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36.翔也・春菜・タケル 対 猛撃者

37階の回廊


三十六階から三十七階へと昇るエレベーターの扉が開く瞬間、空気は凍りついた。それは物理的な寒さではなく、戦闘本能をえぐるような、死の予感を運ぶ冷たさだった。


37階の回廊は、息を殺した巨大な怪物の胃袋のようだった。天井の蛍光灯がゆっくりと明滅し、あと数秒で何かが爆発することを知っているかのように。


彼らの前には、コンクリートの崩れかけた壁にもたれかかる、長い黒いジャケットを着た男がいた。唇はゆがみ、薄笑いを浮かべている。瞳には、ほとんど見えないようなうすい紫の光が宿っていた。


猛撃邪もうげきじゃ』。


男は動かない。息遣いさえも感じられない。死んだような静けさが充満していた。


翔也しょうやが半身、前に踏み出す。陽菜はるなが鞘から剣を抜く——「キーン」と、空気を裂くような音が響いた。たけるは槍を回し、穂先に小さな風の渦を巻き起こした。


猛撃邪は口を開かなかった。だがその視線は明確に語っていた。


——『来い。待っていた』


翔也は合図を待たなかった。


まばたき一つする間もなく、床を蹴り、距離を詰めた。次の瞬間、彼の体は矢のように飛び出した。踏みしめた床には、長い亀裂が走った。


ドゴーン!


翔也の体は閃光のような斜め斬りと共に猛撃邪に撃ち込まれる——だが剣は空を切るだけだった。


猛撃邪は音もなく消えた。


「右上だ!」


猛が左側から即座に応酬する。猛撃邪は空中に現れ、流れるように回転し、三人の陣形の真ん中に着地した。陽菜はその動きを読んでいた。下から上へと剣を突き上げ、空間を断ち切った。


ガシャリッ!


金属同士がぶつかる音が響き、白い火花が散った。猛撃邪は空の手のひらで陽菜の斬りをはじき返し、その手のひらには一傷もなかった。


陽菜は三歩後ろに跳び、浅い息を吸い込んだ。「手が…すごく硬い!」


猛は真っ直ぐ猛撃邪に槍を突き刺した。槍は閃光のように伸び、致命的な一撃だった。


猛撃邪は体をただ一センチだけ傾け、槍を首元からすり抜けさせた。そして手で槍の柄を掴み、体を回し——


猛は布製の人形のように後ろに放り出された。


ゴロッ!


猛は回廊の壁に激突し、壁はガラスが割れるように亀裂だらけになった。


「猛!」


翔也が突撃し、低い位置から剣を振り下ろし、膝下から肩までを横切るように斬りかかった。猛撃邪は体を前に屈め、その薄い一撃を、骨がないかのような不気味な柔軟さで避けた。その瞬間、彼は空を叩いた。


ただそれだけだ。


空を叩くだけだった。


だがその一撃の風圧は、一秒もかからずに距離を詰めた。


ドバーン!


翔也は五メートルも後ろに吹き飛ばされ、長靴が床に焦げた跡を残した。


「この人…」陽菜は喘ぎ、「防御の隙間が一つもない!」


翔也は足元を固め、初めて真剣な眼差しで猛撃邪を見つめた。「夢想領域ドメイン・ミンプの使用者だけど、体のスピードも普通じゃない…」


「用意しろ」陽菜は囁いた。「捕食者みたいだ」


猛撃邪は少しだけ頭を上げた。唇の端が上がった。笑いではなく——脅威のようなものだった。


そして彼はまた消えた。


シュッ!


暗い影が翔也の横に現れる。翔也は即座に振り返り、剣を構えた——


だが猛撃邪は既に後ろにいた。


次に左。


そして上。


その動きは単なる速さではなく、敵の視点を操っているかのようだった。彼の移動はどれも非現実的で、まるで回廊自体が彼のために曲がっているかのようだ。


翔也は牙を食いしばった。「距離を弄んでる…」


陽菜は剣を床に突き立てた。


「翔也!猛!ちょっと引くんだ!」


陽菜の剣からは淡いピンク色のオーラが発せられ、徐々に回転してエネルギーの渦を形成した。ガラスが擦れるような高音が響いた。


猛撃邪はそっちを見やった。やっと彼は動いた。


一歩もしないまま、彼は瞬く間に陽菜のすぐ前に立っていた。


陽菜はエネルギーを爆発させるように剣を振り下ろした——


だが猛撃邪はそれより速かった。


彼は陽菜の肩をそっと押した。


そして陽菜の体は電車にはねられたように吹き飛んだ。


「陽菜!!」


翔也は猛撃邪を追いかけ、剣を連続で振り下ろした。それぞれが速すぎて、空中に五つの斬りの残像を残した。


キン!キン!キン!キン!


だが猛撃邪は指二本だけで全部をはじき返した。金属が指に触れるたび、それほど強い斬りにはありえないような小さな「チリッ」という音がした。


翔也は全力で押し寄せ、剣を回し、鋭いフットワークと共に三方向から同時に斬りかかった。


猛撃邪はうつむいた。


翔也の体は空をすり抜けた。


そして猛撃邪はそっと拳で彼の胸を叩いた。


ドカーン!


翔也は立ち上がったばかりの陽菜に激突し、二人は四メートルも転がり続けて止まった。


猛はやっと崩れかけた壁から立ち上がり、息を荒くしていた。額の血を拭きながら、「クソ…こいつはふざけてないな」


彼は槍を床に突き立て、体から青いオーラを爆発させた。三つの猛の残像が現れ——それはスピードの幻だった。


「翔也!陽菜!三人で突くぞ!」


陽菜は息を整えながら頷いた。翔也は既に立ち上がり、眼差しは鋭くなっていた。


「行け!」


三人は同時に飛び出した。猛の槍先からは火花が散り、陽菜の剣は淡いピンクのエネルギーで輝き、翔也の剣は白いオーラを抱えて震えていた。


彼らは猛撃邪を左、右、正面から包囲した。


トリックはない。言葉はない。


ただ完璧な同時攻撃だった。


猛は右側から突き刺す。


翔也は正面から斬り下ろす。


陽菜は左側から横斬りする。


三人は互いにかみ合う歯車のように動き、同時に避けることは不可能な攻撃を形成した。


一瞬の間、猛撃邪は真に閉じ込められた。


そしてその瞬間——


彼の唇に小さな笑みが浮かんだ。


尊大な笑いでも、見下す笑いでもない。


——『ようやく本気になったな』


そんな笑いだった。


猛撃邪は一つの足を上げ、指先で床を叩いた。


カタッ。


そして回廊全体が変わった。


空気が爆発し、床は円形に崩れ落ちた。その足元からは爆弾のような衝撃波が広がり、小さな竜巻のような力で三人の戦士を叩きつけた。


ドドドドンッ!!


彼らの体は後ろに吹き飛ばされた。陽菜は剣を突いて膝をつき、猛は鉄骨に激突して転がり、翔也は天井に叩きつけられてから床に落ちた。


だが彼らは諦めなかった。


翔也は再び立ち上がった。「まだ終わってない…」


陽菜も立ち上がり、手は震えていたが「ここで止まるわけにはいかない…」


猛は槍を掲げ、薄い笑みを浮かべた。「三人で…まだ負けてないだろう」


猛撃邪は彼らを見つめた。その眼差しには見下しはなく、敬意があった。


そして彼は動いた。


シュッ!!


猛撃邪は最初に猛に突撃した。猛は避け、槍を回した。猛撃邪は左腕で受け止め、体を回し、猛の脇腹を叩こうとした——


翔也が斬り込み、その一撃をはじいた。


陽菜は猛撃邪の後ろに忍び込み、剣を首筋に振り下ろした。


猛撃邪は体を前に屈め、斬りをすり抜け、後ろに蹴りを放った。陽菜は間一髪で後ろに跳んだ。


戦いは三方向から吹き荒れる嵐のように、舞い踊り始めた。全ての動きが生きている。誰もが動き続け、一秒の休息もなかった。


剣が空を裂き、槍が風を巻き起こし、猛撃邪の足が空間を蹴り、腕が影のように叩き続けた。


一撃一撃が火花を散らし、床に亀裂を入れ、熱い風を巻き起こした。


翔也は体を反転させ、下から上へと斬りかけた。


陽菜は跳び上がり、上から下へと斬り下ろした。


猛は全力で真っ直ぐ突き刺した。


三つの攻撃は一点に交わった。


そしてその一点に、猛撃邪は両手のひらを合わせた。


パチッ。


小さな音だった。


そして彼らの全てのエネルギーは、そのまま押し戻された。


ドゴーン!!


小さな爆発が圧力を逆転させ、三人の戦士は同時に吹き飛ばされた。翔也は膝をつき、唇から血が滴り落ちた。陽菜は胸を押さえ、猛は小さく笑いながらも、明らかに痛みを隠せなかった。


「こいつは俺たちのレベルじゃない…だけど引けない」


陽菜は再び立ち上がった。「俺たちが倒れたら、ソーニャは上で一人になるんだ」


翔也は剣を再び掲げた。「三人で。本気で。最後の一撃だ」


猛は深く息を吸い込んだ。「いくぞ」


三人は一直線に並んだ。白、ピンク、青——彼らのオーラが同時に立ち上がり、回廊の床に跳ね返り、空気を唸らせた。


彼らは猛撃邪を見つめた。


猛撃邪も避ける意思などなく、彼らを見つめ返した。


翔也が最初に飛び出した。


陽菜は斜めから追いかけた。


猛は最後に跳び上がり、空中から突き刺した。


三つの攻撃ラインは交差し、Xと直線を形成し、全て猛撃邪の心臓に向かっていた。


空気は熱くなり、ズーンという音が響いた。


彼らの力は頂点に達し——


そしてその後…


静寂が訪れた。


ただ猛撃邪の一息の音だけが聞こえた。


彼は指二本を上げた。


それ以上はなかった。


指二本は最初に翔也の剣に触れ、次に猛の槍、そして陽菜の剣に触れた。


そして全てが止まった。


凍りついたように。


三つの武器は、猛撃邪の体からたった一センチ手前で止まった。


彼らは力任せに前に進もうとしたが、指二本は一ミリも動かなかった。


まるで世界が彼らを近づけないように拒否しているかのようだった。


猛撃邪はやっと初めて声を発した。


「…十分だ」


そして彼は少しだけ顔を向け、瞳は色ではなく、オーラのように暗くなった。


「お前たちは相応しい。だが俺は、お前たちが倒さなければならない相手じゃない」


彼らが何を意味するのか問いかける前に——


猛撃邪は消えた。


空気が崩れ落ち、ほとんど崩壊した廊下の中央に、

三人の戦士が息を切らしながら残されていた。


そしてその一方で、ソーニャと残っているパーティは、

チョウエイ・ジャとハガネ・ヒダに対して

共に戦うための準備を整えていた。

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