52.運命が衝突するとき
コトラト世界の黄昏
漆黒に近い紫紅の光が空を裂いた。まるで神々しき力が天を割ったかのように、世界はその一閃で絶望の色に染まっていた。崩れ落ちる街並み、巨人の手で掻きむしられたような地肌——その混沌の真ん中に、巨体がそびえ立っていた。
ゾルントラ。黒と紅が絡み合う回路が生命の鼓動のように脈打つ鋼鉄の巨兵。一歩一歩が大地を轟かせ、その動き一つが空気を震わせる。
「……見当たらぬ」
主操縦席に座る早桜は目を細め、冷たい声で呟いた。「あの悪魔の痕跡が消えた」
ゾルントラは数十の地域を平らげ、デーモン・エグアマの小さな巣窟を次々と破壊してきた。だが彼らの力の根源は依然として見つからない。早桜は拳を握り締め、額の血管が浮き出る。一つだけ確かなことがある——悪魔たちは愚かではない。彼らは遠くから危険を察知できるのだ。
「逃げたのか」小声だが確かな口調で。「必ず遠い場所へ」
指は操作パネルを素早くなで、悪魔の核心探知スイッチを探す。その時、黒牙の緊張した声が響いた——いつもとは違う、尖った声だった。
「黒牙?」早桜は鋭く顔を向ける。
「これを見ろ」黒牙は遠くを指差す。「今すぐ」
そこには巨大なエネルギー球体が浮遊していた。人為的な星のようにゆっくりと回転し、内部では紅、紫、黒、金の光が激しくぶつかり合い——まるで数百の力が無理やり一つに閉じ込められているかのようだ。早桜は数秒間息を呑み、そっと冷笑した。
「なるほど……彼らが隠していたのはこれか」囁くように。「これさえ手に入れば……俺はこの世界の覇者になる」
「黒牙」早桜は即座に命令を下す。「取りに行け。今すぐ」
黒牙は一気に飛び出す。手がエネルギー球に触れた瞬間、凶暴な震動が空気を切り裂いた。数十の古代シンボルが浮かび上がり、拒絶しようとする。だがゾルントラは今まで一度も使われなかった核心スロットを開放する。早桜が球体の内部をスキャンすると、その表情は突如として変わった。
「……これは普通の悪魔の力じゃない」
黒牙が顔を向ける。「どういう意味だ」
早桜は唾液を飲み込む。声に初めて動揺が混じった。「これは……ノロの超自然的な力だ」
「早く。今から撤退する」
だが後退する前に、早桜はエネルギー球をスロットに打ち込んだ。
ゴォォォォーッ!
ゾルントラは雄叫びを上げる。周囲の重力が逆転し、大地が浮き上がり、建物は内側に折りたたまれ、デーモン・エグアマの基地は数秒で黒い穴に飲み込まれた。振り向くことなく、巨兵は一気に天空へと飛び立った。
レーダー画面には点が浮かび上がった。
緑色六つ。
黄色五つ。
黒色二つ。
早桜は冷たく笑う。「彼らがだ」
一方、地下深くの別の場所。ドラゴン・バーストの基地は内部から崩壊していた。監獄の壁が砕け、天井が落ち、濃い塵埃が空気を満たす。瓦礫の真ん中で、一つの体が動いた。
「ふ……ぐぅ……」
緋田鋼音は目を開けた。頭がズキズキと痛み、世界は回転しているように感じた。立とうとするが、何かが頭を叩いた。
ドアッ!
体は前に倒れ、不意に額が床の古びたスイッチを押した。
カチッ。
一斉に監房の扉が開いた。
「……な、何……?」小さな声が響いた。
猛烈の蹴りを受けて昏いていた零次郎が目を覚ます。鋼音が動けないように倒れ、全ての扉が開いているのを見て目を見開いた。
「まさか……鋼音……猛烈が……?」
彼はすぐに周りの人々を起こす。最初に醒めたのは翔也で、息遣いは荒い。次いで困惑した表情の結花が起きた。零次郎は時間が許さないと知り、感情を抑えて簡潔に説明した。
「逃げる準備をする。まず他の人たちを起こさなきゃ」
彼らは夜、春奈、猛、城史郎を起こした。残り少ない力を振り絞って翔也は一気に彼らを起こそうとし、体はすぐに力を失った。
「おいっ!」
零次郎と結花が翔也を支え、倒れるのを防いだ。
「俺……まだ……動ける……」翔也は弱々しく笑い、その瞬間意識を失った。
「意識が戻らないわ」結花は慌てた声で。
「城史郎」零次郎は即座に指示する。「翔也を抱えろ」
「俺はあのエネルギー球を取ってくる。俺たちのものに」
その瞬間——
ドゴォン!
巨大な体がエネルギー球の保管庫前に立ちはだかった。
猛烈。体中に傷跡が散らばっているのに、気違いじみた笑いを浮かべていた。
「フハハハ……先にお前たちを殺すか……それとも女たちの体で遊ぶかな?」
夜、春奈、結花は身震いし、恐怖と嫌悪が混ざった表情になった。
零次郎は一歩前に出る。「猛」低い声で。「俺と一緒に」
魔法もエネルギーもないのに、二人はしっかりと立ち上がった。
「俺が球を取る」猛は平然と言う。「仲間のために」
零次郎は鋭くつけ加える。「そしてお前は……ただの障害物だ」
猛烈の顔が怒りに歪む。
「逃げろ!」零次郎は後ろに叫ぶ。「ここは危険だ! 外に敵が来ている!」
結花は涙を浮かべる。「零次郎……死なないで……」
昏いている翔也の唇から、小さな囁きが漏れた。「……気をつけて……きっと……できる……」
外では基地の壁に大きな亀裂が走り、早桜の軍勢が群れを成して世界に侵攻していた。
その頃、デーモン・エグアマの五人の悪魔が白銀とソーニャの戦場を遠くから見つめていた。
——夜叉広凱、兄貴分。
——由良影爪、新しいリーダー。
——釈見二華。
——八平日向。
——紅炭向夜。
「何かが……足りない」日向は呟く。
二華は体を凍らせるように言う。「……エネルギー球が……」
沈黙が空気を圧迫した。だが夜叉は穏やかに笑い、由良に向けて話しかけた。
「大丈夫だ。お前が今リーダーだ。あの巨兵を倒せる。俺たちが一緒だから、一人じゃない」
由良は拳を握り、迷いが残るが——周囲から信頼の視線が注がれていた。
突然、遠くから何かが飛び来た。巨大で、速すぎる。
戦場ではソーニャの手に持つサタンの鎌が囁いた。
「大きなモンスターが来てるぞ」
ソーニャは驚く。「え? 投げ飛ばせないの?」
サタンはあくびをした。「できるけど……まあいいか!」
白銀とソーニャは握り締めた手をさらに力強く締める。前に立つブラック・ヤニュエーターの将校たちは獰猛な笑みを浮かべていた。
大決戦が始まる。
そして天空から五つの巨大物体が降り注いできた。それはノロの所有するロボット『レボーゼル』だった。
コトラト世界は……二度と元には戻らないのだ。
「次回更新:12月 30日 20:20 / 21:00」




