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天人伝承  作者: 安芸
プロローグ
1/82

閃光

 この物語はプロローグと第一話を続けてごらんください。

 

 翼無き者に告ぐ


 我らは天人


 いと高き天より地を


 生きとし生ける命あるすべての行く末を


 見届けるものなり


 我らは天人


 人ならぬもの






      プロローグ




 激しい雷鳴。そして稲妻も。

 朝からずっと、大粒の雨が大地を穿ち続けている。

 おかげで今日の課外授業は台無しだ、とキルヴァが恨みがましい眼で窓の向こうを睨みつけたそのとき――

 なにかが、閃いた。

 暗く垂れこめた雲の合間から、まっすぐに、なにか金色に燃えるものが落ちてきた。

 キルヴァは机を飛び離れ、窓辺にしがみついた。

 だが、光はすぐに消えてしまった。

「王子、席にお戻りを。勉強の最中です」

「いま、なにか空から落ちてきた」

「空から落ちてくるものなど決まっています。雨か、星です」

「えっ。星?」

「正しくは星のかけら、隕石ですが。……拾いに行きたいですか?」

「行きたい」

「ではさっさと今日の分の勉強を終わらせてしまいましょう。終わって、雨がやんでいたら、星拾いにお供いたします」

 キルヴァは眼を輝かせて机につき、真剣に勉強を再開した。

 側近のセグランは真面目で厳しいが、約束したことは必ず守ってくれる。

 雨がやんでくれればいい。

 しかしキルヴァの幼い願いはかなえられることなく、結局、雨はやまなかった。

キルヴァがセグランに連れられ星を拾いに行けたのは、翌朝だった。

 ところが、落ちていたのは星ではなかった。

 


「……あれ、なに」

 キルヴァが朝日に輝く湖のほぼ真ん中を指差した。

「……鳥?」

「……いえ、鳥にしては大きすぎますよ。あれは……まさか……」

 セグランは湖の淵に近づこうとするキルヴァを止めて、じっと眼を凝らした。

「大変だ」

 セグランはすぐに上着を脱ぎ捨てた。

「王子はここにいてください。これ以上近づいてはいけません。というよりは、もっとずっと離れて、できれば隠れていてください。私がいいというまで出てこないように。いいですね。お願いですから、いまは私の言うことを聞いてください」

「……わかった。隠れている。けど、その前に教えて。あれはなに?」

 セグランの強張った喉が、緊張にみちた声を紡いだ。  

「あれは、天人です」



 ――もしも、このとき、この出会いが、後の悲劇の源になると知っていたならば


 ――私はあなたを助けなかった


 ――そう、私は選択を誤ったのだ


 ――私があなたを助けなければ


 ――王子とあなたは恋に落ちることもなく


 ――私はなにも失うことはなかったのだ


 2010年、新年を迎えました。皆様、あけましておめでとうございます!

 連載開始第一弾は、ヒロイック・ファンタジー。自分でも荷の重い題材を扱っています。苦悩することまちがいなし。でもやります。

 少しでも皆様の心に届く物語を。

 引き続きよろしくお願いいたします。

 安芸でした。

 

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