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天人伝承  作者: 安芸
第六章 喪失の意味を知るということ
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スザン戦争・二

 最前線です。

 戦記ものの醍醐味は、戦略ですが、いやはや、大変。

 読むのも、大変。よろしくおつきあいくださいませ。


 両軍激突後、激しい攻防が繰り広げられたが、どちらの陣形も崩れなかった。

 特にイシュリー軍はよく統制された指揮下にあり、組織だって防戦し、装備でおとるスザンの軽歩兵をいたずらに深追いせず、兵力の差を補って余りある戦いぶりだった。

 スザン軍の中央部隊を預かっているのは、スザンでも豪傑として名高い三名のうちがひとり、ビョルセン・メオネスだった。

 歴戦練磨のつわもので、スザン王の覚えめでたく、国民にも剛勇を持って親しまれ、最後の砦とされていた。

 ビョルセンは味方の兵が善戦するも蹴散らされ、決め手に欠ける攻撃をしかけては圧し返され、膠着状態にもつれ込み無駄死にしていくのを、これ以上黙って見てはいられなかった。

 折悪しくも雨がやまず、主力である重歩兵を動かすには最悪の条件であった。

 足場が悪いことに加え、水を含んだ服に甲冑の重みで行軍速度は遅く、大軍のため伝令が行き届くまでに時間を要した。

 それに、王宮務めの十人の参謀が選び抜いたこの決戦場は二十万の軍勢を配備するには狭すぎた。

 天人兵を投入し、殲滅作戦のためとはいえ、敵軍をうまく誘導できねば窮地に陥るのはこちらである。

 参謀らは数の多さで中央突破し、そのあと四分五裂の状態に陥った敵軍を左右より追い立てるように囲い込みをかければ問題ないと言ったが、ビョルセンはそう簡単に事は運ぶまいと思った。

 起伏のある低い丘陵が複雑に入り組んだ地形、山林、勾配のある崖と切り立った絶壁、背後は海である。

 確かに目論見通りにいけば、一網打尽にできよう。

 町に被害もなく、一般民を巻き添えにすることもない。

 しかし、頭数が多ければ必ず勝てるというものでもないということをビョルセンは知っていた。

 

 だが陛下の命令である以上、従わねばならぬ。

 

 戦場の指揮権はビョルセンにあったが、全権はドロモス王そのひとが握っていた。

 たとえ、いまこの場に不在であっても。

 ビョルセンは命じた。

「負傷者を収容し軽歩兵を下がらせよ。救命隊を出動させ、治療にあたれ。重歩兵、前進! いざ戦わん! 狙うはキルヴァ・ダルトワ・イシュリー王子の命、そして敵軍撃破である!」

 前線の斥候から第一報が届いたのは重装兵の第一陣が突撃開始した直後であった。

「申し上げます! 敵軍戦列交代! 重装兵より軽装兵へ! 繰り返します、敵軍戦列交代! 重装兵より軽装兵へ! その数、およそ二万! 尚、軽装兵の武器は長槍のもよう!」

「軽装兵だと?」

 重装兵と軽装兵では戦うまでもない。

 同じニ万の兵でも戦況は一方的なものになるだろう。

 だが相変わらず前線の勢いは拮抗していた。

 よくよく見ると、イシュリー軍は戦列をがっちりと組んで波状攻撃を繰り出し、味方の兵は思うように前へ出られず、四苦八苦している。

「長槍とはどのくらいの長さだ」

「およそ三ロンテ(三メートル)」

「成程。間合いが開きすぎているな」

 ビョルセンは対抗策を講じようとして、はっとした。

 自軍の後陣を振り返る。

 灰色の雨がしとどに降る中、眼を凝らす。

 整然と待機する後陣の更に後方へ視線を向けたそのとき、山林上空に小さな鳥の群れが飛んだ。

 これを見たビョルセンは、口角を歪め、「温い」と呟くや否や新たな命を下した。

「敵は背後にあり! 重装兵第二陣、第三陣は急ぎ反転! 攻撃に備えよ!」


 目下、掲載の仕様を修正中。

 少しでも、読みやすくあればよいのですが。


 引き続きよろしくお願いいたします。

 安芸でした。

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