運命のヒト
ありきたりな内容ですがリハビリがてら。壊れているのは……
俺の運命の人、アサミちゃん。
大学で同じ講義を取っていて、たまたま近くに座った時、びびっと来るものを感じた。
そう、この娘こそ俺の運命の相手だ。
俺は悪い男にたぶらかされたりしないだろうかと彼女を見守ってきた。
郵便ポストだってチェックして厄介なことに巻き込まれていないか、まさしくヒーローの所業。
そして夏になったある日、彼女はゼミの先輩と仲良く話をしていた。
そりゃもう、その手の噂では有名な人。
まずい、このままじゃアサミちゃんが弄ばれる。
俺は万が一のためにと作っておいた合鍵でアサミちゃんの部屋に入るとクローゼットに隠れた。
あの先輩にアサミちゃんを取られるくらいなら、俺が強硬手段に出よう。
そう、これは彼女を守っているのだ。運命の人を、俺は守ろうとしているのだ。
彼女が帰ってきてしばらく。
俺は機を見計らい電話をする。
『はい。アサミですけど……』
「アサミちゃん。俺さ、今君の部屋のクローゼットにいるんだけど」
息をのむ声。
怖いのだろう。でも大丈夫、俺が守ってあげるからね。
『それじゃあお茶を入れるわね』
「え?」
『だって、家の中にいるのでしょう?おもてなしをしないと』
「は、はぁ……」
あれ?何かおかしいような……。
『ほら、早く出てきてよ』
うん、おかしい。
だけどこれは、アサミちゃんが俺を受け入れてくれているってことなのだろうか?
恐る恐る出ていくと彼女はコーヒーを淹れていた。
「いらっしゃい、結城君。角砂糖は2個半だったよね?あと、コーヒーフレッシュは〇〇社のやつだよ」
「あ、ど、どうも……」
あれ、なんで俺の好みを知ってるんだ?
「あっ、結城君汗だくじゃない。着替えないと風邪ひくよ?ほら、これ着て」
アサミちゃんはチェストからシャツを取り出しこちらに投げてくれた。
「これ……男物……」
まさかの男の影!?
わなわな震えるがふと、タグの所に俺の名前が書いてある。
「あれ?サイズ違ったっけ?」
「え?あ、え……」
とりあえず着替えてみると丁度だった。
「結城君、グレー好きだよね?」
「うん、まぁ」
何だ、俺の中でガンガンと警鐘がなっている。
でも、離れられない。完全に彼女のペースにのまれ、そのままコーヒーをいただくことに。
コーヒーを飲みながら世間話をする。物凄く話しやすいし、かわいい。
でも、何か違和感が……
「あれ?」
何だろう、頭がぼーっとしてきた。
すると彼女は俺の方を見てニッコリほほ笑んだ。
「結城君、子供は男の子と女の子、一人ずつがいいな」