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天人伝承  作者: 安芸
第六章 喪失の意味を知るということ
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スザン戦争・七

 旅行で留守にしていたため、少々更新が遅れてしまいました。

 ごめんなさい。


 アレンジーは顎をしゃくった。

 前の戦で見た顔を、見出したのだ。


「やられっぱなしは性にあわん。せめて一矢報いてやる」

「援護します。お気をつけて」

「おう」


 片手に手綱を巻きつけて愛馬を浅く棹立たせ、雨で滑る剣の柄をしっかと握り、切っ先は下げ、軽く勢いをつけてアレンジーは重心低く突進していった。

 標的はただひとり。


「カズス・クライシス! お相手願おうか!」

 

 振り向きざまに、半円を描くように大剣を起こしたカズス・クライシスはアレンジー・ルドルの姿を認めると、喜々とした表情を浮かべた。


「望むところです」


 二人の男の剣は苛烈に斬り結んだ。

 鋼が音高く鳴って、弾かれる。そのまま両者僅かに姿勢を変えて、腕の角度を微調整しつつ、二度打ち下ろす。力の加減は拮抗し、どちらも一歩も退かず、鍔迫り合いとなった。


「これほど険しい断崖越えとはやってくれたじゃないか、“潰乱の疾風”よ」

「俺は軍師の命に従っただけです。責めるも褒めるも相手は俺じゃないですよ」

「そうそう、その軍師が問題だな。手を変え、品を変え、色々好き放題にひっかきまわしてくれたものだ。名はなんと言う?」

「直接お訊きになってください。俺はあなたを連れ帰る命を受けているんです」

「はっはー! 俺を連れ帰るだと? その前に、俺がおまえを連れ帰ってくれるわ。首を落としてな」


 二人は圧し離れた。

 どちらも渾身の力技で痛撃を加える。

 剣戟が十合、二十合、三十合と交わされる。その一撃一撃が重く、激しく、鋭い。

 両者の位置はめまぐるしく入れ替わった。馬同士が鼻息を飛ばしあった。蹄が泥を散らした。体あたった。汗と雨がしとどに流れた。


「いい腕だ。若いのに苦労してんなァ。だが、そろそろ馬の方が限界だろう。あんな無茶をやってのけたんだ、いつまでも持つわけがない。そら!」

 

 アレンジーは馬ごとぶつかっていった。

 カズスはまともにくらうことは避けたが、完全には避け切れず、よろめいた。姿勢が崩れる。狙い澄ましたように繰り出された突きを本能的に紙一重の差でかわして、反撃の横払いをしながら、態勢を立て直す。

 そして唐突に、馬首を翻した。


「俺は逃げます」

 

 と、カズスは堂々と宣言して、たちまちのうちに逃亡劇を開始した。

 アレンジーは置いていけぼりをくった。

 その間があまりにも絶妙だったもので、「は?」と眼が点になるほどだった。

 熾烈を極めた戦いの真っ最中で勝負もついていないのに、それっとばかりに走り去られては追いかけぬわけにはいかなかった。


「逃がすな!」


 咄嗟にアレンジーは叫び、あとを追った。

 冷静さを欠いた行動ではあったが、みるみるまに距離がひらくので、深く考える間もなく、本気の追走に出た。

 アレンジー率いる騎兵隊も慌てて将軍に続いた。

 あちこちで戦闘が中断され、なにが起こっているのか理解もできぬまま、スザン兵の多くが引き潮の如く反転した。

 イシュリー軍は深追いせず、ただちに負傷者の収容にかかった。

 

 雨が、ようやくその勢いを弛めつつあった。


 戦場を書くのは面白くて、辛いです。

 う……自分の筆力の層の薄さが呪わしい。もっと面白く痛快にできるはずなのに……! (にしても、主人公、どこでなにしてるんだ??)

 精進、精進、精進。

 はい、頑張ります。

 引き続きよろしくお願いいたします。

 安芸でした。

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