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閲覧注意、性犯罪描写あり。痛み再考②

カナエ視点です。

性被害について書きます。苦手な方は読まないでください。

 何回も何回も同じ話をして、何回も何回も同じ質問をされて、どんどん自信がなくなっていった。



 私は本当に被害に遭ったのか。


 


 でも未来ちゃんの怯えた顔を見て確信した。あの日のあの時間に何をされたのか。


 私はキスをした後、未来ちゃんの顔をじっくりと見た。10秒くらい。未来ちゃんは目をそらすことなく私の目を見つめ返した。未来ちゃんの唇は震えていた。


 あぁ私こんな顔してたんだ。そりゃ襲いたくなるわ。凄い弱そうで間抜けだもん。それに…とっても可愛い。


ーーーーーーーーーー


 私の高校には4階に隠し扉がある。その扉を開けると屋上に上がるための階段とその階段脇に備品を置くスペースがある。


 まず屋上に行くには重たい扉を開けなきゃいけない。いや、その前に扉の鍵を開けなきゃいけない。



 ドラマや漫画と違って屋上は基本解放されていない。


 唯一許されるのが学校祭だ。


学校祭での動画撮影や備品を置く時にだけ解放が許される。鍵も厳重完備だ。


 鍵は職員室の教頭先生の座席の隣、キーロッカーに入ってる。このキーロッカーに音楽室や理科室の鍵、全ての鍵が収納されている。


 鍵を開けれるのは先生だけ。



 屋上に上がるということは高校生からしたら年に一回の一大イベントなのだ。


 今年、私のクラスも学校祭の準備期間に動画撮影という名目で屋上に上らせてもらえたみたいだ。


 ()()()()()()()


 そう、私はその日、学校祭の実行委員があって屋上に行くことは出来なかった。里帆から屋上で撮影したクラスメイトの自撮りを見て羨ましいと思った。


 唯一、屋上に行けなかったのはクラスで私だけだった。


 別に私の学校の屋上からスカイツリーが見えるわけでも富士山が見えるわけでもない。ただ屋上に上がる。それがなんだか高校生の私達には魔性の引力を感じた。




 学校祭が終わって1ヶ月が経った8月、皆どこか気が抜けていた。私の高校の学祭はとても力を入れるからクラスの皆燃え尽きていた。


 授業が終わって帰りのHRが終わった時、先生から「日直は最後日誌持って職員室な」と言われた。


 その日の日直は私だった。日直と言っても日誌を書いて黒板を消すくらいだ。


 私は放課後に日誌の一言欄を書き上げて、職員室に行った。


「失礼します」と言って頭を下げ職員室に入室した。


 そして先生の所に行って、いつものように日誌を渡して帰ろうとした。


「海野…屋上の件悪かったな…良かったら今から先生と屋上に行かないか?」と先生は言った。


 私の先生は学年中で“イケオジ”と評判だった。40過ぎとは思えないスタイルに黒髪フサフサ。目のクマもどこか顔の堀深さを際立たせていた。


 学年中の生徒から信頼されており、クラスのイキった男子もこの先生の前ではどこか萎縮していた。そして女子生徒達からは黄色い声がいつもあがる。でも先生はその声を全く受け付けないスタイルを貫き通し、更に黄色い声の量が増えた。




 そんな先生が私を気遣ってくれた。




「別にいいですよ。また来年上がれますから」


 それでも私は丁重に断った。私はこの先生と距離を置きたいと思っていたからだ。


 先月、わざとではないと思うが先生は私の胸に触った。あれは運転中のことだったから致し方ないと思うが不快だった。


 先生は運転していて、私は助手席に座っていた。その時に「海野の鎖骨に虫がついているよ」と先生は言って追っ払おうとしてくれた。その際に先生の手が私の胸に触れた。私は虫が大嫌いだったから、先生の手もろとも払った。


 結局、虫は見つからなかった。私は安心して笑顔になってしまった。先生も「良かった」と言って笑っていた。その日は学祭の備品を買い足して終わった。



 家に帰って布団に入ってから、今日に至るまで先生に胸を触られたことがどこか不快だった。


 だから、先生の屋上のお誘いも断った。


 先生は困った顔をして、「俺と2人は嫌か。今日は夕日が綺麗だぞ」と言った。


 私は先生がそこまで言う姿を初めて見た。少し面を食らった。


 「あ、じゃあ里帆連れてきますね」と私は言った。


「山口なら放送室にいるよな。俺が呼んでくるから、先に屋上の扉の前で待っててくれ」と先生は言った。


「はい!楽しみです…」

 里帆がいるなら安心だ。あの時、撮れなかった写真を撮ろう。私は胸を弾ませた。



 職員室を出て階段を上がり、屋上の扉の前についた。私は扉に背を向けて静まった廊下を見た。もうすぐ女子バスケ部が廊下練を始める時間だ。


 日がどんどん落ちて、オレンジの光が輝き始めた。廊下がオレンジに染まりピカピカ反射している。里帆が来るのが待ち遠しかった。


 そして下から階段を上がる音がした。この時に嫌な予感はしていた。1人分の足音しかしなかった。


 階段から姿を現したのは先生だけだった。


 「あれ…里帆は…?」


 「山口からもうすぐ来るよ…」と先生は言って、ポケットから鍵を取り出した。


 「そうですか…」


 先生はそこから無言で鍵を開け、重たい扉を押した。


 先生は 「先に山口を待とうか…」と言って中へと入った。私は断る理由も無かったので中に入った。



…重たい扉がドシンとしまった。屋上に上がる階段はカビ臭かった。去年の学祭の備品や潰れたバスケットボールがダンボールにいっぱいになって階段の脇のスペースに置かれていた。



 「ここ臭いですね…」と言おうとしたところだった。



 私は両手をドアに押さえつけられた。ドアは金属で出来ていたので鈍い音が踊り場に響いた。



「本物だ…本物だ…」



「や…や…」

私は掠れた声で言った。自分に何が起きたのか全くわからなかった。口の周りがベトベトしていた。



 


「やめてください…やめてください…」


私は小声で何度も言った。



じわじわと自分が何をされているか理解し始めた。頭がジュワーと溶けていく感覚に襲われた。


 足が震えて動けなくなった。


「お母さん…たすけて…」と言ったとき、先生は声をあげて笑った。


「これなんだよ本物は!!」


 私は身体中が硬直し恐怖に包まれた。  


 足に力が入らなくなり崩れ落ちた。

 カビ臭い床は生ぬるかった。



 先生の目に光がなかった。見たことのない気持ち悪い笑みを浮かべていた。


 私はその頃には“やめても”“助けても”“痛い”も言えなくなっていた。ただ人形のように動けなくなっていた。



 聞こえるのは自分の呼吸音と扉の向こうで女バスがフットワークをしている音、キュッキュッとバッシュが音を立て、部員が声をあげている。



「静かにしないと女バスに聞かれちゃうよ。あ、山口が先に来るかな…?」


 私は自分が死んでると思うことにした…。私は死体で、何も感じない…。そう思うとわ…ぐ、?


 「ぐっ…うぅ?」

 「…」



 「…」


ーーーーーーーーーー



  「失神ゲームって昔流行ったよな」



 冬馬はカナエの肩を抱え静かに言った。冬馬の目には涙が溢れていた。


 「覚えてない…」

 私は鼻声でそう言った。


 


 


 



8月26日追記というか削りました。友達から「そんなに具体的に性被害の場面を書いたらオカズにされるよ」と指摘されたからです。そこまで頭が回らなかったことを猛省しました。

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