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1話 帰還者は野田君

まったりゆらゆらやっていきます。

どうぞよろしくお願いします。

 高校1年。夏休みが終わって新学期が始まる。


 それに伴って夏休み中に出された課題の提出が各授業で行われていた。

 しっかりやってきた者、写させてもらった者、家に忘れてしまった者、2ヶ月ぶりの日常が戻ってきた。



 日常とはいってもつまらない日常だ。刺激の無い平坦な日々が過ぎていく。……そう思っていた。



 窓側から2列目の1番後ろの席に座る野田君が、授業中に眩い光と共に消えた。

 クラスメイト一同それに気づくが教師を含めて誰も騒いだりしなかった。


 野田君が消えてからも普通に授業は進み、数分後、さっきと同じように眩い光が教室を包むと野田君がいた。


 授業はそのまま継続し終わりの鐘がなった。



 休み時間を終えて英語の授業が始まった。


「それじゃあこの文を野田君、訳してみて」

 野田君は椅子を引いて席を立つと教科書を持って答えた。


「えー、━━━━━━━━」

(((((!?)))))


「す、凄いわ野田君!今のはポルトガル語よね、それに発音も違和感なかったわ。先生3年留学してたからわかるわっ。

 でも英語に訳して欲しかったの」


 先生は野田君の席までかけ寄り目をキラキラさせ鼻息荒くして褒め称える。


 肝心の野田君は先生の圧に少し圧されているような。


「あ、すみません。

 言語理解スキ…親の仕事の都合で何年か暮らしてたので」

((((((言語理解スキルって言いかけた!))))))

 クラス全員がそう思った。


「凄いわ!先生も教えて欲しいくらいよ。あ、ごめんね、授業再開しましょうか」

 そう言って教卓の前に戻る先生。



 なぜ、クラス全員が同じ事を思ったのか、それは1時間前に遡る。


 前の時間では夏休みの課題だった自由研究の発表をさせられていた。


 その中でも特に記憶に残ったのが野田君の発表。


 それは、『異世界転生転移召喚にまつわる社会への影響』というタイトルだった。

 異色すぎるため、みんなの視線が集まった。


 そして10分間の講演会は無事に終了した。


 その内容では魔法やスキルといった超能力的な存在のことついても話していた。


 最後のテーマが仮にこの世界に帰ってこれた場合というものだった。

 帰ってこれられる手段というのが魔王を倒した場合か転移魔法の成功か。というのが一般的らしい。


 そして一度教室を見渡してから言った。


「もし、本人が何も言わないのであればそれはきっと平穏を望んでいるから、周りの人も変に騒ぎ立てないで欲しい。

 平穏を望んだからこの世界に帰ってきたんだと、そう思うから」


 そう言って野田君は90度のお辞儀をして黒板に広げたレポート用紙を畳んで席に戻った。


 これには拍手が上がった。

 クラスで目立つような人じゃないしましてや変に目立つこともなかった。誰から見てもクラスメイトの1人という認識だった。


 席に戻った1分後、野田君が光に包まれて消えた。


 みんな思った。


(((((((野田君、異世界行ったんだ)))))))


 それからしばらくして野田君が光から現れた。


(((((((野田君、帰ってきたんだ)))))))



 こんなタイミングで異世界に行く人いるのだろうか。マッチポンプじゃないかと思ったりもした。


 それにしては発表にかける思いは異常だった。

 1日そこらでできるような完成度じゃなかった。きっと発表の練習もしてたんだと思う、黒板に色々付け足してたから妙に聞き入ってしまったのもそれが原因だと思う。

 それに魔法陣も片手間に描いてたから何度も何度も描いてきたんだろうなってのが伝わった。




 だからきっと異世界で何年か何十年過ごして口が滑ったんだと思う。

 言語理解スキル。この世界に帰ってこられたとした場合の有用スキルリストにしっかりと記載されてたからわかる。


 野田君は自ら実践してきたんだ。

 だからクラスメイトは騒がない。騒いだ場合の危険性はしっかりと頭に入っているから。



「ハクションっ!!」

(バギャッ!!)


 音に反応して振り返れば野田君の机が割れていた。

 うんうん、力加減が難しいんだろうね。


 これには英語の先生だけが取り乱していた。


 クラスがより一層まとまったような気がしたし、これからのクラス行事が楽しみだ。

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