げようとした——
ヒノカはさらに高く跳び上がり、悪魔のオーラを満ちた拳で頭部を叩きつけた。
轟音が空を震わせ、ロゼボール号は回転しながら墜落し、内部から炸裂した。
残るは僅か一機。
最後のロボットは完全迷彩を作動させた。
姿も気配も消えた。
五人の悪魔は静止し、全てを感じ取っていた。
やがて夜叉が小さく微笑む。
「一つ忘れているな」
頭を上げると——
「お前はまだ動いていない」
サタンことザラビスが、ゆっくりと宙に浮かんでいた。最初から力を封じ込め、一つまた一つの封印を締めていたのだ。
最後のロゼボール号が彼の背後に現れ、巨拳を振り下ろそうとした——
しかしサタンは既にその上空にいた。
清らかな一つの動作で、一つの封印を解き放つ。
世界の速度が崩れ去る——
彼は宙から降下し、ただ一撃を放った。
叫びもなく、複雑な技もない。
ただ純粋なエネルギーが完全に収束した、その一撃が——
ロゼボール号の胴体を貫通し、反対側へと抜けていき、内部のコアを根こそぎ破壊した。
数秒後、爆発が追いついた。
塵埃が落ち着くと、四機のロゼボール号は全て瓦礫と化していた。
静寂が訪れる。
五人のデーモン・エグアマはサタンを見つめ、一斉に駆け寄って彼を抱きしめ、地面へと押し倒した。
「おい、重いぞ」
サタンは面倒くさそうに囁いた。
その心の中で、ザラビスは最初の友人である存在——オメガ・アルファに感謝を込めていた。オメガは彼に適切な言葉を授け、状況を制御し、的確にコミュニケーションする術を導いてくれたのだ。
実はザラビスがシラナギに地下で捕らえられていた時も、オメガ・アルファの助けがあった。オメガがいなければ、彼はうまく言葉を繋げることさえ出来なかった。だから彼はこの大切な友人に助けを求めたのだ。
——五人の悪魔に抱きしめられたザラビス。
彼らは笑い、安堵と温かさに満ちていた。
しかし——
「ガガガッ!!」
鉄の握りが突如現れた。
ヒノカが体を震わせる。
「あっ!?誰……」(強烈な締め付けで気を失ってしまった)
彼女の身体は宙へと掲げられた。
そこにはゾルントラ号が——
壊れたはずの機体が、巨腕でヒノカを強引に掴んでいた。コックピットからはサオ・バイの豪快な笑い声が響く。
「面白い!こんな美人な悪魔は、これから俺の遊び道具に相応しいな!」
デーモン・エグアマのオーラが怒りで炸裂する。
夜叉の瞳が苛烈に変わり、ユラは歯を食いしばり、ニカとコウヤは即座に動き出そうとした——
だがサタンが夜叉の肩に手を置いた。
静かで、冷徹で、確固とした手触りだった。
「落ち着け」
彼は低く囁いた。
「俺が追いかける」
夜叉は迷いを見せるが、ユラとニカ、コウヤは満ち足りた信頼で頷く。やがて夜叉は温かな微笑みを浮かべた。
「お願いだ……我が主よ」
サタンは微かに微笑み、もう一つの封印を解き放つ。
ハイパーソニックの速度が——
刹那、彼は視界から消えた。
残されたのはただ、吹き抜ける風のみ。
四人のデーモンは静かに佇み、確信に満ちていた。
遠くでは、ずっと戦いを見守っていたソニアとシラナギが囁いていた。
「サタンは約束を破らないよね、シラナギ兄さん」
「もちろんだ」
シラナギは微笑みながら答えた。「あいつは俺たちの友だ。一番頼れる悪魔なんだ」
二人は安心して再び眠りについた。
上空では、新たな追跡劇が幕を開けていた。
そしてコックピットに黒牙と共にいるサオ・バイは——
今、何者が己を追い詰めようとしているのか、まだ全く気づいていない。
「次回更新:1月 5日 20:20 / 21:00」




