35.市内での戦い
暁の翳り
暁の光が這い上がる時、薄霧が廃墟と化した街を包んでいた。鈍いオレンジ色の光が割れた窓辺に跳ね返り、まるで密かに見つめる小さな斥候の目のようだった。
瓦礫の中、ソーニャは息を切らしながら目を覚ました。依然として心を突き刺す悪夢からは逃れられていない。「猛撃の夢領域」はたった20秒のはずだったのに、まるで20分も濃厚で苛立たしい闇の中に迷い込んだような気がした。
そしてそばは――
空っぽだ。
いつもサタン、あるいはザラビスが寄りかかっていた場所が……消えていた。
瞬く間にソーニャの体は断崖から落ちるような絶望に包まれた。
心臓は乱高下し、手は震えて止まらなかった。
「サ……サタン……?」小声で囁いた。
応えはない。サタンのかすかなエネルギーさえ、この空間には感じられなかった。
夢領域からの回復中だったアラタが、頭を押さえながら起き上がった。「……何か変だ。俺たちの夢は全員、強制的に切断されたようだ」
ソーニャが魂の半分を失ったような様子を見たユカリは、すぐに近づいて肩を掴み、声を柔らかくも厳しく響かせた。「まずは落ち着いて……リラックスして……深呼吸しなさい。何があったのかも知らないんだから」
だがソーニャは落ち着くことができなかった。彼女の視線は空っぽで、まるで割れたガラスのように鋭かった。怒りではなかった――それは狂気に近い深い憎しみだった。悪魔のような、冷たい憎しみ。
『もし誰かがサタンに手を出したのなら……俺は殺す……滅ぼす……骨の髄まで砕き散らす』
感情が爆発しようとする前に、ショウヤは両手を上げて場を収めようとした。「ソーニャ! まず俺の話を聞け。俺たちは全員、幻術の攻撃を受けたんだ。普通の犯罪者の手じゃない。声も姿も消して俺たちを無力化できる組織が存在するんだ」
レイジロウは地面を調べていた。鷹のような目が一つ一つの凹凸を捉えていた。「足跡が残ってる。たくさんだ。だが一番明確なのは……何かが東の方向に引きずられた痕跡だ」
アラタも地面に手を置いた。「魔法の残滓が……だが透明で、ほとんど検知できない。これは確かに、音を消し、幻の縄で操る技術を使う者の仕業だ」
ソーニャは指を握り締め、手の甲が真っ白になるまで力を込めた。「彼らが誘拐したんだ」
いつも明るかったヨルまで顔が青ざめていた。「サタンって……お前の喋れる武器のことだよね……お前にとって大事な存在だよね?」
ソーニャはただうつむいた。「……それ以上だ」
ユカリはそっと背中を叩いた。「俺たちが取り戻すから」
その瞬間、太陽の光が霧を突き抜け、彼らが見たことのない最悪の光景が広がった。
前に伸びる長い道は完全に崩壊していた。
瓦礫が散乱し、壁は傷だらけで、巨大な物体が衝突したような長い亀裂が走っていた。
アラタは低く口笛を吹いた。「サタンを誘拐した者は、隠れてるタイプじゃないな。まるで『度胸があれば追いかけてこい』と言い放つように、わざと足跡を残しているんだ」
ソーニャはうつむき、少しだけ目を閉じてから、冷たい笑みを浮かべた。「……彼らが来いと言うのなら、来ればいい」
ショウヤは力強く頷いた。「俺が言ったようにソーニャ。俺たちはお前についてくる。お前の用事が終わるまでだ」
「お前たちには自分たちの目的があるじゃないか?」ソーニャの声はまだ震えていた。
ショウヤは小さく笑った。「むしろ目的は同じだ――『スクエーター・スネーク』を叩きのめすこと。もしサタンを誘拐したのが彼らの一員なら……俺たちは逃げない」
ソーニャは彼らを見つめた。ゆっくりと、彼女の表情はコントロールできるようになってきた。「わかった。だが気をつけろ。サタンがそばにいなければ……俺の力は落ちる」
ヨルは親指を立てた。「大丈夫だよ、ソーニャ姉さん! 俺たちが隙を全部カバーするから! まるで完全な戦闘編成だと思ってちょうだい!」
ササメが続けた。「それにサタンのエネルギーはきっとお前と繋がってる。それが俺たちの道標になるんだ」
彼らは準備を整えた。
そして旅は始まった。
巨大建造物へ
長い道はまるで戦場のようだった。一歩一歩、空っぽの建物に反響する音を立てながら進んでいく。この街はかつて人々が生きていた場所だった……今ではただ、人間が理性を失った場所に過ぎなかった。
そして確かに――
曲がり角の陰から、壊れた窓から、溝の中から、ますます狂気じみた犯罪者たちが現れた。彼らは普通の犯罪者ではなかった。目は空っぽで、体は飢えた獣のように動いていた。
「防御陣形!」ショウヤが叫んだ。
だがソーニャは逆に最前線に進んでいった。
戦士のポーズが自然と形作られる――足を少し開き、右手は攻撃の構え、左手はリズムを保つようにかかっていた。風になびく髪、太陽の光に輝く鋭い瞳。
ショウヤたちは見違えるような様子だった。
「クソ……戦闘態勢の時の彼女、めちゃくちゃ美しいんだな……」タケルが囁いた。
ハルナは彼の腕を叩いた。「集中しろ、馬鹿!」
ガシャッ!
最初の犯罪者集団が襲いかかってきた。
そして戦闘は瞬く間に勃発した。
ソーニャの動き
ソーニャは稲妻のように動いた。
体が一気に前に飛び出し、右足で一人の犯罪者の顎を強烈に蹴り上げ、彼は遠くまで弾き飛ばされた。
着地と同時に体を回し、左肘で別の敵の太ももを打ち抜いた。
速い。優雅だ。致命的だ。
「ソーニャ! 左!」ユカリが叫んだ。
ソーニャは半メートル後ろに跳び、素早く体を回し、ナイフを持つ犯罪者の手を掴み、小さな鼻息とともに彼の肘を折ってしまった。
その動きは単なる速さではなかった。抑え込まれた憎しみに満ちていた。
危機一髪のヨル
右側にいたヨルは、焼け焦げた車の陰から犯罪者が現れるのを見落としそうになっていた。
「ヨル、危ない!」レイジロウが叫んだ。
犯罪者はヨルの背中に向かってナイフを振り下ろした――
ドンッ!
黒い影が一気に飛び出した。
ソーニャは高く跳び上がり、体を回転させながら足で犯罪者の首を撃ち抜き、骨が折れる音が響いた。
ヨルは座り込み、ショックを受けていた。「ソ……ソーニャ姉さん……!」
「気をつけろ」ソーニャは短く言った。
笑顔も冗談もない。瞳は冷たかった。
「は……はい! 気をつける!」
テクノロジーを使うアラタ
アラタは輝く二枚の電子カードを取り出した。「ファイア・パルス!」
熱い弾丸のような攻撃が爆発し、前から押し寄せる犯罪者たちを撃ち抜いた。
アラタが指を動かすたび、光の線が飛び出していった。
「トウマ! 左をカバー!」アラタが叫んだ。
トウマはテクノロジーの杖を回した。青い光が丸い盾を形成し、三人の犯罪者の攻撃を受け止め、その隙にハルナが彼らを蹴り飛ばした。
戦いながらの逃走
彼らは街の中心にある巨大建造物に向かって走り続けた。
後ろから犯罪者たちは追いかけてくる。
ヨルは息を荒げた。「彼……彼ら、ゾンビみたいにずっと追いかけてくるんだ……」
「そんな言葉は言うな!」タケルが遮った。
戦闘は移動しながら続いていた。
ソーニャは最前線を率いていた。
扉から、窓から、廃墟の中から犯罪者が現れるたび、彼女はすでに彼らを打ち倒していた。
後ろにいたレイジロウは指示を続けた。「ソーニャ、右!」「ソーニャ、跳べ!」「ソーニャ、前から二人来る!」
ソーニャはその全てに、優雅な殺し屋のように応えていった。
そしてソーニャはショウヤに感謝していた。もし彼がいなければ、自分は理性を失っていただろうと。
巨大建造物到着
建造物は暗く、亀裂だらけだったが、それでも堂々と立っていた。内部のエレベーターは、どこから電源を取っているのかわからないが、まだ動いていた。
彼らが入ると、犯罪者たちは依然として追いかけてくる。
「エレベーターに乗れ! 早く! 残りは俺たちが!」ショウヤが叫んだ。
彼らは戦いながらエレベーターに乗り込んだ。ソーニャは扉が閉まる瞬間、敵を蹴り出した。
エレベーターは上昇していく。
心臓は激しく鼓動していた。
ヨルはエレベーターの壁に寄りかかった。「ク……クソ……これが人生で一番疲れる戦いだ……」
ハルナはにやりと笑った。「まだ終わってないよ。これはただのウォーミングアップだ」
ソーニャは何も言わなかった。瞳は上がり続けるエレベーターの数字に向けられていた。
心の中で……彼女だけが聞こえる声が震えていた。
『サタン……待ってろ。俺が行く』
チリンッ
扉が開いた。
そして彼らの前には、黒い厚手のマントをまとい、血を凍らせるようなにっこり笑いを浮かべた人物が立っていた。
それは猛撃だった。
「やっと上がってきたな。うるさすぎるよ。俺の眠りを妨げるなんて」彼はくつろいだ口調で言った。
ソーニャはすぐに前に進もうとした。
視線は鋭く、声は低かった。「サタンを返せ。今すぐに」
ショウヤはすぐに彼女の肩を押さえた。「彼と戦うのは俺たちに任せろ。お前は上に行き続けろ」
タケルは剣を抜き、ハルナは輝く槍で構えた。「俺たち三人で十分だ」
ソーニャは彼らを一つ一つ見つめた。
勇気があり、決意があり、忠誠心があった。
「……わかった。だが死んではいけない」
ショウヤは小さく笑った。「死んだら、後で幽霊になってお前を困らせるからな」
別のエレベーターの扉が開いた。
ソーニャはトウマ、レイジロウ、ササメ、ユカリ、チハナ・ヨル、アラタとともに乗り込んだ。
扉が閉まった。
その階では、ショウヤ、タケル、ハルナと猛撃との戦いが爆発的に始まっていた。
建物の最上階へ
エレベーターは細かく震えていた。
上の階からは赤と青の光が反射して落ちてくる。
「サタンのエネルギー……近づいてきてる」ソーニャは囁いた。
だが扉が開いた瞬間――
二人の姿が待っていた。
ショウエイ・ジャ
捕食者のようなにっこりとした笑みを浮かべている。
ハガネ
黄色い髪に、紫に輝く手。透明で生きているような縄が体を縦横無尽に巡っている。
「やっと来たな」ショウエイが言った。
「サタンはどこだ!?」ソーニャは声を荒げた。
ショウエイは嗤い上げた。「あの小さな悪魔か? 今‘調査’中だよ。クロキバとシラナギが今、彼で楽しんでるところだ」
ソーニャの瞳はたちまち、冷たく殺気立った色に変わった。
「お前たちを殺す」
トウマ、レイジロウ、ササメ、ユカリ、ヨル、アラタは戦闘態勢に入った。
この戦いが容易ではないことを、誰もが知っていた。
そしてソーニャは心の中で囁いた。
『ショウエイ・ジャ……お前から始める』
別の場所 地下の空間
サタン、あるいはザラビスはサーベルの姿で壁に立てかけられ、封印の結界に囲まれていた。
だが閉じているように見える瞳……実はただの偽装だった。
シラナギが近づいた。表情は冷たかった。
「クロキバ、なんで彼はまだ悪魔の姿に変わらないんだ?」
クロキバは低く鳴き声のような音を上げた。「変なモンだ。待てばいい。変わった瞬間に、首を刎ねてしまえばいい」
二人は一時的にその場を去った。
そして扉が閉まった直後――
サーベルの瞳が開いた。
濃い赤い光が脈打つように輝いた。
世界の終わりの囁きのような低い声で、ザラビスは呟いた。
「オメガ……今が時だ。俺の友が俺を探しているから、今回だけでいい……助けてくれ、オメガ」
全ての空間が細かく震え始めた。
そして別の現実に存在するオメガが、ザラビスのメッセージに応えた。
「『頼む』なんて言うな。俺たちは友だから……今度は俺がお前と一緒にいるよ……この無の存在め」




