帰省
大学のときに家を出てからというもの、その遠さから、なかなか実家に帰るのに二の足を踏んでいた。
帰ったのも、大学卒業のとき、結婚するか相手方のご家族とあいさつに行ったとき、それと子供ができたからという連絡をしたくらいだ。
それでも、たまには顔を出そうと思い立ち、家族ともども連れていくことにした。
長距離ドライブということもあって、子供は喜んでいる。
俺と妻は、入れ替わりで車の運転をしているが、それでも実家へと向かう足取りは軽い。
少なからず懐かしさと、あわせて気まずさを覆い隠そうとしている喜びのせいだろう。
「ここだ、ここだ」
車を走らせること、休憩も入れてざっと6時間。
無事に実家へとたどりついた。
もう連絡も入れているから、とは思っていたが、一応インターホンを押す。
声は出ないが、モニター越しに俺らが来たことは分かったはずだ。
そう思っていると、カチャカチャと鍵が開く音が聞こえる。
そして、ガチャン、と扉が開いた。
両親の懐かしい顔、それとなくでた、まずは最初の挨拶。
「明けまして、おめでとうございます。これからもずっとよろしくお願いします」