表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/49

拝啓 海野カナエ様







 海野カナエ様

 


 この手紙を読んでいるということは、私はカナエに会いに行ける状況ではないということですね。


 手紙を書くのは初めてなので話が前後してしまうかもしれません。お許しを。

 

 まず私の本当の名前は三上忍と言います。

 デリヘルという、まぁ風俗で働いていました。


 本当はタイムスリップなんてしてないんです。あなたの10年後ではありません。途中でバレると思ったのに、なかなかカナエは気づかなかったので驚きました。本当は気づいていたのかな?


 じゃあ、なんでそんな汚い仕事をする私がカナエと出会うことになったのか。カナエはそれが1番気になると思います。


 答えは客です。


 あいつは事件が起こる前、風俗嬢であるミライを指名しました。


 理由はもう分かるでしょう。

 私は貴方にソックリだからです。


 アイツは私のところに2回来てそこから店に来なくなりました。


 そしてテレビのニュースを見て私は貴方に会いにいこうと思いました。これは今でも理由がよく分かりません。


 自分がもう少し仕事に力を入れていたら貴方は被害に遭わなかったと謝罪したかったからなのか。


 過去の自分を救いたかったからなのか。


 本当にこればっかりは分かりません。



 どうしても貴方に会いたかったのです。


 エゴです。カナエの気持ちは汲んでいません。


 自分のために貴方に会ったのです。

 ごめんなさい。



 貴方は私なんかと違って本当に強い子でした。どん底の状況でも警察や弁護士、使えるものは使って前に進もうとする姿勢に私は驚きました。それも被害者を自分と隠して生きるなんて相当神経を使ったでしょう。


 17歳の子ができる芸当じゃありません。

 でも、どこかのタイミングで身体と心を休ませた方がいいと思っています。






 貴方は光ある方に進んでください。

 

 夜なんて間違えてもやっちゃダメだよ。

 私みたいになるから。


 ネットとかで夜職がキラキラに見える時があるかもしれません。でも、それは嘘です。写真と同じで加工しなきゃキラキラに見えない世界です。


 まぁ私が言わなくてもカナエなら大丈夫か。


 


 あぁ手紙書くのって難しい。LINEのメッセージとかも紙に書き起こすとこんな感じで不細工な文章なのかな。




 私はね汚い人間なんだよ。

 お金と美人以外は全部嫌い。


 風俗で働いたことないくせに客としてしか風俗嬢を見たことがないくせに、まるで分かりきったみたいに風俗嬢をテーマにした作品を作る男。


 恵まれた環境で育った地獄を知らない無知な女。

 


 ガイジの介護をしたことない差別禁止を謳う奴。



 綺麗なグラスに入った甘いカルピスを飲んできた奴等が、汚れたグラスに入った泥水を飲んできた奴等の気持ちなんて1ミリも分からないんだよ。



 幸せな環境で育った奴は幸せな人に向けて幸せな物語を書いて欲しいって思っちゃう。


 ごめんカナエ。こんなこと書いて。



 あぁどうしよう。そろそろ時間だ。


 カナエ大好きだよ。


 私はこれからアイツを痛めつけてやろうと思います。人は時に戦うのって大事だと思うの。私みたいな失ってもダメージを受けない人間がやれば全員幸せでしょ?



 人の欲はね抑えられないんだよ。


 じゃあどうやったらその欲を抑えられると思う?


 支配するの。


 心を。痛みを。


 アイツがやったことを私もするの。



 カナエは私が今からすることどう思う?

 想像できないな…。



 もう2度と貴方に会うことはないでしょう。

 どうかお元気で。


 最後に当たり前のことを書くけど許してね。


 カナエ、あなたは何も悪くない。


 もし貴方のことを馬鹿にしたり見下したり、嫌なことをしてきた奴がいたら私がボコボコにするから。



 大好きだよ。



 未来。




 


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ