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会議を打ち上げろ!

作者: 花黒子


 世の中には、本当に無意味な会議というものが存在している。

 技術革新が世間に広まり、ほとんどのホワイトカラーの職業は消えて当然となったにも関わらず、なぜかホワイトカラーのお偉方が居座っている会社というのは少なくない。

 技術を導入できない言い訳として「予算が足りない」が、単純にまかり通ってしまっているからだ。残念なことに、その会議をしている方たちを解雇すると、予算は出来てしまうのだけれど……。


 そこに目を突けたヴェンチャービジネスを開発された。

 ある種の成功体験をしている者なら、すぐに社会貢献へ向かうはずが、なぜか何もできない者たちこそ残りたがる。

 会社を停滞させる彼らの会議ごと宇宙に飛ばしてしまおうというのだ。


 大丈夫。予算は確保した。

 宇宙事業は政府も力を入れているので、あっさり許可が通ったのだ。


 宇宙飛行士は今でも花形職業だから「期待している」と言えば、宇宙会議も成功するだろう。リモートで参加ではなく実体験として参加させること、それが重要だ。そもそも本人たちもそうやってコロナ禍でも社員をリモートワークにしてこなかったのだから、反論はなかった。


 機体は使い捨てではなく、何度でもどんな会社の会議でも飛ばせるように大きく頑丈なものを採用。燃料費は嵩張ったが、折からの原油安によって、大きく下がっていた燃料を買っておいた。先見の明と言っていいだろう。


 会議の参加者たちには言わないが、宇宙服は最安値の作業服屋の物を使っている。

 機体に予算をかけ過ぎたので、足りなかったのだ。もちろん、これも本人たちの意見なのでバレたとしても、十分に納得してもらえるだろう。


 資料を作り、機体作りに着工。トークンを発行すると、飛ぶように売れた。宇宙だけに。

 企画として、なくしてはいけないと思い、DAOの設計まで作り、もしも計画がとん挫したときの予防線を張っておいた。


 とにかく会議を打ち上げることが目的なので、機体の中の空気圧などのことは二の次だったが、公言する必要はない。

 例え、失敗が予測できていたとしても「問題ない。大丈夫だ」と言えばいいことは、歴史が教えてくれたことだろう。

 

 打ち上げ当日は晴れ。

 宇宙服柄の作業服を着て、ネクタイだけを締めたホワイトカラーたちが集まった。

 ホワイトカラーの極北という意味で、機体には「白色山」と書かれたシンプルなデザイン。

 全員、なぜ集められたのか、どうして変わった服を着ているのか、自分でもわからないのだろうが、会社の言うことを聞いてきた者たちなので、笑顔で手を振っている。


 数時間前からカウントダウンを始めるが、10カウント前からカウントが始まる。

 10、9、8、7、6……。


 6までカウントダウンしたところで、管制塔で見ていたうちの社員がコーヒーをこぼして、発射ボタンを押してしまった。


 まぁ、多少の誤差があっても、打ちあがるだろう。


 機体は空高く打ちあがり、大きなパラシュートが開いて落ちてくる予定だった。


そこでようやくネタばらしをして、いい加減会社を辞めた方がいいと説得し、それを全世界に発信する。


 ここまでがセオリーのはずだったのだが、途中でDAO化してしまったせいで、本当に宇宙まで打ちあがる機体になっていたようだ。日本の技術力の高さは異常なので、壁の空気圧なども完璧。穴など一つもない。蟻でも巣を作っていてくれればよかったのだが、それもない。


 会議は順調に大気圏を抜けて、宇宙へと飛んでいった。内部の様子は、全世界配信されているが、中の人たちは「多少地震があったか?」という程度で、滞りなくコーヒーを飲みながら会議を進めている。


 燃料機などが地上に帰ってくるなか、会議室はそのまま衛星となっていくらしい。食糧、水、酸素残量は1週間ほど。それまでの間に、宇宙で見つけられるのか。


 会議は熱を帯び始めていた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 再使用ロケット+会議室でウン十億円、でも長期的には採算が取れる、と判断されてしまったんですね……
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