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私が失ったもの、得たもの

 




 「かぜ強!!」


 私の屋上に入った第一声はこれだった。


 「綺麗とかそういう感想じゃないのか」とリホは呆れながら言った。


 「だって別に綺麗じゃないじゃん!あ!でも床は綺麗だね!」


 屋上の床は綺麗なモスグリーンだった。年に数回しか学生が入らないから床は全く汚れがついていなかった。



 「別に眺めが良いわけでもないけど、なんか良いねリホ!」


 「うん…そうだな」


 私とリホは写真を何枚も撮った。景色の写真、お互いの写真、ツーショット。


 あの日、撮れなかった写真を何枚も撮った。


 風が強すぎて長髪のリホは貞子のようになっていた。

 

 「ねぇリホ!」


 「んー?」


 「私これから踊るね!!」


 私はそう言って靴を脱いだ。


 「踊り習っていたのか?」


 「うん!お母さんが離婚するまで金持ちだったからバレエ!小学生の時やってたよ!」


 そう言って私は鼻歌を歌いながら踊った。


 屋上の床を余すことなく使った。

 久しぶりに大きく足を開いたから千切れるかと思った。



 リホはその様子をスマホで撮影した。


 とても気持ちが良かった。


 屋上には私とリホしかいない。


 


 事件で私はなにを失った?


 処女?友達?信頼?学校?




 じゃあ事件で私はなにを得た?


 お金?好きな人?新しい環境?

 

 得た…か。代償は大きすぎるし望んでいなかった。



 ねぇ未来ちゃん、でもね、



 私、あなたに会えて良かった。

 貴方に会わなきゃ今の私は無いから。


 貴方に出会ったおかげで私、前の向き方を知ったよ。



 踊り終わったらリホは拍手をして、私に抱きついてくれた。私も抱きしめ返した。



 「カナエ…また会おうな。長野なんてバスタ新宿からすぐに行けるさ」


 「うん…」


 「リホ、大好きだよ」


 「私もだよカナエ。」


 

 私達はまた下手くそなキスをした。


 生意気にも舌を入れてみようとしたが、お互いの歯がぶつかり上手くいかなかった。


 そしてリホから体を離し、屋上から東京の街を見つめた。


 別に綺麗でもないし、汚くもない町。


 でもリホと2人でこの景色を見たことは一生忘れないだろう。



 「私行かなきゃ」そう言って私は靴を履いた。


 「もう長野に行くのか?」


 「いや、迎えが来てる。」


 「お母さん?」


 「いや、お節介なお医者さん」と私はニヤリと笑った。


 そう、学校の前に一台の車が停まっていた。車の前には1人の男が立っていた。太陽の眩しさと闘いながら屋上にいる私のことを見つめている。




 冬馬さんだ。

 未来ちゃんの彼氏だ。




 私はドアを開け屋上を後にしようとした。


 「リホはまだいる?」


 「あぁ。私はここでお昼寝でもするよ」


 そう言ってリホは寝そべり手を組んで頭に置いた。


 「ねぇリホ」


 「なんだい?」


 「私の今の動画、放送部のドキュメンタリー大会に出していいよ。」


 「はっ…考えとく」


 「リホ…さようなら」


 「さようならカナエ」


 私は屋上を後にした。




ーーーーーーーーーーーーー




 私は学校を出て、冬馬さんの車に乗った。



 「飛び降りるかと思ったぁ!」と冬馬さんは、合唱コンクール終わりの女子みたいな顔をして私に言った。


 「飛び降りないですよ…」

 私はそう言いながらシートベルトをつけた。


 「今から未来ちゃんに会いに行くんですか?」


 「いや…忍は…あぁ未来は、警察署だからね会えないよ。」


 「じゃあどこに…?」




 冬馬さんはシフトレバーをドライブに切り替え、車を発進させた。


 「未来は君に手紙を書いていたみたいなんだ。今からそれを受け取りに行くよ」

 


 「その手紙…誰が持ってるの?」


 「未来の同僚」


 「同僚…」



ということは風俗か。あぁ…やっぱり未来ちゃんはタイムスリップなんてしてなかったんだ。私と同じ現代に生きる…三上忍…ミライという風俗嬢なんだ。


 じゃあ私があの日、あの時に出会ったのは…。



 いや良い。考えるのはやめよう。


 「未来ちゃんは私に、手紙…なに書いたのかな」

そう言って私は頭を窓につけた。


 あぁ、今日は疲れた。感情がジェットコースターみたいに上がったり下がったりだった。身体も沢山動かした。




 私は猛烈な睡魔に従い目を閉じた。


 夢も何も見なかった。



 そして次に目が覚めると波の音がした。






きゃー!またレビュー書いてもらっちゃった!嬉しい!!

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