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悪女爆誕①

ここから暫くカナエ視点です。

ハッピーエンド、ハッピーエンドだから!!







 ベリーショートとは言えない不揃いな短髪。


 真っ赤な唇。


 ハリウッド女優みたいな綺麗な凹凸のある横顔。


 手錠をかけられた両手で投げキッス。


 時折見せるウインク。



 世間は彼女のことを悪女と言った。


私は、不敵な笑みを浮かべる未来ちゃんとスマホを通して目が合った。彼女はカメラに向かって再びウインクをした。



 あぁ…10年後の私はなんて、いやらしくて、派手で、自分勝手で強い女なんだ。


 



ーーーーーーーーーーーーーー

  


 

 


 


 事件が示談で終わってからも私は素知らぬ顔で高校に通った。




 大丈夫。私は被害者じゃない。



 バレていない。


 “先生にレイプされたのは別の人だ。”


 そう思い込むようにしたら意外と大丈夫になった。


 でも今日はいつもより注意深く行かなきゃ。



 今日は事件のニュースがテレビで流れる可能性がある。


 既に一部のネットニュースは昨日の夕方に記事が上がっていた。




 『教え子とみだらな行為をした教員 不起訴』

“検察は不起訴の理由を性犯罪のため明らかにしないとしています”


 コメント欄も中々シビアだった。


 うん…でも大丈夫。アイツが逮捕された時のニュースに比べてヤフコメも5chもコメントの数は少ないし内容も過激じゃない。


 今日の朝のニュースには取り上げられていなかった。テレビの影響力はでかいから取り上げられなくて本当に良かった。テレビで流れるとそこからコタツ記事が出て炎上になる可能性がある。


 ネットにパッと出るくらいならクラスの人も気づかないで終わるだろう。



 そう思った矢先だった。


 3時間目の終わり、クラスの池上が椅子の上に立ち上がり叫んだ。


 


 「不起訴だってぇー!!!!!」



 隣の教室にも聞こえるくらいの大声が教室中に響き渡った。一瞬クラスは静まり返り、そこから一斉に大爆笑が起きた。




 「よっ!おめでとー!!!!」


 「何だよ冤罪だったってこと!?」


 「不起訴ってなに?」


 「無罪ってことだよ!」


 「えぇじゃあアイツ帰ってくるの!?」

 


 

 あぁ…最悪だ。学校休めば良かった。てかどこの媒体が取り上げたの。それでも私は周りに浮かないように笑顔でスマホをカバンから取り出し、皆と同じように事件の内容を検索した。



 何で取り上げられたの?テレビ?LINEニュース?スマートニュース?


 私は指を必死に動かした。


 その時、隣の席のリホが声をかけてきた。



「カナエ…Twitterだ。」と言ってリホはスマホを私の顔の前に持ってきた。


「ツイッター?」


 私はTwitterのアカウントを登録していないから

そのワードが出てくるのが予想外だった。


 私は崩れた笑顔を保ちつつ、画面を見た。


 「滝川ガレソって誰?」


 このアカウントが不起訴の事件を取り上げたようだ


 「時事系のネットインフルエンサーだよ」とリホは答えた。


 フォロワー数が200万人もいた。そりゃテレビやLINEニュースじゃなくてもクラスの人の目に入るのも納得だ。


 私はリホからスマホを受け取り滝川ガレソが書き込んだ内容を見た。




 【悲報】教え子とS●Xしたエチエチ教師、不起訴になる。


 このタイトルの下にはネットニュースから引用した事件の概要とアイツの顔写真が貼られていた。


 いいねは3450、リツイートは963


 良かった。そんなに注目を浴びていない。


 私はそのツイートに書かれたコメント欄に軽く目を通した。


 『これは女が悪い。』


 『まんこ二毛作失敗やなぁ』


 『先生、どんまい、すぎる』

 

 『JKとヤレたなら人生万歳だろ』

 


 私はこの4つのコメントを読んで、スマホの電源を消しリホに返した。


 ヤフコメとか5chよりも、アイコンがあるこっちのコメントを見る方が辛いかもしれない。



 「カナエ…顔色悪いけど大丈夫?」


 リホは心配そうに私の顔を覗き込んだ。


 「うん…生理前で重くて気持ち悪いだけ」




 私はそう言って机に顔を(うず)めた。



 視界が無くなったことで、よりクラスの皆の声が鮮明に聞こえる。





 「結局、被害者って誰だろうな?」


 「4組の金田って噂が出てるぞ。」


 「あぁアイツいろんな教師に色目使ってたもんな」


 


 やめて。違うから。金田さんは関係ないじゃん。




 「そういえば最近金田さん学校来てないよね」


 「確かに逮捕のニュースから来てねーよな」


 「えぇ…じゃあ金田がヤッたってこと。エグ。」


 「よく40のジジィとヤレるよな」


 「私だったら自殺しちゃうよ。あんなのに処女奪われたってことでしょ」

 

 「てかなんで警察行ったんだよ」



 やめて。被害者は私だから、止めて。


 お願い。


 もう事件の話しないでよ!





 「淫乱じゃん金田のやつ」




 「やめ!」

 私は顔を上げて、勢いよく立ち上がった。


 クラスの皆、私の方を見た。


 やばい。思わず声が出てしまった。私は反射的に口を押さえた。



 なんて言おうか頭が真っ白になった時、校内放送で担任の後藤先生から呼び出しがかかった。最高のタイミングだ。ありがとう後藤先生。



 私は顔を真っ赤にしながら教室を出た。


 皆の視線は突然叫んだ私よりも各々のスマートフォンだった。クラスの皆んな事件の詳細やコメントを見るのに必死だ。


 さっき私が突然声を発したことは誰も記憶に残っていないだろう。



 私は職員室に入り後藤先生の元へ向かった。


 教室と違って、先生達は私のことを鋭い目線で見てきた。




 後藤先生が席から立ち上がり、「海野さん…今から校長室に行きます」と言った。



 「校長室…?」


 

 私は言われるがまま、後藤先生の後についていった。


 「失礼します」と後藤先生は校長室の扉をノックした。ドアの向こうから「どうぞ」という声が聞こえた。


 扉を開けると、校長、スクールカウンセラー、お母さんの3人がソファに座っていた。



「カナエ座りなさい…」

 

 お母さんにそう言われて、私は状況を飲み込めないままお母さんの隣の黒皮のソファに座った。


 校長室の来客用のソファは少し硬くて座り心地が良かった。


 目の前の校長室先生は腕を組み、はぁと少しため息をついた。


 「海野さん…大変申し訳ないことを今から言います。」


 「は、はい」

 私は背筋を伸ばした。お母さんの顔もスクールカウンセラーの顔も暗い。なに?なに?わたし何かやらかした?



 校長先生は少し上を見てから私に視線を合わせた。



 





 「どうかこの学校を辞めてください」







 今回から始まった悪女爆誕が私がこの物語で1番描きたかったことです。

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― 新着の感想 ―
[一言] この先が読めない!!続きが楽しみです。
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