【TS転生】魔王軍最強の魔女、サッカー部員になる!
少しでも笑っていただけたら嬉しいです。
私は魔王軍四天王の1人、闇の魔女ジャギー。
魔王様に仕える四天王の中でも、最強の魔法使いとして名を馳せていた。私の操る闇魔法は、魔王様の魔力すら凌駕すると噂されていた……。
ある日、魔王城に勇者一行が侵入してきた。
私は全力を尽くして彼らと戦った。
だが、彼らの力は予想を遥かに上回っていた。私は瀕死の重傷を負い、最後の力を振り絞って、生命を魔力に変える禁呪を発動させた
「滅びよ…… ダーク・フェニックス!」
その瞬間、私の意識は途絶えた……。
気がつくと、私はベッドの上にいた。
(……ここは、どこ……?)
「おい、拓真…… 大丈夫か?」
見知らぬ少年が私を心配そうに覗き込んでいた。
(タクマ……? 誰のことだ……? )
戸惑う私に、彼はさらに声をかけてきた。
「お前、試合中に敵のディフェンダーに頭を蹴られたんだよ。覚えてるか? 」
(敵のディフェンダー……? 勇者一行にそんな者がいたか? しかも、蹴り1発で私を倒すとは……)
私は思わず口を開いた。
「そのディフェンダーというのは、相当名の知れた格闘家か? 」
「……格闘家? おい、本当に大丈夫か? 誰か呼んでくる! 」
少年は慌てて部屋を飛び出していった。
(まずい……。あの者は明らかに魔王軍の者ではない。まさか……勇者の仲間!? 私は捕らえられているのか!? )
私は脱出しようと身体を動かそうとしたが、全く力が入らなかった。
(くっ……勇者との戦闘の後遺症か。こうなれば魔法を……! )
手を動かし、転移の魔法陣を描こうとした。しかし、何も起こらなかった。
(……魔力が枯渇している!? 魔力の実もない……。どうすれば……魔王様……! )
「魔王様~~!!」
私は思わず叫んでいた。
その瞬間、白衣を着た男が慌てて入ってきた。
「落ち着いてください、拓真くん。MRIでは脳に異常はありません。ただ、一時的な記憶障害の可能性があります。少し問診をしましょう」
「名前を教えてください」
「私は、魔王軍最強の魔女ジャギーだ! 」
「……年齢は? 」
「齢900を少し超えたあたりだ」
「ここがどこか分かりますか? 」
「狭すぎて、魔王様のペットすら飼えぬ場所だな。こんな檻では何もできぬ……」
医師はそっとため息をついた。そして、部屋の隅にいた女性にこう告げた。
「お母さん…… 一時的だとは思いますが、記憶障害の疑いがあります。あるいは、『中二病』を発症しているかもしれません」
「中二病!? 中二病って、発症するものなんですか? 」
「はい、拓真くんの年齢では珍しいですが……」
「そ、そんな……」
母親らしき女性は、信じられないといった顔で泣き出した。
その後、私はここが異世界だと知った。そして、ここは「ニホン」という国で、私は深田拓真という名の「コウコウセイ」らしい。
私は男の身体に転生していた。
(残念ながら、今のこの身体は魔力の流れが未熟だ。だが、鍛えれば……)
この世界には、元の世界のような魔法は存在していない……。しかし、「サッカー」という競技の中に、魔法に近い力が存在していた。
「ファイアトルネード」、「エターナルブリザード」、「イナズマブレイク」、さらに聖剣「エクスカリバー」……それらの名は、この世界の書物「マンガ」に記されていた。
また、魔力を回復させる「魔力の実」もあった。この世界では「リンゴ」と呼ばれていたが……。
拓真は「サッカー部」という組織に所属していた。彼もサッカーで魔法のような力を磨いていたようだ。
私は決意した。
この身体を鍛え、サッカーで魔力を高め、元の世界に戻る手段を探し出すと……。
サッカーのルールは、複数の書物で覚えた。
そして、「ブカツ」というものにも、参加しだした。練習の時は、どうやら魔法を使わないようだ。
ある時、「センパイ」に、本気を出さない理由を聞いたことがある。
「週末には公式戦だから、今週は軽めのトレーニングなんだよ。拓真も退院したばかりだから、無理するなよ」
と言っていた。
(やはり、『敵を騙すには味方から』ということか……。魔王軍でも、自分たちの力を見せあうことなどなかったからな……。 『コウシキセン』とやらが待ち遠しい。早く魔法を使いたい……)
そして、運命の日。
「公式戦」が始まった。
仲間たちと共にフィールドに立ち、私は呪文を唱える。
「風よ! 炎よ! この身に宿れ! ファイアサイクロン!!」
炎と風を纏ったボールは、敵のゴールに突き刺さった。
誰もが言葉を失った。
(……フッ。これが、魔王軍最強の魔女の力よ)
ピィイイイイーー!!
審判が笛を鳴らし、ポケットから赤いカードを取り出した。
「……退場、11番、深田くん」
私はフィールドを後にした。
(どうやら、この世界では魔法の使いどころに注意が必要らしい……)
私は、いつかこの世界から旅立つ…… その日まで、サッカーという名の魔法修行を続けるのだ。
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