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悪女爆誕④ 出し切る

 さぁ未来ちゃん…どうか見てて。


 貴方が戦うなら私も戦うから。




 「あの教師にレイプされた被害者は私!!海野カナエでーす!!」

 私は満面の笑顔で言った。


 クラスは静まり返った。


 そして誰も声をあげず、皆、教壇に立つ私にスマホを向けて動画を撮り始めた。


 私は教壇の上から皆のことを見下ろす。


 ペアワークでいつも私に面倒事を押し付けていた野球部の男も、陰で私のことを努力家だと褒めてくれていた女バレのキャプテンも、ラノベをいつも読んでいる男も皆、私にスマホを向けている。



 あぁそうだよね。


 教室ってこんなもんだよね。


 ここに私の味方は誰も居ないんだよね。




 私は再び叫んだ。


 「お前らみーんな!金田さんが被害者だって指差して陰口、悪口叩いていたけどレイプされたのは私だよバーカ!!」


 私は左手でサイドの髪を耳にかけた。


 「私は!あの教師に騙されて!屋上に閉じ込められて!処女奪われましたー!!!!」


 

 あぁいざ皆の前で口に出すと泣けてくる。いや笑えてくる。



 「木村さん事件起きてから『私だったら自殺しちゃう』ってテレビのインタビューで言ってたよね!!本当にそうなんだ!何回も自殺しようと思ってロッカーで首吊ろうと思ったよ!でも怖くて無理だった!!」


 私は木村さんに向かって言った。木村さんは名指しされたところでスマホを手から下ろして、撮影をやめた。


 「園田さんは、女子1人1人に“被害者ってあなた?”って聞き回ってたよね!あれで“被害者だよ”って私が言ったらどうしてたの!?考えてなかっただろ!?責任取れない質問するなよバーカ!」


 園田さんは「あれは…」と弁明しようとしたが、口をつぐみ下を俯いた。


 「高橋くんは被害者のこと“淫乱JK”ってインスタのストーリーに上げてたよね!私偉いからちゃんとそれに良いね押しといたから!」


 高橋くんはニヤニヤしたまま、スマホから手を離さなかった。


 「山田くんは“梅毒移るから被害者は学校来るな”って言ってたよね。ちゃんと私検査したから!性病なんてなかったよ私汚くないから!」


 山田は“俺!?”とおちゃらけたが、誰も反応しなかった。


 



 行け!行け私!どうせ学校も辞めるんだし!言い切れ!言い切れ私!!



 ここで言い切らなきゃ死ぬまで後悔するぞ。

 

 「私は今日でこの学校退学になりました!!」



 行け。行け。


 「お前ら被害者が誰か分からないからって、皆たくさん私の悪口言ってくれたね!!!私、ぜーんぶ録音してノートに誰がなんて言ったか書いてあるからな!それSNSにあげてお前らの人生終わらせてやるからな!!受験終わりだ!お前らは!」


 きゃはははははと私は笑い叫んだ。



 高橋以外、皆スマホを手から下ろしていた。





 「私は…皆のこと大好きだったよ!!私がレイプされなきゃさぁ…皆のそういう悪いところ見なくて済んだのかなぁ…」


 


 そう言って私はクラス1人1人の顔をちゃんと見つめた。視界がボヤけてクリアになって、またボヤける。涙が止まらない。



 皆、絵に描いたような困惑した表情をしていた。


 そしてただ一人、クラスで最も事件の話題を出していた池上だけは「ごめん…」と嗚咽混じりで泣きながら私に謝った。


 泣かなくて良いんだよ池上。


 私、知ってる。


 あなたはクラスの皆に事件の話をわざと振って私に教えてくれていたんでしょ。


 クラスで被害者叩きをしている奴は誰か。

 誰がSNSに事件のことを投稿しているのか。


 お陰で事件以降私は人付き合いを慎重に調整することができた。


 勘だけは良い貴方は気づいていたんでしょ。私が被害者だって。


 ばーか。


 何泣いてんのよ池上。せっかくのイケメンが台無しじゃない。まぁでもありがとう。私なんかの為に泣いてくれて。

 


 そう、事件が起きてからも被害者の私を責めずにレイプした教師が悪いと最後まで言い張ってくれた人がクラスで2人だけいた。




 一人はサッカー部の池上。



 そしてもう1人は…。







 私は言いたいことが無くなったから教壇から降りた。その瞬間、スクールカウンセラーと校長が私に飛び交ってきた。





 「海野さん何やってるの!?」とスクールカウンセラーは血相変えて私の肩を掴んだ。


 はは、ざまーみろ。きっとアンタは学校から穏便に済ませろってミッション与えられていたんだろーね。でも残念。そんなことさせない。



 「皆さん!今撮った動画消しなさい!!」と校長は唾をたくさん飛ばしながら言った。


 

 でも誰もスマホを手に持つことはなかった。



 

 私はスクールカウンセラーに腕を引っ張られ、教室から出された。


 学年指導の先生が入り、他のクラスの人達は各々教室に戻された。





 「貴方なんて事してくれたの!」

 スクールカウンセラーの目は充血していた。



 「何って…辞める前に皆に言いたい事言っておこうかなって…」


 「そんなの言って誰の為になるの!?」


 私はふーと息を吐いた。

 「私の今後の人生の為です。」


 「貴方はどうしてそんな!被害者らしくできないの!?」


 スクールカウンセラーは廊下に響くような大声でそう言った。大人の本性見るとなんだかとても悲しくなる。


 言い返そうと思ったその時、視界からカウンセラーの姿がなくなった。


 「え?」


 そして次にドンという音が右側から聞こえた。


 恐る恐る右側を見ると教室の扉に叩きつけられ、ダンゴムシのように丸まっているカウンセラーがいた。


 え、なにが起きたの?


 私が左側を見ようとした瞬間

 「海野行くぞ!」と突然左手を引っ張られた。


 目を真っ赤にさせた池上だった。



 「はぁ!?どこに!?」

 私は叫んだ。それでも反射的に走ってしまっている。


 「屋上…」と今度は右側から気怠けな女の声が聞こえた。



 「リホ…」


事件が起きてから、被害者の私を責めずにレイプした教師が悪いと最後まで言い張ってくれた人がクラスで2人だけいた。




 一人はサッカー部の池上。



 そしてもう1人は…。


 「一緒に屋上で写真を撮る約束、今叶えるぞ」



 私の親友。


 放送部のリホだった。


 「うん!」


 私と池上とリホ、3人で廊下を走った。後ろから体育教師の松永と校長が追いかけてきてる。


 


 最高。


 ワックスがかかった廊下から上靴がキュッキュッと音を立てる。


 両耳からは2人の荒い息が聞こえてくる。


 20メートルほど走ったところで、手を繋いでいたことに気づいた池上は手を離し顔を真っ赤にさせた。 

 

 隣のリホは息ギレして過呼吸一歩手前になっていた。そうだ。リホは50メートル15秒の女だ。



 私はそんな2人を見て少し足がもつれた。


「「大丈夫か!?」」


 ポンコツ2人は声を揃えて言った。




 未来ちゃん私行くよ。今から事件のあったあの場所に。


 大切な友達と一緒に。


 「大丈夫!」

 

 私達は廊下を駆け抜けた。




 

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