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閑話18 雪ヶ原あかりの華麗なる傍観

【Side:雪ヶ原あかり】



 空気が死んでいる、とはこのような状況を指すのかも知れません。

 コンカラーのメンバーを性犯罪者として糾弾した高坂さんは、月ヶ瀬さんに引っ張られて下の階に降りてしまいました。高坂さんに情報渡したの私なんですけどね!

 残されたコンカラーの面々と樫原さん、ガリンペイロの笠木さんと混成パーティの九名がこの居た堪れない空気の中に取り残されてしまいました。

 まるで綺麗に線引きされたように、コンカラーとその他大勢が分かたれています。

 特に嫌悪感を露わにしている混成パーティの女性陣は何歩も後ずさってヒソヒソ話をしています。そりゃそうなります、女性の敵ですもんね。

 正直、事前に隠形のルーンを使っておいて正解でした。私が出張ったら最後、この空気が完全なカオスと化す事でしょう。



「オラァ! そこのクソアマァ! 通報でもしやがったらタダじゃおかねぇからな!」


「他の奴らもだ! ダンジョンでは死体も残らねえからな! ブッ殺されたくなけりゃ静かにしてやがれ!」



 コンカラーのリーダー……片岡剛三が獲物の両手剣を抜いて他のAチームの人間を威嚇しています。

 他の連中も武器を抜いたりしていましたが、反社トリオの一番小さい奴、佐々木勇人だけはスマホを取り出してメッセージを送信しています。

 なるほど。コンカラーの本隊へ連絡して、根回しを頼もうとしているのでしょう。

 リカバーを真っ先に考える組織人の鑑ですね。でも遅かった。遅すぎです。



 さっきまでのやり取りを含めて全てシーカーズ……ではなく、一般人も普通に見られる生放送配信サービスで放送中です。

 こっそり出しておいた撮影用のスフィアカメラがいい仕事をしてくれました。まだ江田島で撮った高坂さんの勇姿がストレージに残ってる私の宝物です。

 何ならどこかのとても可愛くて一途な超腕利き諜報員が、コンカラーに関する全ての情報を探索者協会のみならず警察庁にも提出しています。

 今頃、半蔵門ダンジョンを攻略中のコンカラーの本隊にも捜査の手が及んでいるんじゃないでしょうか?

 封鎖すべき情報網が完全に筒抜けになっている以上、コンカラーの裏稼業……やらかした犯罪者や脛に傷持つ人間をこっそり使う人材ロンダリングとでも呼ぶべき所業を隠す術はありません。

 探索者協会側の内通者もしっかり炙り出してデータを提出していますので、そちらもちゃんとメスが入るでしょう。

 探索者協会は怠惰ではありません。仕事はきっちりこなすはずです。やらなければ当家の手の者が頑張るだけですし。



 別にここまでする必要はありませんでしたが、私の大事な高坂さんに危害を加えようとしたんですから、これはもうしょうがないです。

 ほら、佐々木が返信を読んで絶望的な顔をしています。

 こちらも大変だから連絡するな、自分達でどうにかしろと切り捨てられたらそんな顔もしたくなりますよね。

 だってコンカラーの表向きの拠点だけでなく裏用のアジトのガサ入れも始まるところですから。

 あちこちからヘルプ要請が飛んで来ている本隊には、末端の不始末にまで回せる余力がないでしょう。残念無念。



 そして第一階層に陣を敷いているヒロシマピースレイド運営事務局にもきっちり情報をお裾分けしたので、間も無く六名を捕縛するための人員が派遣される事でしょう。

 ほら、もうすぐそばまで誰か来て……いや、ちょっと早すぎませんか? しかも単騎って何を考えているんですか? 

 あと何なんですかこのべらぼうな魂の輝き、強者通り越して超人では? ソウル・リンカーが怯えて震えているんですけど?



「久々に魔の巣窟を訪れたら入り口では天幕を立ててのどんちゃん騒ぎ、奥に進めど魔は現れず、ようやく人を見つけたかと思えば修羅場の様相……いつからここは祭りの広場になったのですか?」



 ソウル・リンカーを介さずとも目視出来る所に現れた人物に、私は息を飲みました。

 先程階段を下って行った月ヶ瀬さんによく似た顔立ち、真っ白な留袖に白い鞘の刀、トレードマークの鈴の根付け……我ら天地六家には間違えようのない人物です。

 曰く、魔を討つ者の到達点。人類の最終兵器、討魔の為だけに生まれてきたナチュラルデーモンキラー。

 天地六家きっての武門の誉れ、月ヶ瀬本家の長姉。月ヶ瀬千沙、その人です。

 いつもと違う所があるとすれば、髪の色でしょうか。美しい銀髪ではなく、濡羽色の黒髪です。まるでさっき高坂さんを引っ張っていった妹君みたいです。

 威圧感も普段より大人しめですし、月ヶ瀬特有の血の力を極力抑えてるんでしょうか。……一体何のために?

 ……ところで私は隠形のルーンで姿を隠してるはずなんですけど、何で的確にこっちを凝視してるんですか? もしかしてしっかりと見えてるんですか?



「……まあいいでしょう。隠れているのは理由があるのでしょうし、追及はしません。どうやら皆様方は先に進むつもりがないようですし、お先に失礼致します」



 千沙さんはこの場の雰囲気を意に介さぬ様子でスタスタと通り過ぎようとします。

 これを好機と捉えた馬鹿が一人。片岡が千沙さんを後ろから羽交締めにしました。ああ、ダメだわこいつ。死んだわ。



「ガハハハ! ちょうどいい! おい、ずらかるぞ! この女を盾にすりゃあ、うまい具合に逃げられ……」


「なるほど、狼藉者ですか。では手加減は無用ですね」



 大男に背後を取られた千沙さんがお辞儀をするように軽く上体を前屈させるだけで、片岡の体が前方へと投げ出されてしまいました。

 体格差なんて何の足しにもならないようです。



「ギャアアアアアア!!」



 すっぽ抜けるように宙を舞う片岡の体からぬるっと滑るように両腕が外れ、血と絶叫を撒き散らしながら飛んでいきます。



「なんだこの女……うわああああ!」


「腕が! 俺の腕が!」



 他のコンカラーのメンバー五名も時間差で次々に腕を切り落とされ、叫び声を上げながら倒れていきます。

 その解体ショーの実行犯である千沙さんは、ただその場でくるっと一回転しただけに見えました。

 しかしその実、私達には知覚できない速度で刀を抜き放ち、六人の男の腕を切り離したのです。

 ……しっかり見ていたはずなのですが、いつ斬ったのか、本当に分かりませんでした。

 これが月ヶ瀬の化け物の本領、人智を超えた武力の極致。実際に目の当たりにするのは初めてでしたが、恐ろしい限りです。

 六名の人間の腕が血飛沫を上げて切り離されたというのに、樫原さんや笠木さん、混成パーティの面子が黙ったままなのは、あまりにもこの光景が現実味に欠けているからでしょう。



「月に芒の紋所に楯突く者は、人も魔もなく皆殺し……などという時代でもありませんので、命までは取りません。綺麗に斬りましたので、療治が間に合えば箸くらいは持てるようになるでしょう。次に喧嘩を売る時は人を見てからになさいませ」



 血の一滴も付いていない刀を懐から取り出した紙で拭い、綺麗な所作で納刀した千沙さんは斬り捨てた男達に見向きもせずに階段に向かいます。

 おっと、まずい。今そっちはいい雰囲気なんで、もう少しだけ足止めさせてもらいましょう。

 ソウル・リンカーでこの場の皆の意識をじたばたともがくコンカラーの面々に集中させ、私への注意を逸らします。

 これでしばらくは私に対して意識が向かないでしょう。隠形のルーンの効果が高まるはずです。

 私はこそこそと千沙さんの下へと駆け寄りました。



「……隠れていたのではないのですか?」


「いえ、皆の意識を逸らしてますので無茶しなければバレませんよ。お久しぶりです、千沙さん」


「ええ、お久しぶりです。最後にお会いしたのは惣領を継がれた時でしたか?」


「はい。……しかし、初めて刀を振るわれる所を拝見しましたが、やはり千沙さんの戦闘能力は別格ですね。月ヶ瀬の真髄を見た気がします」


「……嫌味ですか、それは」



 千沙さんが不機嫌そうに少しだけ眉をひそめます。あれー? 何で?

 完全に予想外の反応です。意に介さずスルーされると思っていたんですが……嫌味って、どこが?



「嫌味でも何でもありませんが……何かあったのですか?」


「そうでした、うちには雪が積もりませんものね。それならば仕方ありませんね」



 私の質問をスルーして、千沙さんが勝手に自分で納得しています。雪が積もらない……つまり、雪ヶ原の手の者が侵入出来ないと言う意味です。

 ……実際、我が雪ヶ原家がいかに情報収集に長けた一族であっても、月ヶ瀬家に潜入する事は出来ません。

 私達は誰かに成りすましたり、架空の人物をでっちあげてスパイを送り込みます。

 しかし、月ヶ瀬家はそこまで大きくなく、分家の管理や情報の統制に隙がありません。

 こういう徹底した縁故主義的な組織は私達が一番苦手としています。だって知らない人を混ぜ込んでも「誰だお前」と排斥されますから。



 とは言え、月ヶ瀬家の皆さんは疑問点があれば天地六家として質問すれば素直に答えてくれますので、危険を冒してまで間諜を入れる必要がありません。

 その分、情報の鮮度が落ちてしまう難点もある訳ですが……この感じだと、本家で何かあったんでしょうか?



「今、月ヶ瀬の真髄に一番近いのは美沙さんですよ。先日、立ち合いで敗けましたので」


「は? え、嘘でしょ!? 月ヶ瀬さん……美沙さん、そんな事一言も言ってませんでしたよ!?」



 月ヶ瀬さん……美沙さんの事で知っているのは、御山で高坂さんと修行した事と原初の種子を取り込んだ事くらいです。

 霧ヶ峰ホールディングスと栄光警備の合同説明会の前日に里帰りした事は知っていますが、そこで組み手でもやったんでしょうか?

 それにしても、不思議です。美沙さんは広島城近辺に出現した魔物に殺される寸前だったと聞きました。

 その魔物を千沙さんが瞬殺したとも。力量の差は圧倒的に千沙さんの方が大きいと思っていたんですが、何があったのでしょう……?



「いずれ分かる事ですので、お伝えしておきます。美沙さんは月ヶ瀬の中でも数人しかいなかった最上位の力に到達しています。先祖伝来の神力と魔の源泉から授かった力により、月ヶ瀬の異能を極限まで高められるようになっています。……恐らく、当世の人中最強は美沙さんです」


「それは、現筆頭を含めて……ですか?」


「条件次第では、父上を打倒する事は十分にあり得ます」


「……そうなると、月ヶ瀬家を継ぐのは……」



 私はそこから先の言葉を紡げませんでした。

 月ヶ瀬家は一番強い者が筆頭の座を家長より譲られ、家督を継ぎます。

 これまで、一番強い千沙さんが家督を継ぐ物と目されていました。

 あまりにも浮いた話がないので美沙さんに継いでもらった方がいいんじゃないか? と空也さんが愚痴をこぼしていたのを聞いた事がありました。

 しかし、前例踏襲を是とする月ヶ瀬ですから、千沙さんが優位であったはずです。



 千沙さんが月ヶ瀬家の為に東奔西走している事は知っています。

 戦う事しか考えていない決戦兵器のように扱われることが多いですが、誰よりも月ヶ瀬家の事を慮っている人です。

 そんな人に「じゃあ美沙さんが次期筆頭になるんですか?」なんて軽々しく聞けた物ではありません。

 しかし、千沙さんは存外あっさりと答えてくれました。



「いいえ、美沙さんは本家から独り立ちしました。父上から皆伝の免状を受け、最も新しい月ヶ瀬の分家となりました。本家より強い分家と言うのもおかしな話ではありますが……」


「では、本家は千沙さんが?」


「そうですね。万沙さんは他家へ嫁ぎましたし、もはや私しか継げる者がおりませんので……このようななし崩し的な形は不本意ですが、仕方ありません」



 千沙さんは深いため息をついてはいますが、どこか吹っ切れたような表情をしていました。

 これまでの千沙さんは、立ち居振る舞いから鬼気迫る物を感じさせていましたが、焦りや気負いも多分に含んでいました。

 次期跡取りとなる長姉の身でしたから、期待や重責も大きかったのでしょう。



「思えば、私は狭い世界に生きていました。力を付け、魔を討ち、家を継ぐ……それが私の全てでした。でも、弱かったはずの美沙さんはそんな私にあっさりと勝ち、筆頭の座を捨てるように独立しました。私にとっては世界の全てでしたが、美沙さんにとってはどうでもいい物だったのです」


「でしょうね。今の美沙さんにとっての世界は高坂さんを中心に回ってますからね」


「ええ、話には聞いておりました。芒の君が現れたと……だからでしょうか。何だか私がせせこましい生き方しかして来なかったように思えまして」


「せせこましい……ですか?」



 私が尋ねると、千沙さんは小さく頷きました。



「はい。武に全てをかけてきた私の生き方を、武を二の次に決めた美沙さんに否定された訳ですから。こうして魔の巣窟に来たのも、今までやってこなかったことの中に見落としが……武に繋がる何かがあったのではないかとの思いからです」


「それでわざわざ原爆ドームダンジョンに?」


「ええ。大体そんな所です」



 涼しい顔で答えていますが、きっと戦う以外の思惑があるのでしょう。

 ただ戦いに来ただけなら、わざわざ力を抑える必要がありません。最初から銀髪を振り乱しながら皆殺しの覇気を全開にすれば秒殺でしょう。

 それをせずに、舐めプを思わせるくらいのハンディキャップを自らに課していると言うのは不思議な話です。

 いや、でも、恐らくこれまでの話にヒントが隠されているはずです。そうなると……



「婚活ですかね? 次期筆頭ならお世継ぎが要りますもんね。あるいは、美沙さんに彼氏の見つけ方でも聞きに来ましたか?」


「……察しが良すぎるのも問題ですね」



 千沙さんが頬を少しだけ膨らませて顔を背けます。え、貴女そんな可愛い表情も出来たんですか? てっきり武器が服を着て歩いてるような人間だと思ってたんですけど?



「探索者とやらが集まる場所であれば、気骨のある殿方もいらっしゃるかと思ったのですが……第二相の気当たりですら鼠や小鬼のように怯える腰抜けばかり……拍子抜けもいいところです」


「いやいや、無茶言わないでくださいよ。千沙さんに対して怯えない人間なんてそうそう居ませんからね?」


「しかし、高坂殿……でしたか? 美沙さんの芒の君は美沙さんに怯えなかったと聞きましたが」


「高坂さんは特別なんですよ。アレを普通と考えてたら世の中の人間のほとんどはビビりですよ、千沙さんの気に当てられただけで爆発四散します」



 私は冗談めかして千沙さんに言いましたが……原初の種子の力を抜きにしても、高坂さんの度胸の据わり方は尋常ではありません。

 普通の人間は多少特殊な力があるからとドラゴンとの戦闘に自ら飛び込んだり、お世話になった会社がピンチだからって山ほどの大きさのゴーレムに喧嘩を売ったりしません。

 キレ散らかしている美沙さんを御する姿は狂犬を手懐けるドッグトレーナーのように見えますが……あんな事、並大抵の人間では不可能です。気当たりで気絶します。



 高坂さんの規格外の豪胆さには好感を覚えますが……高坂さんの事が大好きな乙女の私としては、あまり無茶をして欲しくありません。

 いくら特殊な能力があるからと言っても、死んでしまえば元も子もないのですから。

 蛮勇を遺憾なく発揮してうっかり死なれでもしたら、一体何のために法改正の根回しで何百億も注ぎ込んだのか分からなくなってしまいますからね。



「なるほど。ではそんな義弟殿へのご挨拶ついでに肩慣らしをさせて頂きましょうか。どうやら、この下にいる月ヶ瀬最強は戦うつもりが無いようですから」



 千沙さんが白鞘の刀をぽんぽんと叩くと、鈴の根付けが軽やかな音を奏でます。

 戦場に響けば死が訪れると謳われた千沙さん鈴の音を、こんなに心安く聞く日が来ようとは思ってもいませんでした。



「はい、お引き留めして申し訳ありません。良き狩りを」



 私は軽く頭を下げて、千沙さんを見送りました。千沙さんも会釈程度に頭を下げて、階段をゆったりと降りて行きました。



(いやー……びっくりしたなぁ、初出の情報多すぎるの本当に勘弁して欲しい……)



 私のこめかみから一筋の汗が落ちました。落ち着いて対応したつもりですが、とても緊張しました。

 まさかダンジョンに千沙さんが現れると思っていなかったですし、まさかダンジョンに現れた理由が男漁りで、まさか千沙さんが美沙さんに土をつけられてお家問題に終止符がついていたなんて情報過多にも程があります。

 天地六家の情報なんておいそれと売れた物ではありませんが、私にとってはとても有益で価値の高い情報です。



(でも……どうして千沙さんに勝ったこと、黙ってたんでしょうね? 忙しかったのもあるかも知れませんけど、せめてちょっとくらい教えてくれても……)



 結構長い付き合いになっている恋敵の不義理を少し責めたくなります。

 高坂さんにも話していないようですし、恐らくそこまで重要視していなかったのでしょう。

 言い方は悪いですが、どうでも良かったのでしょう。千沙さんに勝った事も、本家から独り立ちした事も、高坂さんと暮らす上では伝えるまでもない些事だった、と。

 月ヶ瀬家の一員である事に執着し、自身の力の無さに絶望していた過去の美沙さんとは比べるべくもありません。



(随分と強くなっちゃったなぁ、ライバル……これ、私に勝ち筋あるかな?)



 下の階層では高坂さんの方からほぼプロポーズと変わらないご実家訪問の提案をしています。あらま、ついに決心しましたか。

 普通に考えればこの時点で私の恋はおしまい。我が恋は虚しき空に満ちぬらし、思いやれども行く方もなしといった感じでしょう。



(まあ、二番手、妾、愛人……何であれ、高坂さんのお側に居られればそれで十分ですしね。本妻はお譲りしましょう)



 私の恋はまだまだ終わりませんし、終わらせません。その為の情報提供、その為の法改正です。

 年若いのがネックであれば、あと数年もすれば今の美沙さんくらいの年齢になります。きっと手を出して下さるでしょうとも。

 むしろちゃんとした倫理観をお持ちだと感心する限りです。悔しくなんかないやい。

 私は美沙さんが持ち得ないタイプの内助の功を目指していくので問題ありません。うふふ溜まったツケを回収するまで絶対逃しませんからね。



 上層からおっとり刀で駆けつけた探索者協会の職員と、ようやく立ち直った柿崎さんを連れたガリンペイロの皆さんがこの場に到着するまで、私は下の階層をソウル・リンカーで覗き見していました。

 ……あ、柿崎さんはVoyageR最初期の頃からのおまいつさんです。当然認知しています。

 認知してると伝えたらさっきの比じゃないくらいテンパるのが目に見えていたので黙ってました。

 大体のライブで見かけるし、入場制限の無いリリースイベントやミニライブの類はほとんど参戦していますし、いつも終わり際に泣き崩れる人です。

 何故か握手会には参加しない人でしたけど、あれだけ取り乱す様子を見れば理由に察しは付きます。



 まだ気分が落ち着かないのか、柿崎さんの足取りはふわふわと落ち着きません。

 探索者協会の職員が千沙さんが斬り散らかした惨状の片付けをしている間、長岡さんが柿崎さんの目を手で覆っています。

 柿崎さんの精神状態を悪化させない為でしょうか? 何でその気配りが出来て美沙さんを挑発するように高坂さんを誘惑したんでしょうか? 不可解です。



 その後、高坂さんと美沙さんが樫原さん達を呼びに来たのは、コンカラーの捕縛と撤収が終わって間も無くの事でした。

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