40.トラップ
サイレンの残光と砂塵の中で
サイレンの赤い残光が薄れかける中、砂塵が舞い上がっていた。わずか数分前まで凄惨な決闘の場であった巨大な建物は、今ではいつ崩れ落ちてもおかしくない脆いコンクリートの山塊に変わっていた。柱は亀裂だらけ、切れた電線から火花が壁に跳ね返り、黒煙がゆっくりとただよっていた。
その混乱の真ん中に立っていたのは緋田鋼だ。体には濃い色の蛇のオーラが纏わりつき、呼吸は安定していて、先の戦いがまるでウォーミングアップに過ぎないかのようだった。周りには四人の者がよろめいていた。若き癒し手の夜、感情が爆発しやすい水魔道士の結花、冷たく状況判断が敏速なテクノ使いの新、いつも老兵のような立ち姿の槍使いの怜二郎だ。
鋼は腕を軽く叩き、砂塵を払い落とした。
「ラウンド1、終了だ」
その声は囁きのようだった。唇の端が上がり、まるでゲームを楽しみ始めた者のようだ。
「で…ラウンド2、準備はいいか?」
夜は震えながらも、少し前に踏み出した。
「鋼…俺たちはまだ負けてない」
「負けてないのか、それとも負けることに気づいてないのか?」
鋼は鼻先で笑い、周囲を見渡した。壁の亀裂はさらに広がっていた。
「んー。ここはもうすぐ崩れるぞ。屋根にぶつかって死ぬのはつまらないだろう?」
考える間も与えず、鋼は振り返って走り出した。
「え…えっ? 逃げちゃったの?」
結花は反射的に叫んだ。
新は素早く首を振った。
「ありえない。逃げるタイプじゃない」
怜二郎は槍を掲げた。
「それは誘いかけだ。落ちないように—」
遅かった。
鋼は巨大なパイプの中に飛び込んだ。そのパイプは地獄への扉のように大きく開いていた。迷いもなく、彼は闇の中に消えていった。
「追いかける!」
夜は鋼に機会を与えたくないと、声を上げた。
「夜、待て—!」
新が呼び止める前に、夜はすでに走り出していた。結局、三人も続いてその金属製のトンネルに入った。足音は長く響き渡り、まるで戦鼓の音のようだった。
巨大トンネルの追走
パイプに入ると、雰囲気は一変した。非常灯の青白い光が湿った金属の壁に反射し、一歩一歩が果てしない巨大な溝を走っているような気分にさせられた。
だが最も恐ろしいのはその状況ではなく、前でさらりと笑いながら疾走する鋼だった。
「早くしろ」
彼は振り返らずに言った。
「さもないと、俺が触れる前に死ぬぞ」
突然、彼の肩から黒い蛇の形をしたオーラが現れ、生きた飛翔体のように滑り出した。夜は転びそうになり、結花は水の盾でその攻撃を受け止め、新は誘導用のホログラムを投影し、怜二郎は槍先で一つのエネルギーの蛇を切り裂いた。
鋼は素早く体を回し、左の壁から右の壁へと跳ね返り、小さな金属製の柱を蹴り飛ばした。鋭い破片が彼らに向かって飛んできた。
「フン! 走りながら手強くやるんだね!」
結花はつぶやきながら、水を操って金属片をはじき返した。
新はテクノバイザーで周囲をスキャンした。
「意図的に曲がらせてる。俺たちの反射神経を試してるんだ」
怜二郎は槍を振り回しながら前進し、また一つエネルギーの蛇を切り裂いた。
「目…目的が何であれ。ここが崩れる前に—」
ドカーン!
巨大な衝撃がパイプを揺るがし、彼らは平衡を失いそうになった。
「行こう! もっと早く!」
夜は自分に無理をして走り出した。
「止まったら、彼はもっと遠くに行っちゃう!」
鋼はそれを聞いてかえって足取りを速め、体は影のように疾走した。
数分後、トンネルは徐々に広がる下り坂の通路に続き…やがて地面から深く、巨大な地下空間へと開けた。まるでコロッサルな闘技場のようだった。
鋼はその空間の真ん中で立ち止まった。
彼は振り返った。
「さあ。着いたぞ」
エネルギー吸収領域
夜が癒し杖を掲げ、攻撃的な癒し光を放とうとした瞬間、体が突然力を失った。
「え…えっ? これは…」
夜はよろめいた。
結花の膝が震えた。
「私の魔法のエネルギー…吸い取られてる…」
新はすぐに異変に気づいた。
「この場所…俺たちのエネルギー出力をほぼゼロまで抑えてるんだ」
怜二郎だけが少し安定して立っていたが、槍のオーラも酸素を失った蝋燭のように薄れていた。
鋼は小さく笑った。
「正解だ。ここは特別な領域だ。お前たちのエネルギーは地面に吸い取られる。俺は…」
体に纏わる蛇のオーラは、逆に強く輝き始めた。
「…このゾーンを支配してる。気持ちいいだろ?」
夜は微弱な攻撃を放った。
その瞬間、鋼はまるでテレポートしたかのように夜のすぐ前に現れた。
「努力はありがとう」
声は平板だった。
夜のお腹に素早い一撃。若き癒し手の息は途絶え、血も出ず、長い悲鳴もなく—ただ絞り出されるような息遣いと共に、夜の体は気絶して倒れた。鋼は彼の襟元を掴み、買い物袋を捨てるように後ろに放り出した。
「夜っ!!」
結花は感情の支配を失った。
彼女はすぐに攻撃に飛びかかり、手を掲げる。力は弱いが、水の魔法が噴き出した。
「貴様…殺してやる!!」
鋼はその場から消えた。
わずか一瞬で彼女の横に現れ、体を回して結花の首筋を的確に蹴った。恐ろしい音もなく、軽い打撃音と共に魔道士の体は吹き飛び、気絶した夜の横に倒れた。
「二人体だな」
鋼は平然と言った。
「残りは一緒に出直せ」
新と怜二郎は言葉を交わさず、目を合わせた。
二人は同時に走り出した。
新はテクノモジュールを活性化し、偽装ホログラムを展開。怜二郎は横から槍の素早いフォーメーションで攻撃を仕掛けた。二人の組み合わせは俊敏で、訓練され、動きはシンクロしていた。回転する攻撃、全ての死角を塞ぐ戦略—。
だが鋼はその全てを平然と読み切った。
彼らの行動はわずか数十秒で終わった。鋼は過激な一撃ではなく、的確な小さな攻撃の連続で二人を効率的に止め、集中力を断ち切って吹き飛ばした。
新と怜二郎の体は倒れ、夜や結花のそばに並んだ。
鋼は手を払い、指先の砂塵が倒れた四人の闘士よりも重要なようだった。
「四人対一人」
彼は微笑みながら言った。
「正直、なかなか面白かったが…お前たちはまだ弱すぎる」
彼は耳元の通信機に手を伸ばした。
「猛撃。四人の標的は安全だ。黒牙に運んでくれ」
猛撃の声はかすれて聞こえた。
「了解だ。だが上の建物で長栄と戦ってる女の子は? まだ終わってないんだろ?」
「いや」
鋼は平然と答えた。
「だが長栄は必ず勝つ。待つだけだ。彼が終わったら、あの女の子も運んでくれ」
その一方で…
崩れかけた建物の別の場所で、もう一つの戦いが終わったばかりだった。
長栄は全身傷だらけ、息を切らしながら立っていた。崩れ落ちた砂塵が砂嵐のように降り注いでいた。前には巨大なコンクリートの山がソーニャを覆い隠していた。
長栄は長い間彼女を見つめた。
「…終わった」
囁いた。
「主要任務は完了—」
彼は少しつまずき、ギリギリ自分を支えて歩き出した。体は疲れすぎて、何も確かめる力がなかった。
長栄の足音が遠のいていくと…
…瓦礫の山がゆっくりと動き出した。
その下から、ソーニャの目がゆっくりと、だがはっきりと開いた。
視界はかすみ、呼吸は苦しく、体中が痛みに襲われていた。だが意識は残っていた。そして最初に心に浮かんだのは痛みではなく…誰かのことだった。
「…サタン…」
その声は微かだった。
崩れた空間は静かで、ほとんど恐ろしいほどだった。
「大丈夫…か…?」
ソーニャの声はほとんど聞こえなかった。だが彼女は依然として話そうとした—どこかにいる仲間が生きていることを、自分自身に確かめるために。
目は再び閉じた。だが今度は意識を失うのではなく、立ち上がる準備をするような閉じ方だった。
この戦い…まだ終わっていない。
更新が遅れてしまってすみません。寝落ちしてしまいました
最新話は無事に更新されています。いつも読んでくださってありがとうございます!




