42.怒りに満ちている!
暗い雲が低く垂れ込め、荒れた街の上空で何かが爆発するのを静かに待っているかのようだった。傾いた高層ビルの一室で、二つの人影が重苦しい沈黙の中で対峙していた。せきれいな呼吸と擦れる靴音だけが空間を埋める。
背筋を真っ直ぐに伸ばしたソニアは、灼熱の息を押し殺すように肩が上下していた。赤い瞳は風に煽られる炎のように闇を切り裂く。
全身に傷がまだらで、服もボロボロになった長衛邪は、いつものような獰猛な笑みを浮かべている。ひび割れた指先が軽く動く音が、広い部屋に意外なほど響いた。
「まだ立ってられるのか。なかなか倒れないタイプだな」
長衛邪が少し顔を下げると、ソニアは一言も返さずに突進した。足音も立てず、二人体の間の空気が一瞬切り裂かれた。
最初の衝突で床が亀裂を入れた。二人の動きは肉眼では追いつかない速さだった。ソニアは精密な追跡兵器のように連続した攻撃を仕掛け、長衛邪は手の払いと蹴りで応戦する——掌と足が空気を切る音が響き渡る。
轟音が鳴り、建物が揺れ、壁に亀裂が這う。
動くたびにコンクリートの破片が飛び散り、塵が舞い上がって視界を曇らせる。
壁際まで追い込まれかけた長衛邪は短く笑った。「怒ってるな。目によく見えるぞ」
ソニアは相手の言葉にも構わず、体を回転させて足を振りかざした。長衛邪はなんとか受け流したが、その勢いで数歩後退せざるを得なかった。
だが次の攻撃を仕掛ける前に、激しい震動が全フロアを揺るがした。
——ガラッシャーンッ!!
主梁から壁全体にかけて亀裂が走り、床は激しく揺れ動き、周囲のガラスが次々と砕け散った。ソニアは一歩後ずさりしながらも相手から目を離さないが、長衛邪は足元を瞥た。
「この建物……もうダメだな」
つぶやくや否や床が陥没し始め、支柱は次々と折れていく。塵は嵐のように降り注ぎ、長衛邪は獣のように軽やかに体を動かし、崩れ落ちる箇所から逃げ出した。
しかしソニアは放さなかった。
長衛邪が崩れかけた床の端に足を踏み入れた瞬間、ソニアは疾走して体を放り出した。まるで風に乗る炎のような速さだった。
赤い瞳は純粋な怒りでさらに燃え上がる。
大きく宙を駆け巡り、空中で長衛邪を追いかけた。
手がマントの襟元に届いた——長衛邪が文句を言う間もなく、ソニアは相手を引き寄せ、体をひねりながら一気に蹴りを込めた。
轟然とした衝撃音が響き、二人は崩れ落ちるビルを背に、暗い空の下で宙を舞う。瓦礫が共に落ちてきて、石と鉄片の雨が降り注ぐ。
長衛邪は遠く下の荒野へと弾き飛ばされた。そこはまるで群れをなす狂犬のように、理性を失った凶悪犯たちが跋扈する広大な区域だった。
やや遅れてソニアが降下し、膝をつきながら掌を地面につけて着地した。塵が小さな竜巻を巻き上げた。
周囲の凶悪犯たちが振り向く。狂った目つきで、まるで人間ではないような表情だった。
だがソニアは彼らを見もしない。
ただ、ほとんど動けず、息も荒い長衛邪の横たわる場所だけを見つめていた。
一歩ずつ近づく。その足音はまるで戦の太鼓のように響いた。
五歩先——
三歩先——
あと一歩。
戦いが始まってから沸き立っていた怒りを込め、ソニアは足を振りかざして長衛邪の体に叩きつけた。男の体は強く押し出され、数メートル滑っていった。致命傷ではないが、完全に無力化させるには十分な威力だった。
長衛邪が二度と立ち上がれないと確信できるまで、ソニアは手を緩めなかった。
足を下ろした瞬間、再び唸るような声がして——凶悪犯たちが群がり始めた。
数十人——
数百人——
乱れた笑い声と、もはや人間の声とは呼べない咆哮を上げながら、あらゆる方向からソニアを取り囲んだ。
ソニアはゆっくりと顔を上げた。
瞳は虚ろで、恐怖など微塵もない。
ただ冷たく、静かで、そして明確な怒りだけが宿っていた。
凶悪犯たちが突進する。
だが先を越してソニアが動いた。
一秒——
既に群れの真ん中にいた。
もう一秒——
一つの顔面に素早い一撃を放ち、相手は人形のように倒れ込んだ。
ソニアは影のように動き回る。視線は攻撃の方向、敵の速さ、そして接近する全ての体の距離を瞬く間に計算し、言葉一つ発することなく行動を続けた。
鉄棒の斬りつけをかわすため身をかがめ、体を回して同時に二つの攻撃を避け、さらに一つの体を蹴り飛ばす。
肘で相手の胴体を打ち、回転しながら別の者を地面に叩きつける。
ソニアからは一つの声も漏れない。
ただ荒い呼吸と、直線のように疾走する足音だけが響く。
後ろから群がってくる者たちの動きは、足が地面に触れる前に察知していた。
素早く体を振り向けば、右手で相手の胸を打ち、左手の足で別の攻撃を払いのける。
次々と倒れ、崩れ、転がる。
ソニアはまるで止まることのない機械のように、群衆の中で舞い踊った。武器一つ持たずに敵の攻撃の流れを打ち崩し、編み出された陣形を粉砕し、彼らをまるで嵐に煽られる枯葉のように打ちのめした。
頭の中にはただ二つの名前があった。
サタン——弟の名前だ。
その名前は彼女の体を動かす燃料のようで、空気が薄れ始めても、心拍数が耳に響くほど速くなっても、ソニアは動き続けた。
長く感じた数分後、最後の咆哮が静まった。
ソニアの周囲には、もはや立ち上がることのできない凶悪犯たちが転がっていた。
区域は静まり返り、何もかもが静かになった。
ソニアはその中に立ち尽くしていた。
肩は激しく上下し、やがて豪雨が降り出した。まるで空がこの全ての混沌を洗い流そうと、大きな扉を開いたかのようだった。
雨粒が頭と肩を打ち、濡れた髪が顔に張り付く。ソニアは顔を上げて目を閉じ、怒りで熱くなった肌を雨で冷やした。
やがて体は限界を迎えた。
足が震え、ひざまずくように崩れ落ちた。
視界は霞み始め、息も切れ切れになった。
立ち続けたい——
だが体はもはや動かない。
濃い雨の幕の中、目が完全に閉じる寸前に、ソニアは何かを見た。
フード付きの上着を着た女性が、まるで影のように静かに佇んでいる。
その傍らには——ソニアが見たこともない形をした、まるで異世界から来たような存在がいた。
体を動かそうとするが、どうにもならない。
意識が闇に呑み込まれる直前、ソニアは心の中でただ一つの言葉を漏らした。
「サタン……どこにいるんだ……」
そしてすべてが闇に包まれ、ソニアは目を閉じた。




