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天人伝承  作者: 安芸
第二章 命を懸けた誓いに生きるということ
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シュイ湖にて

 短めに、短めに。

 過去への追想です。

 第四領地から第一領地境までは大農耕地帯と起伏のある丘陵地が続き、四か所の交通の要所の中継を経て、未開発の原野をよぎった。

 彼方には峻嶮なオーラン山脈が聳え、古来より寸分変わらぬ威容を誇っている。

 小型の漁船二隻がようやく行き交うだけの川幅と深さを維持するザール川に着いた頃、正午になった。

 この川が領地の境目であるだけに人も物資も往来は途切れることなく、一行は順番を待ち、二手に分かれて渡し船に乗り、向こう岸に到着した。

 憲兵は両岸にいて雑事や揉め事、見張りに従事していたが、用向きを伝えると最敬礼と共に一行を送り出した。

 第一領地に入ってはじめの町ポルトで休憩をとった。

 馬を休ませ、餌と水を与える。一行も身分を明かさぬまま旅客人用の食堂で食事と用足しを済ませた。一バーツ後、出立した。

 人里から離れているためか、まるで人気のない静かなるヒースの森を抜け、シュイ湖に到着したのはそれから二バーツ後である。

 湖は十年前とほとんど変わらぬ趣だった。

 時間帯による光の加減と、周囲の樹木の成長はともかく、湖そのものは十年前と同じくそこにあった。湖面は光を反射してきらめき、小波がゆるく湖岸に打ち寄せている。

 キルヴァは皆を制して馬を下り、湖の淵までいった。

 春の陽射しが眩かった。緑の新鮮な薫りが鼻孔をくすぐった。風がやわらかで心地いい。

 キルヴァは湖の真ん中に視線を定め、胸一杯に息を吸い込み、眼を閉じた。

 ゆっくりと息を吐きながら眼をあけると、そこに、十年前の幻影を見た。

 ……セグランが、傷ついている天人を曳いて、こちらに戻ってくる。

 湖岸に眼を移す。

 ……今度はセグランと幼き日の自分が向き合っている。

 あの日ここで、二人で絶対の秘密を誓った。

 あれから十年――。

 あの日から五日後、キルヴァはセグランと別れた。

 別れてからの十年の月日は長いようで短く、また、短いようで長いものだった。

 こうして思い出の地に立つと、埋もれていた記憶がまるで昨日のことのように蘇ってくる――。


 皆様には、親兄弟以外で、年の離れた、大切なひとはいますか?

 別れたくないのに、別れてしまった、もしくは現在別れて暮らしている、そんなひとが?

 心の寂しさ。

 そんなところも書けていけたらと思います。

 ご覧の通り、地味ですが、淡々といきたいです。

 引き続きよろしくお願いいたします。

 安芸でした。

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