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57.四将軍、沈黙の空

その一方で……


ロヨダ市の上空に広がる空は、もはや本来の姿を失っていた。


地面がはがれ落ち、亀裂があらゆる方向へと這い進み、街の至る所に――


ブラックヤニュエーター四将軍の肉体が横たわっていた。


夜魔九郎。


玄厳。


妄耶羅我。


蛇樹娑伽。


全てが倒れている。


岩壁に打ち付けられた者もいれば、地面に半身を埋め込まれた者もいる。戦いの余波に身を震わせるだけで、もはや動けない者までいた。


街の中心には


ソニアと白凪がまだ立っていた。


息遣いは荒く、歩みはふらつき、汗と塵埃が混ざり合って顔に張り付いている。


ソニアの手に握る赤黒の鎌は、もう少しで地面に落ちそうだった。


「倒れるな……二人とも――」


鎌から声が漏れ出す。


「黙れ」


白凪が平板な口調で言い放つ。


「ちょっと……」ソニアは息切れしながら言う。「疲れたんだ」


鎌は即座に静まった。


「……わかったわ」


しばしの沈黙が流れる。


やがて声は再び響き、今度は何かと気取った軽い口調だった。


「そうだな」サタンことザラビスは自信に満ちた声で語る。「読者の皆さん、きっと気になってるだろう? どうしてここまでたどり着けたのか、その経緯をね」


ソニアは顔をしかめる。


「『読者』って何だ、サタン?」


「遅いぞ」


鎌が震える。


そして時は逆流した――


十七時間前


一歩を踏み出した瞬間、大地が炸裂した。


エネルギーの衝撃波が一気に戦場を駆け巡り、塵埃が高く舞い上がる。鋼鉄がぶつかり合う音は連続する雷鳴のように轟き響く。


ブラックヤニュエーター四将軍が佇み、二人の影に向き合っていた。


夜魔九郎が一歩前に出る。黒き霊気が濃煙のように翻る。


玄厳はそばに佇み、冷静な眼差しで一点を見つめている。


反対側には妄耶羅我と蛇樹娑伽が悪戯な笑みを浮かべ、圧倒的な重圧を放っていた。


「あとは貴様らか?」蛇樹が嗤う。「生意気だな」


白凪はため息をつく。


「早く済ませろ。長引くのは嫌いだ」


ソニアは鎌を一回転させる。


「先に倒れた方が奢りだぞ」


鎌が囁く。


「耐久力、回復力、スタミナ全開だ。疲れるなんて考えるな」


その瞬間、戦いは炸裂した。


夜魔九郎が先に攻め寄せる。


一歩――


圧力が爆発する。


白凪は髪の毛ほどの僅差で回避し、背後の地面は瞬く間に粉々になる。体を回転させて素早く反撃するが、玄厳が既にそこにいて進路を遮る。


彼らの動きは速く、的確だ。


無駄な技は一つもない。


一歩一歩が死の脅威だ。


白凪は後退しながら再び前に蹴り出し、動きは閃光のようだ。位置を入れ替えて九郎を追い込み、死角から迫る玄厳の攻撃をかわす。


夜魔九郎が唸る。


「俺達の動きを読んでる……」


「読んでるんじゃない」玄厳は冷たく返す。「適応している」


白凪はため息をつき、そして――


さらなる加速に入った。


足が地面に触れる度に亀裂が走る。攻撃を連続して浴びせ、夜魔九郎を防御に追い込む。


九郎は後ろへと弾き飛ばされる。


一方、ソニアは独りで二将軍に立ち向かっていた。


妄耶羅我が正面から豪快な攻撃を仕掛け、蛇樹娑伽が側面を取り囲み、隙を探っている。


ソニアは一歩も引かない。


攻撃の狭間をすり抜け、鎌は生きた影のように回転する。一振り一振りが僅差で相手に迫り、常にプレッシャーを与え続ける。


「疲れないのか?」蛇樹が呆れたように言う。


鎌が小さく笑う。


「疲れる? そんな概念は今休暇中だわ」


ソニアは高く跳び上がり、体を回転させながら豪快に鎌を振り下ろす。妄耶羅我は必死で防御に構える。蛇樹が背後から攻撃を仕掛けようとした瞬間――


空中で体を捻転させ、鎌が蛇樹の喉元に僅かに触れる寸前まで迫った。


二対一。


しかしソニアはリズムを掴み始めていた。


転換点


白凪が一気に前へと駆け込む。


一撃――


二撃――


三撃――


夜魔九郎はついに正面から強烈なダメージを受け、遠くへと吹き飛ばされる。地面に激突した彼の体はもはや動かない。


玄厳が一瞬だけ凍りつく。


「……九郎」


一方でソニアは追撃をかける。


妄耶羅我は後退し、蛇樹娑伽はバランスを崩す。鎌の動きは途切れることなく、繊細だが確かに致命的だ。


ほんの数秒で――


妄耶羅我と蛇樹娑伽はほぼ同時に倒れた。


大地が激しく震える。


遠く離れた場所から、


ブラックヤニュエーターのリーダー、小虎楽梅奈が全てを見つめていた。


目を細める。


「馬鹿げてる……」


最強の一角とされる夜魔九郎が


あっけなく倒れかけている。


だが彼をさらに苛立たせていたのはそれだけではない。


何かがある。


異質なエネルギー。


知らない重圧が――


まるで別の世界から、何者かが見つめているような感覚だ。


「力が……強すぎる」


つぶやく声に怒りが混じる。


彼は知らなかった。


気づいていなかった。


デーモンエグアマ五柱の魔王達が、そこから遠くない場所にいて静かにこの戦いを見守っていることを――


そして遥か地底深くで、


はるか古の、一つの世界を滅ぼすほどのオーラが、ゆっくりと鼓動を刻んでいることをも――


小虎楽は歯を噛みしめる。


「うっとうしい……」


再び現在へ


時の流れが戻り、ソニアと白凪は荒廃した戦場に立ち続けていた。四将軍は既に倒れている。


鎌が満足げな笑みを浮かべる。


「もういいだろう、物語を進めよう」


ソニアは長いため息をつく。


「……あれは何だってんだ、サタン。『読者』ってヤツは……本当に、やかましい奴だな」


白凪は頷く。


「なんであの戦いの場面に戻ったんだ? 二度疲れたよ」


遠くの方で――


何かが蠢き始めた。


そして闇の向こうから、


さらなる大戦がその番を待っていた。


世界コトラットの中心から遠く離れた場所にいたノロは、そっとつぶやいた。


――この世界を手放しで狙う者達を、掃除する時が来たのだ――

「次回更新:1月 3日 20:20 / 21:00」

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