表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/49

未来とカナエの再会①

遅くなりました!

 



 目を瞑り10年前のカナエとの記憶を思い起こす。



 そうすると必ずあるところで引っかかる。



 当時から疑問だったことだ。



 どうしてカナエは私がタイムスリップしたっていう、




 ()()()()()()()()()()()()()()()





 足りない頭で考えたけど全く分からなかった。私は目を開き腕時計を見た。約束の時間から30分過ぎている。カナエのやつ…来ない。 


 潮風が生臭い。私は大きなため息をついた。






 『すみません写真いいですか?』


 「は…」


 振り返ると、仲睦まじい男女カップルがいた。女の方はスマホを私に向けて差し出していた。断らせる気ゼロじゃん。



 まぁでも、ここはカップルにとって最高の撮影場所か。


 カナエが待ち合わせに指定した場所。



 今、私は世界三大夕日が見られる港町の橋にいる。


 全長120メートル、幅30メートルの大きな橋。




 そう幣舞橋(ぬさまいばし)から見渡せる夕日は、世界三大夕日と言われているそうだ。海と川の境目にあるこの橋からは夕日が…太陽の輪郭がはっきりと見える。


 そして広大でかつ静かな水面は鏡のように夕日を反射させ、空も海もオレンジに染まった幻想的な景色が広がっている。



 私は大きく息を吸ってから「良いですよー」とカップルに笑顔で言った。生ぬるい潮風が鼻に抜けた。



 「はいチーズ!」夕日をバックに2人の写真を撮った。


 「こんな感じで良いですかね?」と言って女の方にスマホを返した。


 女は真剣にスマホを睨みつけた後「すごい…!背景全部オレンジ色!!ありがとうございます!」と嬉しそうに言った。


 撮り直しにならなくて良かった。


 カップルは手を繋ぎながら橋を後にした。


 『あ、すみません。じゃあ私達も撮ってもらって良いですかね?』

 今度は女3人組に声をかけられた。


 その後、老夫婦、親子、外国人と立て続けに写真撮影を頼まれた。



 橋の上でずっと1人でいるから周囲の観光客から、写真撮影してくれる優しい市民だと勘違いされてしまったようだ。



 あーカナエのやつ、なんでこんな橋の真ん中を待ち合わせ場所にしたんだよ!てか来ないし!


 約束の時間から40分は過ぎていた。



 外国人の撮影を終えた後、また後ろから声をかけられた。


『すみません。私も一枚写真良いですか?』


 あーもう我慢の限界。無理。


「ごめんなさい!私の善意はもう終わ…」と振り返りながら言いかけて、やめた。






 「久しぶり未来ちゃん」






 「か…」





 10年ぶりに彼女に会った。


 

 音が止まった。

 潮風も止んだ。


 一瞬、空間が無になった。


 そして胸がドクンと大きく鳴った。

 私の中で止まっていた何かが動き出した。


 

 「カナエ…」


 

 カナエは黒いマーメイドワンピースを着ていた。袖の部分はシースルー。


 髪型はあの時の私達と同じボブカット。


 あの頃とは違って圧倒的なオーラがカナエにはあった。さすが女優だ。通りすがる人達は全員一度カナエの方を見ている。


 カナエはサングラスをゆっくり外し私のことを見つめた。

  


 「38歳の未来ちゃん…。懐かしいな…。」と言ってカナエは目を細めた。カナエの瞳にはオレンジの夕日がゆらゆら写っていた。


 私は何から話せば良いか分からず黙ってしまった。そんな私の戸惑った様子を察したカナエは

 「未来ちゃんは何も変わってないね?そのボブの髪型も」と笑いながら言った。


 「変わったよ」


 「ふーん…冬馬さんと結婚できた?」


 「できた。子供もいるよ。」


 「えぇ!!こど…こども!?」と言ってカナエは視線を私の顔から私のお腹に移した。


 「大丈夫。もう5歳だから。」


 「良かった。それならもう大丈夫だ。」


 「何が?」

 私は眉を顰めた。


 「未来ちゃんがタイムスリップしても大丈夫ってこと。」とカナエは橋の下のオレンジ色に輝く海を見つめながら言った。


 はぁーまたコレだ。私はため息をついた。


 「あんた28にもなって何言ってるの?私はタイムスリップしてないって10年前に手紙にも書いたよね?」


 「手紙?あーアレね。」と言ってカナエは夕日の方を見てニヤニヤした。


 「なんでカナエは….」


 「2()8()()()()()()()()()!タイムスリップしない…でも、3()8()()()()()()()()()()タイムスリップして17歳の私に会うの!」とカナエは声を張って言った。


 「は?」

 私はカナエが何を言っているのか全く分からなかった。


 「まぁタイムスリップしたら分かるよ。」と言ってカナエはバックから何かを取り出し私の手に渡した。


 「何これ?」

 それは、うさぎのストラップが付いた鍵だった。


 「私の家の鍵!17の私に見せてあげて!」


 「え、待ってカナエ!私全然話についていけてないんだけど」


 「いやぁ…そう言われても。タイムスリップの方法をあの時教えてくれたの未来ちゃんだし…」


 「いやだから…は?」


 何かのドッキリかと疑った。それでも周りを見渡してもTV局らしき人も冬馬の姿もない。



 10年ぶりの感動の再会が、なんだかシックリ来ない。カナエに会って“音が止まった”とか表現した5分前の自分を殴りたい。



 「さぁ未来ちゃん!そろそろタイムスリップしてもらうよ!」と言ってカナエは屈伸を始めた。



 「え、なんで屈伸?!」


 「だってこれから海に落ちるし…」


 あー意味わかんない。5歳の息子の方がまともに会話ができるぞ。頭がクラクラしてきた。


 「カナエ1回、話を整理しよう!あそこの建物でも入ってさ!お茶しながら!」


 私は左手で頭を押さえながら言った。



 「未来ちゃん大丈夫だよ。これからいくらでもお話をする時間はあるから….」


 そう言ってカナエは私のことを強く抱きしめ、体の重心を思い切り左に傾けた。




 私から見て左は川…いや海だ。



 「な…」



 ドップゥンという水の音が鳴った。

 水の冷たさによって一瞬で身体が硬直し息が出来なくなった。




 川と海が混ざり合った水の中、そこにオレンジの夕日が溶け込む。




そこは生と死が入り混じった空間だった。





 死は過去なのか未来なのか、生は過去なのか未来なのか、今まで考えたこともない思想が頭の中に突然流れ込んできた。




 どうやら私はこれからタイムスリップをするようだ。



 やっと覚悟が決まった。タイムスリップをして何をするかよく分からないが。


 さぁ今は薄れる意識に身を委ねよう。


 



ーーーーーーーーーーーーーーー








 「ねぇ…待ってるから」


 「どこで?」


 「未来でだよ。」



 



 


 



 

元々この作品のハッシュタグにSF付けてたんですよ(^-^)


あと4話くらいで完結です。この4話が私が1番描きたかったところです。最後までお付き合い宜しくお願い致します。


感動の再会はまだです笑

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ