表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/72

43.虚偽の物語

ソニアの意識は遠のいていく。白いパーカーを着た二人の女性と、そばにいる異形の存在が徐々に霞んでいく。雨はますます激しくなり、闇が彼女を飲み込む寸前、ソニアは彼らが近づいてくるのを見た。


闇。

静寂。


そして突然、世界は一変した。


ソニアは明るい草原の上で目を覚ました。暖かい風がそよいでいる。遠くには……小さな男の子が彼女に向かって走ってくるのが見えた。


リュウ。


弟だ。


ソニアは何も考えず、ためらうことなく駆け出した。やがて手が触れ合うやいなや、ソニアは再び失くすのが怖いように、彼を強く抱きしめた。


涙があふれてくる。

「リュウ……どこにいたの……探してたのに……」ソニアの声は震え切っていた。


リュウも温かく、昔みたいに柔らかく彼女を抱き返した。「ぼく、ここにいるよ、お姉ちゃん……」


ソニアは泣きながら小さく笑い、二人は草の上に座り話し始めた。ソニアは全てを打ち明けた——戦いのこと、苦しんだこと……そして新しく出会った友、サタンのことまで。


リュウは無表情に聞き入っていた。そしてゆっくり口を開いた。


「お姉ちゃん、バカだね?」


その言葉は鉄槌のようだった。

世界は一瞬にしてひび割れた。

空はガラスのように砕け散る。

リュウの姿は足元から薄れ、やがて消えていった。


「リュウッ!」ソニアは手を伸ばしたが、そこには何もなかった。


夢は崩れ去った。


ソニアはベッドからハッと起き上がった。


テントの天井を見つめる。息は荒く、頬には涙の跡が残っていた。


目の前には白いパーカーの女性が小さく微笑んでいる。


シラナギだ。


少し横には、異形の悪魔の姿でくつろいで座るサタンがいた。表情は相変わらずののんびりとしたものだ。


「まあ……」サタンは肩をすくめる。「ごめん、作った夢の設定が適当すぎちゃったかな、へへ」


シラナギは小さく舌打ちしながらにっこり笑う。「そうね、確かにサタンのせいよ。人の夢を作ったり操ったりはできるけど、内容がいつも適当なのよ」


ソニアは二人を見つめ続けた。そして急に立ち上がり、言葉も発せずにサタンの元へ駆け寄り、抱きついた。体はまだ震えていた。


普段は冷たいサタンも一瞬、反応を失ったが……やがて静かに彼女を受け入れた。それどころか、優しく背中をなでるように抱き返し、その力でソニアの傷をじわじわと癒やしていた。


シラナギは立ち上がり、温かい笑顔で見つめる。

「おめでとう、ソニア。また会えたね」


サタンはシラナギを見上げる。小さな笑みが浮かぶ。

「じゃあ乾杯か」


シラナギは即座に手を挙げ、二人はカチャッと大きな音を立てて手を合わせた。その間もソニアはまるで久しぶりに家族に会った子供のように、サタンから離れようとしなかった。


落ち着いた頃、ソニアは座り込んだ。髪は濡れていて顔は疲れていたが、瞳には再び光が宿っていた。「……状況がよく分からない」


シラナギはソニアの肩をポンと叩いた。「私が『スクワッター・スネーク』に入ったのは一つの理由だけよ。弟のために復讐をするためよ」

彼女はソニアをじっと見つめた。「そしてあなたは弟を探したいんでしょ?」


ソニアは頷いた。


サタンは声を発することなく、シラナギの心に直接語りかけた——


名前はリュウ。

行方不明になった弟だ。


シラナギは一瞬黙り込み、サタンが結んだ心の繋がりを通じて返した。


「なら……私たち、仲間になろう?」

サタンはのんびりと応えた。

「そう言えばそうだね。でもこの時代のことはまだよく分からない」


シラナギはまた訊いた。「では……何を知りたいの?」


サタンは空を見上げて答えた。「全てだ。だから次元を渡り歩いて、この世界に来たんだ」


しばらく沈黙が流れた。シラナギはサタンを長い間見つめ、初めてこう感じた——この存在は実はとても寂しいのだと。


サタンが顔を向けた。

シラナギは慌てて目を逸らし、頬が少し赤くなっていた。


「どうしたんだ?」サタンは無邪気に訊く。

心の繋がりは切られた。


遠くから見ていたソニアは、少し……妬いている?そう思ったかと思うと、すぐにサタンの横に座り込んだ。「サタン、明日出発しよう」


サタンは顔を向ける。「おい、あのパーティーの連中のこと忘れたか?助けなきゃならないんだぞ」


シラナギは額を叩いた。「そうだ!絶対助けなきゃ!」


ソニアは目を冴えさせ、思い出した——もしここで逃げたら、裏切り者になってしまう。

「分かった……まずは彼らを助ける」


サタンは溜め息をついた。「じゃあ寝ろ。お前たち二人とも」


そしてテントから出ていった。


実は彼らは静かで冷たい森の中にいた。ソニアは激しい疲労からすぐに眠りに落ちた。一方シラナギはしばらく寝ているフリをして……外から小さな音が聞こえると、すぐに目を覚ました。


サタンは一人で岩の上に座り、誰かと話しているようだった。

シラナギは外に出ると、「サタン、誰と話してるの?」


サタンは話をやめ……それから超変なポーズで寝ているフリをした。


シラナギは呆れたように見つめる。

「……本当に寝てるの?」


そして横に座った。


すると突然サタンが声を出した。


「ブーッ」


「キャアアア!!」


シラナギは思わず草むらに飛び込み、それから何度もサタンを叩いたが、相手は当然のように全く動じなかった。


「怒ってるけど……でも笑っちゃう!」

息を切らしながらまた座り込んだ。


サタンは小さく笑った。「ごめんごめん。退屈だったから。君を驚かせたら楽しいかなって思った」


シラナギは長い間サタンを見つめた。

「なんで二度も謝るの?悪魔なのに……心は優しいのね。本当はどんなことがあったの?」


サタンはしばらく黙った後、答えた。「別に何もない。ただ……退屈だっただけだ。それだけさ」


シラナギは真剣な眼差しで見つめる。

「サタン」


「ん?」


「私には未来に叶えたい願いがあるの」


サタンは顔を向けた。「言えよ。後で叶えてやる」


シラナギは深呼吸をして言った。「私は……弟を取り戻したい。この世界を子供の頃のように戻したい。弟を学校に行かせて……平和に暮らして……友達もできて……家族もそばにいて……」

声が震えていた。「それって……叶えられるの?」


サタンは小さく笑った。

シラナギは拒絶のサインだと思い、目が濡れ始めた。


だがサタンはのんびりと言った。


「もちろんだ。心配するな、シラナギ。後で必ず叶えてやる。俺は異形の悪魔だぞ、忘れるな」


シラナギは唖然とし……それから小さく涙を流しながらサタンに抱きついた。

サタンは彼女を受け入れ、星空を見上げていた。


――もう一方の場面――


地下の実験室で、二大組織の幹部は檻の中の人間を見つめていた。その人間の肉体は急速に変化し、姿は乱暴に進化し……やがて突然消え、未知の場所へと転移していった。


一方、モウゲキはシラナギと悪魔サタンの足取りを見失っていた。彼らは痕跡一つ残さず脱出経路を作り上げていた。


モウゲキが呼吸を絶やしたチョウエイの姿を見るや、即座にハガネに連絡を取った。


ハガネは凍りつき、それから大きな怒りを爆発させた。

「本部に帰れ。今すぐだ」


モウゲキは退いていった。

そして夜空に浮かぶ小さな眼が、全てを監視していた。まるでカメラのように。


その眼の向こう側……誰かがそれを操っていた。


眼は閉じ……やがて消え去った。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。

作者です。


更新スケジュールについてお知らせがあります。


来週の月曜日から、

更新は【2日に1回・1日2話】の形式になります。


投稿時間は、

・20:20

・21:00

の2回を予定しています。


物語のクオリティを維持し、

より深く、重みのある展開を描くため、

この更新ペースに変更しました。


更新間隔は少し空きますが、

その分、内容はより濃くなっていきます。


これから物語は、

さらに暗く、重く、そして大きく動き始めます。


今後とも

『虚無王ザラビスは退屈している』

をよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ