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【コミカライズ始動】アラフォー警備員の迷宮警備 ~【アビリティ】の力でウィズダンジョン時代を生き抜く~  作者: 日南 佳
第一章

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第22話

 月ヶ瀬がドラゴンと衝突した。その動きは全く捉える事が出来なかったが、ドラゴンが仰け反りながら後方に浮いたのは見えた。

 これまでもアクロバティックな動きをしていたが、探索者として常識的な範囲内の速度だった。

 だが、これは違う。探索者どころか人間の枠を超えている。

 動体視力を超えるスピードで接近して、刀の一振りでドラゴンの巨躯をノックバックさせて怯ませる丁種探索者なんていてたまるか。



「なぁにこれぇ……」



 そう呟く俺の顔は引きつっていたに違いない。

 現実離れした光景に、自分の痛みもフィクションなのではと思ってしまうくらいだ。ドッキリ番組だと言われた方がまだ信憑性がある。

 やってる事が、もはやアニメだ。得物が刀でなくて蹴る殴る謎のレーザーで攻撃するとかであれば、まるっきりスーパー野菜人のアレだ。

 そう言えば、奇しくもドラゴン繋がりだな。こっちのドラゴンはあんな有様だが。



「これがお嬢様……えーと、美沙ねぇの本領です」


「えー……マジかぁ……細剣使うより強くないか?」


「ステータスの力は月ヶ瀬の血と相乗効果があるんですけど、逆にステータスシステムは月ヶ瀬の血の影響を受けないらしいので……ジョブ縛りは強くなり過ぎないための枷だって言ってました、レベルシンク? だそうで」



 つまり、あの激ヤバ戦闘能力を日常的に発揮しちゃうとマズいから、敢えてジョブで戦ってるのか。この状況こそがあいつにとっての制限解除なんだろう。

 ……あれ? でも俺と同じ日に丁種の試験受けてステータス付与されたよな? てことはステータスも無い「みーちゃん」だった頃からダンジョン潜って魔物討伐してたのか? 

 ヤバぁ……道理でいつも傷だらけだったはずだ。そもそも探索者以外のダンジョンへの立ち入りは当時から既に違法だったはずでは……?



 ふとドラゴンの方を見やると、月ヶ瀬のかち上げ攻撃がドラゴンを空中十メートル程の高さまで打ち上げ、ハイジャンプからの追撃斬り下ろしでドラゴンを下へと叩きつけている。……衝撃で壁高欄にヒビが入ってるのは見なかった事にしたい。



「元々はまだマシだったんです、ステータスが付いてから機動力も破壊力も強くなっちゃって……でもこの感じだと大分様子見してますね」


「え、これでも……?」


「はい、本気出してたら道路が深刻なレベルで陥没してますし、何ならこの高架が崩落してます。一発食らったドラゴンも原形を留めてるどころか意識も残ってますし、凄い手心が加えられてます」


「……逃げたい……これはもう逃げたい……」


「ダメです! 逃げちゃダメです! お嬢様の『頼むね』は『月ヶ瀬本家の名において命ずる、お前の取り得る最大限の行動によって己が職務を全うせよ』って意味なんです! 戦闘終わって高坂さんが居なかったらボクの首が物理的に飛びます!」



 出番を奪われてやる事が無くなった元固定砲台のマックスくんが俺の後ろに控えて通せんぼしている。

 そんなにか。そんなに逃したくないのか。



「そもそもお嬢様があんなに強くなっちゃったのは高坂さんのせいなんですから、責任取ってください!」


「え、俺の? 俺何もしてないけど?」


「高坂さん、『みーちゃん』とゴブリンに襲われた後どうしてました?」



 え、みーちゃんとの事故の後? どうだったかな、大分昔の事だから記憶が曖昧だ。

 確か気がついたら入院してて、骨折で数ヶ月入院した後、春川常務……当時はまだ本部長だったな。

 あの人に愛媛事務所の隊員が一気に三人辞めたのに一ヶ月かかる三人現場が急に飛び込んで来て、俺と水橋君と滝沢さんは独身で身軽だからってピンチヒッター行ってこいって無茶振りされて……



「ああ、愛媛に行ってたな。今治の国道317号の長距離舗装に伴う交通規制の仕事で一ヶ月半くらい……」


「みーちゃんに連絡は?」


「取る訳ないだろ。ちょっと話すくらいの通行人、しかも中学生の女の子に電話番号教えてよーとか言える訳もねえし」


「それですよ!!!」



 月島君は天を仰いで絶叫した。ん? 何かマズかったのか? 常識的な判断だったとは思うが……?



「高坂さんと連絡取れなくなったからってお嬢様は分家衆に『とにかく腕の折れた警備員を探せ』なんて命令するし、あの時三箇所くらい同時多発的にダンジョン・フラッドが起きてて腕の折れた警備員なんて山ほどいたし、そもそも名前も分からないから病院総当たりするしかないし!」


「お……おう」


「そもそも所属してる会社も分からないし移籍したり転職してたら居場所が分からないからって全国探させられたんですよ!? 北海道の牧場で牧草と牛糞にまみれて働いてるかも知れないからって網走から函館まで半年かけて調査させられたボクらの気持ち分かりますか!?」



 いやいや怖い怖い怖い。想いが重過ぎる。

 たかだか現場で話しただけの通行人の中学生がマジモンのいいとこのお嬢さんで、実家の権力総動員して俺を探すような特殊車両並みの重たい女だったなんて誰が想像出来ようか。



 月ヶ瀬が入社当初から妙に馴れ馴れしかったり距離感がバグってた理由が今になってようやく分かった。

 アイツからしたら数年越しの再会であり、初対面気分の俺と違って「あの頃の続き」の感覚でいたんだろう。

 今の今まで忘れてた俺が言うのもアレだが、普通ではない。あのくらいの年頃なら友達と学校生活を送っていく中で俺みたいな奴の事は忘れてる物じゃないのか?


 

 それはそれとして、当時の悲惨な捜索状況を思い出してしまったのか月島君が泣いた。見てて引くくらいにべそべそ泣いてる。

 可哀想な事をした……いや、してないな。そんな事になってるなんて予想すらしてなかった。俺は何もしなかっただけだ。

 あ、ドラゴンがまた打ち上がった。落とす時はゆっくりにして欲しい。激突時に地面が揺れるのが思った以上キツい。

 橋梁の防振装置が効いてるとは言え、これはかなり酔いそうだ。



「あー……そりゃあ……スマン」


「お嬢様はお嬢様で『お兄さんが会ってくれないのは私が守れなかった事をずっと怒ってるからに違いない、もっと強くならなきゃ』って、アホとしか思えない自殺スレッスレの鍛錬を延々繰り返すし……組み手や修行に付き合わされて死ぬ一歩手前まで追い込まれる分家衆の身にもなって下さい! 命がいくつあっても足りないんですよ!?」



 ついには俺の肩を持ってがっくんがっくん揺さぶり始めた。落ち着いて欲しい。マジで酔う。

 せっかくケラマが治してくれている傷も開きそうだ。じんわり痛みが増してるしケラマが血に染まって紫色になりつつある。「はわわー」と慌てている意思が飛んでくる。



「待っ……俺の命も……足りない……腕も……傷が……」


「あっ……す、すみません、つい! 日頃の恨みが!」



 日頃の恨みを外野にぶつけるのはいかがなものかと思うが、その責任の一端が俺にもあると考えると何とも言えない。

 ドラゴンの方は腕を切られ、翼を斬り落とされ、既にほぼやる事が無くなってしまっている。ああなってしまっては、もはやドラゴンの威厳もない。

 さっきまでは死闘を演じていた相手がこんなに容易くいじめられていると、どうにも置いてけぼり感が酷い。

 ほら、ブレスを吐こうとしたドラゴンが顎を蹴り抜かれて上空に火を吐いている。汚いアルコールランプだ。



「アレ、まだ死ねない……いや、死なないんだな」


「そうですねー、ドラゴンがしぶといのか、それとも美沙ねぇが手を抜いてるのか……案外八つ当たりでシバいてるだけってセンもありますねー」



 ドラゴンの尻尾攻撃に対しても後方宙返りで回避し、物理法則を無視したような瞬間的な着地を決め、反撃で繰り出した赤黒い残像を伴った斬撃が尻尾を切断している。チートかな?

 俺のアビリティや全体化もまあまあチートだと思っていたが、もっとやべー奴が出てきてしまったせいで霞んでしまう。



《魔を統べる者よ》



 不意に声が聞こえた気がした。威厳と、そしてどことなく焦りを感じさせる、高貴な雰囲気を漂わせている少女の声だ。



「何か言ったか?」


「いいえ? 高坂さんでもないって事は……本当に誰なんでしょう?」



 おや、月島君も聞いてたのか。俺だけに聞こえる幻聴とかではなさそうだ。

 そもそも何と言うか、まるで俺がトランシーバーになったような、内側から直接響いてくるような感じだ。一体何なんだ、この声は?



《魔を統べる者よ……そちらの……男の……》


「「あ、どっちも男です」」


《え、どっちも男!? 嘘でしょ!? あー……えーと……男に見える方……妾から見て右の……盾持ってた方……そう、そっち。今軽く手を挙げた方》



 後ろの探索者達から俺達を見れば、俺が左で月島君が右に見えるはずだ。逆に見えると言う事は、探索者達とは真反対の位置にいるはずだ。

 そこにいるのは月ヶ瀬とドラゴンしかいない。……ドラゴン? まさか?



《フフフ、気付いたか! 左様、妾こそ夜空と混沌を統べる偉大なる種族、カオスドラゴンの……痛い痛い! やめて!》



 ネット小説で言う所の念話的なテレパシーで述べられるはずの口上がキャンセルされた。

 見てみると、月ヶ瀬の持つバカデカポン刀がドラゴンの腹を横一文字に切り裂いている所だった。テレパシーで叫ぶな、脳内がやかましい。



《魔を統べる者よ! この鬼女をどうにかして! ヤバいんだけどコイツ!》


「あー……無理かな……だよね、月島君」


「そうですね、美沙ねぇのスイッチが入っちゃったら殺すか死ぬかのデスマッチですね。末子とは言え、魔を討つ者の総本山のご令嬢ですから」


《なんで!? こんなの居るなんて聞いてないよ! ちょっとご飯食べに来ただけなのにこの仕打ちは無いでしょ!?》



 話しかけてきた時とは比べ物にならないくらいの慌てっぷりとカリスマブレイクだ。三分も保たなかったぞ。

 ご飯食べに来たって、一体何を食うつもりだったんだ? 人間か? 好きな惣菜扱いは勘弁してもらいたい。



「あー……それは高坂さんの腕をこんな風にしちゃったからですね……」


《だってしょうがないじゃん! 攻撃されたら反撃するでしょ! そもそもこっち来た時ちゃんと挨拶したのに、いきなり魔法撃ってきたの人間の方だよ!?》


「そりゃあ魔物は人間の敵だし、意思疎通出来る魔物は存在しないって事になってるし……なぁ?」


「そうですね、こうやって話してる事実がそもそもイレギュラーですねー。それに挨拶って言っても、あの咆哮ですよね? こんな感じのテレパシーじゃなく……それは宣戦布告と取られてもしょうがないと思いますー」


《だって念話めんどいんだもん! 人間だってあのちっこい板を指でてしてしやんのと喋るのどっちが楽……あっちょっとまってやめて!》



 ドラゴンのテレパシーが途絶えた。ドラゴンは止むことのない月ヶ瀬の猛攻をどうにか逃げ続けている。

 翼も腕も尻尾も斬り落とされたドラゴンは、辛うじて攻撃を避ける事しか出来ないようだ。



《お願い助けて! 妾死んじゃう!》


「そう言われてもなぁ……何か方法あるか?」


「処置なしって所ですかねー、割って入ったらボク達まで被害出ちゃいますしー……」


《テイムしてくれたらいいから! カード化出来るんでしょ!? さっき見てたよ、レッドキャップがカードになったとこ! 妾役に立つよ!?》


「えー……妾って言ってるって事はメスだろ? これ以上女増やすなって言われてるし……」


「ほんとそれですよ、これ以上ボクらの胃痛の種を増やさないで下さい」



 ドラゴンのいる辺りから「ひとの男にコナ掛けてんじゃねぇぞメスブタァ!」と言う怒鳴り声がしたかと思うとドラゴンが跳ね上がった。月ヶ瀬のケンカキックがドラゴンの腹部にクリーンヒットしたようだ。

 待った待った、そいつは豚でなくドラゴンだし、俺はお前の男ではないぞ。と言うか、このテレパシーお前にも聞こえてたんだ!?



《おーねーがーいー! 謝るからー! 暴れたの謝るからー! 何でもするからー! 助けてー!!》


「……どうする? 殺しておいた方が後腐れは無さそうだが……」


「任せます。と言うか、ボクに決定権は無いです。高坂さんがやる事なら美沙ねぇは文句は言うけど反対はしないでしょう。けど、このままほったらかしてると確実に滅すると思いますよ。ほら、めっちゃ溜めてる。あれフィニッシュムーブですよ」



 確かに、月ヶ瀬の姿勢は格ゲーで言う所の溜め攻撃の様に見えた。大上段に構えた刀身に赤黒いオーラがまとわりつき、そこだけ強風が吹き荒れてる。

 なんだあれこわい、マックスくんのファイナル・ストライクが豆鉄砲のように思えるくらいの強烈なプレッシャーを感じる。最初からあいつだけで良かったんじゃないか?



 正直言うと、ドラゴンに腕をざっくり切られた恨みとか、ブレスで装備溶かされた恨みとか、こんだけ暴れられた責任の落とし前とか考えるとドロップアイテムを残して死んでくれた方が圧倒的に楽と言えば楽だ。

 テイムしたとしても、その戦力の扱いは非常に困る。

 まず人前に出せない。出すとしても狭い所で出したらみっちりと詰まるだろう。

 そしてそこいらの魔物に対しては過剰戦力だ。爪一振りでオーバーキルは確実だ。

 こいつをテイムしたとて、持て余す事は目に見えている。

 


 しかし殺すのはそれはそれで何だかもったいない気がする。

 月ヶ瀬のせいで霞んではいるが、俺もチートと呼べる要素を持っている。いざと言う時に動かせる手札は多い方がいい。

 どうせカードの中は快適な居住空間になるらしいから、別段食費がかかる訳でもない。



 とは言え、普通にテイミングするとドロップが残らない。討伐した証がなければこの状況の説明が付かないだろう。

 どうにかドロップが発生する状態でテイム出来ないか? ……いや、多分出来るな。試した事はないが。



「あ、そうか」


《なに!? テイムしてくれるの!?》


「ああ、テイム出来ると思う。ただ、一つだけ条件がある」


《なになに!? 助かるなら何でもやるよ!》


「一回、死んでくれ」



 振り抜かれた月ヶ瀬の刀がドラゴンを縦に割った。迸る赤黒い斬撃はドラゴンを唐竹割りにしてもなお勢いが衰えず、ずっと向こうにそびえる行者山のてっぺんを掠めたあたりで消滅した。

 ドラゴンの亡骸がドズンと音を立ててアスファルトに倒れ込み、虹色に輝きながら粉微塵になって飛んでいく。俺と月島君も駆け寄り、その様子を見ていた。



「おつかれ、月ヶ瀬」


「あ、はい。お疲れ様でした、お兄さ……先輩」


「別にどっちでもいいぞ。話は後でゆっくり聞かせてもらうからな。それより……」



 俺は月ヶ瀬の肩を叩いて労うと、ドラゴンの遺骸があった場所へ向かう。そこに残されていたのは、六枚のカード。そのうち一枚はモンスターカードだ。

 俺は月ヶ瀬が攻撃に移る前に、テイミングとカード化を全体化込みで発動しておいた。それが月ヶ瀬に乗ったお陰で、どうにか倒しながらテイムする事が出来たようだ。



 田方ダンジョンでは、赤帽軍団やコボルトは俺が倒した後にテイムされていた。その際、きちんとバットや牙をドロップしているのを俺は確認していた。

 死んでもテイム出来るバグ……不具合? とにかく変な現象がダンジョン外でも可能なのではないかとアタリを付けたのだ。

 もしかしたらドラゴンがラストアタッカーである月ヶ瀬の支配下になるかも知れないとも考えたが、そもそもこいつはテイミングを持っていない。まあ、賭けだった事は事実だが。



 俺がカードに手を伸ばすと、特に抵抗を感じなかった。

 支配権の無いカードは、勝手に手に取る事が出来ない。ちゃんと拾えたのが俺のテイムモンスターになった証左だ。



 他のカードはドラゴンの牙と爪と鱗と翼膜、それから食肉加工された肉だ。カードの中でそれぞれの物品が積まれている。

 牙が四本、爪が八本、翼膜と鱗と肉はそれぞれごちゃっと山になっていて量が窺い知れない。

 逆鱗とか竜玉は無い。どこぞのハンティングアクションゲームとは違うのだ。

 とりあえずこれは十分討伐証明たりえる品物だ。探索者協会に明け渡す事になるかも知れない。

 問題はモンスターカードの方だ。あの巨体がこんなカードに収まっていると考えると……あ、これはダメだ。バレたらマズい。



「よし、それじゃあ帰るか」


「待ってください先輩、そのカードなんスか?」



 踵を返して車へと戻ろうとする俺に月ヶ瀬から声がかかる。俺の背中に冷や汗が流れる。



「モンスターカードだよ。昨日言っただろ? 倒したモンスターが何故かテイム出来たって。今回も全体化を乗せたらテイム出来たみたいでな」


「ふーん……そっスか。見せてもらっても?」


「いや、その……」


「見せられない理由でもあるんスか?」



 言える訳がない。ドラゴンをテイムしたと思ってたら黒いゴスロリドレスを着た金髪ドリルヘアの少女がテイムされてましたとか口が裂けても言えない。

 月島君が何かを察したようにスーッと離れていく。何だその恐ろしく手慣れた離脱、俺にも教えて欲しい。



「はい、先輩。提出。早く」


「……はい」



 俺は「カオスドラゴン」と下部に表示されているゴスロリ少女のカードを月ヶ瀬に見せた。途端に眉間に皺が寄っているのが怖い。

 手元の刀がプルプル震えているのが見える。よもやそいつでザンバラリと俺を一刀両断には……しないよな?

 しかし月ヶ瀬は意外な事に俺に呆れたような顔を見せた。



「しょーがないっスね、どうせそうなるんじゃないかと思ってました」


「……すまん」


「あたしも頑張りすぎちゃいましたし、状況が状況ですから……今更面倒の種が増えた所でって感じっス。ツテに頼んで情報操作はしますけど、ある程度は覚悟しといて下さい。どうせ探索者協会に説明する必要もあるっスからね」



 手に持っていた刀や防具をカードに戻して辺りを見渡す月ヶ瀬のもとに、月島君がどこからかレイピアを持って来た。そういやドラゴンに刺さったままで抜けなかったもんな。

 俺も融解した盾を回収しておかないとな、無くしたでは済まされないし。業務外での備品の無断使用と破損での処分も覚悟しなくてはならない。

 俺達は現場の後片付けをチャッチャと終わらせて、傷ついた探索者達の元へ歩み寄り、状況の確認や口裏合わせの為の話し合いをする事にした。

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