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ヨウコとカズキ

 異世界転移は一瞬だ。魔法陣が光り、浮遊感を覚えると、次の瞬間には異世界に着いている。


 いつもは異世界召喚術によって時空を越えてくるので、現れる場所は大体王城の広間、もしくは中庭が定番だった。しかし今回は俺が自分に転移術を掛けて時空跳躍をしている。なので、どこに転移するかは事前には分からなかった。


 浮遊感に包まれた次の瞬間、俺の視界は真っ白になった。なんだ? 俺は一体どういう状況なのか分からず目を瞬いたが、しばらくすると突然視界が開けた。


 眼下にバーンと世界の大パノラマが広がったのだった。おおお! なんかすごいな。そして同時に、自分が陥っている状況が理解出来た。


 落ちているのだ。物凄い高空から。つまり俺は、はるか上空に出現して、そのまま絶賛落下中なのである。さっきの白い視界は雲の中だったのだろう。


 つまりスカイダイビングだ。俺は学校の制服姿のまま両手を広げた。途端、風圧で落下速度が落ちる。動画とかで見た通りだな。ちょっと嬉しくなる。問題は、俺はパラシュートなど背負っていない事だろうな。このままだと地面に激突だ。


 まぁ、俺、飛べるんだけどね。


 前々回の異世界では磨上の魔力無効結界のおかげでもう少し低いところからだったけど、地面に叩きつけられたなぁ。懐かしい。


 俺は落ち着いて、飛行術を使った。その途端、ふっと重力が緩和され、落下が止まる。魔力無効結界は無いようだな。俺が少しほっとしていると、その横を何かが物凄い勢いで落下していった。


「きゃあぁぁぁぁああああ!」


 見ると茶色いツインテールをはためかせ、神原が一気に落ちて行くところだった。良かった。神原もちゃんと一緒に転移出来たんだな。……というか。


「おーい! もうお前も飛べる筈だろう! 落ち着いて術を使え!」


 俺は落ちて行く神原に向けて叫んだのだが、神原は遠ざかりながらこう叫んだ。


「むーりー! 怖いー! 死ぬー!」


 突然の落下状態で恐慌状態になっているものとみえる。


 仕方ねぇなぁ。ここで神原にロストされても困る。俺は魔力を高め、一気に神原に向けて急降下した。追い付き、神原の足首を掴む。そして停止。


「げふ!」


 急制動に神原がうめく。俺は神原の足首を掴んでぶら下げた状態で……。あ。


 神原の格好は制服。しかもスカートはかなり短かった。その状態で俺は足首を掴んで彼女をぶら下げている。……となるとどうなるか。


「……シマシマか」


「こんの! エロ勇者! 死ねー!」


 異世界の上空に神原の叫びが響き渡った。


 ◇◇◇


 神原のパンツはどうでも良いとして。俺たちは無事に磨上がいるであろう異世界に到達した。俺の魔力は異世界転移のためにかなり使ってしまっていたので、俺と神原はすぐに地上に降り立った。


 MPは休息すれば回復する。とりあえず上空からすぐ近くに村があることは見て取れたので、俺と神原は歩いて村を訪れた。


 魔気の濃さからすると、ここはまだ魔王の勢力圏では無さそうだったが、磨上は人類をも籠絡する戦略を使う。もしくは磨上が勇者である可能性も考えられる。その場合は村に滞在出来ないかもしれない。


「その場合は先輩方式で脅せば良いんじゃないの?」


「お前、それが勇者の言い種か?」


「結果的に魔王を滅ぼせれば良いんじゃないの?」


 ……磨上のおかげで神原が合理的な勇者に育って何よりだ。確かに最優先事項は魔王の討伐……って、まだ磨上がこの世界の魔王だとは決まっていないけども。


 俺たちは入り口から村の中に入っていった。その前に俺たちは勇者装備に着替えていたから、格好は異世界風になっている筈だ。村人はよそ者である俺たちを警戒する素振りは見せたが、俺たちが勇者であると名乗っても特に反応は示さなかったな。まぁ、本当は今回は、俺たちはまだ国王から勇者認定されてないんだけどな。


 俺は情報収集をすべく、村人に話しかけて回った。魔王は何処なのか。どの程度の勢力なのか。魔物の出現頻度はどれくらいか。後は今回、王城の場所が分からないからそれも確認しなければならない。


 村人は特に警戒することなく話してくれたが、言う事がいちいちおかしかった。


「へぇ、魔王? なんですかそれは? 聞いた事がありませんな」


「魔物は出ますが、人が襲われる事などありません」


「王城? 王様? なんですかそれは?」


 ……なんだと?


 魔王がいない? 魔王がいないのに勇者が召喚されるものか。って、今回俺は勝手に来たのであって召喚された訳では無いのだが。それにしても、魔物はいても人間を襲わない? そんな事があるのか?


 それと、王様がいない? そ、それじゃあ、誰が国を統治しているっていうんだ?


「神様ですよ。神様が全てを取り仕切って下さっているのです」


 神様? 神様が国を統治している? なんだそれは。これまでの異世界でも信仰されている神様はいて、その神様を信仰する宗教が強い勢力を持っている事も多かった。その宗教団体が国王の代わりに国家を統治しているという事なのか?


 しかしどうもそうではなく、神様自身がこの村を治めているという事だった。意味が分からず俺と神原は顔を見合わせてしまったが、村人が言うには税の徴収も何も無く、必要品は神様が持って来てくれて、食料が足りなければ供給され、それこそ望むことは何でも神様が叶えてくださる、のだという。


 俺は唖然とした。なにその夢の世界。税金もなにも無いため、村人はほとんど仕事をしなくても良いそうで、適当に生活に必要な作業をする他は、のんびりしているのだという。


 ……これは、あれだ。


「神原、どう思う?」


「……その神様ってのが磨上先輩くさくない?」


 そうだよな。そう思うよな。俺も同意だったが確証が無い。俺たちは村人から食料と水を分けて貰って(何しろ神様がいくらでもくれるそうで、鷹揚に分けてくれた)、俺たちは飛行してこの世界を偵察して回った。


 幾つかの村に降りたが、何処の村も同じような状況だった。食料も物資もいくらでも神様がくれるということで、村人はどこでも遊びほうけていた。堕落していた。将棋やポーカーみたいなゲームをしたりサッカーみたいなスポーツに興じている連中もいたな。聞けば医療も神様に願えば怪我も病気もあっという間に治るという事で、全員が健康そのもの。子供も死なずに全員よく育つという事なので、人口爆発が懸念される状況と言える。


 飛び回っていても確かに魔物はたまに見たが、俺たちに襲い掛かってくる事はなかった。そして、確かに魔王の気配が無い。魔物がいるのだからどこかに魔力の核が生まれているのだとは思うのだが、何処にもその気配が無い。


 五日ほどこの世界を見て回った俺と神原の意見は。


「「おかしい」」


 という事で一致した。こんな世界があるわけない。


 何しろ、食料は神様が供給してくれるというのだが、かなり広い範囲を見て回ったのにその食料を作っている土地が見当たらない。麦畑も豆畑も芋畑も一切無いのだ。都市があっても確かに王も市長すらもいない。道具を作る職人もいないのに、人々は豊富な道具や衣服を用いて遊び暮らしている。


 一体、誰が食料を生産し、道具や衣服を作成し、しかもそれを人類世界に配布して回っているのか。どうやって魔物に人を襲わせないようにしているのか。これが全て「神様のおかげ」で済むのなら、それは確かにここは楽園と言っても間違いないだろう。


 しかし、そんな無から有を生み出すような事はあり得ないだろう。もっとも、そういう物理法則を捻じ曲げる方法には心当たりが無いこともない。……魔法だ。


 魔法は、魔力と引き換えにあらゆるこの世の法則を捻じ曲げる術だ。引き換える魔力が大きければ大きいほど、現実を改変できる能力は大きくなる。


 それこそ、磨上が自分に関わるあらゆることを消去、改変してしまうなんてことができてしまうわけである。しかし、それではこの異世界一つを全て思い通りに動かすほどの現実改変など出来るのだろうか。


 出来なくはないだろう。魔法は、言ってしまえばなんでも出来る能力だ。レベルが上がるにつれ、魔力が増えるにつれ出来ることは増える。俺だってやろうと思えば現実を改変することはもう出来る。ただ、とても世界一つを改変する事なんてできないと思うが。


 磨上なら、俺よりもはるかに高いレベルと魔力を持つあいつであれば出来なくもない、のかもしれない。


 しかしながらこの世界のこれは、一瞬の現実改変ではない。何しろ人間社会が生産を放棄するほどの長期に渡って、人々に食料や物資が供給され続けているのだ。どんな老人に聞いても「ワシが生まれた時からこうだった」という答えしか返って来ないのだ。これは既に数世代に渡ってこの状況が続いているという事を意味する。これはどう考えても尋常な話ではない。


 世界そのものを造り変えて維持する。まさに神の御技で俺の考える魔術の範疇を外れている。


「なんだって先輩はこの世界でこんなことを……」


 神原は呻いたけど俺にだって何故だかなんて分からない。磨上がこの世界でその甚大な魔力を使って神様役をやっているのはもう間違いないと、俺も神原も思っていた。どこにも磨上がいる気配はなかったが、それでもこんな世界を造り上げようなんて考えるのは磨上しかいないだろうという確信が、なぜか俺の心には生まれていた。


 思えば、磨上は何度か異世界のシステムや政治について詳しく話してくれた。磨上は恐らく、勇者として戦った初期の頃に、魔王討伐後に異世界に残ったのだ。恐らく長期に渡って。


 それから、磨上は元の世界に戻り、魔王として何度も転移し、世界を滅ぼしてきた。しかし、魔界に堕ちた世界にずっと居着く事はなかった。


 それは、勇者側にいても魔王側にいても、結局は究極の勝者たり得ないということが、磨上には分かっていたからだと思う。魔王サーベルが言っていたように、勇者の前には何度でも魔王が現れる。そして恐らく、魔王の前にも何度でも勇者が現れるのだ。


 永遠に戦いは終わらない。異世界はそういうシステムになっているのだと思う。ではどうするか。俺に思い付く方法は、一つしかない。勇者も魔王も生まれない世界を創ることだ。そしてそれが、磨上が改変したこの世界なのだろう。


 なぜ魔王が生まれるのか。その理由を俺はなんとなく考えたことがある。


 魔力の核は唐突に生まれるらしい。いくつかの世界で聞いた話では、大きな疫病が流行ったり、飢饉が起きて人々が多く死んだり、大きな戦争が起こった後に生じるのだという。


 それが次第に大きくなる。そして魔王が生まれる(召喚される)と能動的に魔界の範囲を広げて人間社会を侵食して行くのである。


 恐らく多くの人が悲しみ、苦しみ、恨み辛みを覚えると、それが魔力の核を生じ魔界を生み出すのだ。つまり、人々が平和で裕福に暮らしていれば魔力の核は生まれず、魔界は生じず、魔王は降臨しないのだ。そして逆説的に言えば魔王がいなければ勇者も召喚されない。


 つまりこの世界だ。人々が生きるためになんの不満も持たず、魔物も人を襲わず、争いも生まれないこの世界には魔王も勇者もいらない。平和だ。これぞ持続可能な社会だ。という事なのだろう。


 磨上がそういう理想の世界を望んだ、創造したという事なのだろうか? 本当に? 磨上がそんな世界を望むだろうか。あの魔王の中の魔王が。


 ……とりあえずそれは今は置いておこう。後で本人に問い正せば良い。それよりも問題は、磨上が今どこにいるかだろう。


 そう。俺たちが色々飛び回っても、磨上の影は一切見えなかったのだ。俺は魔力探知を使い、磨上の魔力を探索したのだが、あの巨大な魔力はどこにも感じ取ることが出来なかった。


 磨上が神なのであれば、人々への食糧供給などの際に魔力が動くはずだ。それを感知して逆に辿れば磨上の場所に辿り着けるはず。俺はそう考えて、村の食糧供給場所で待機してみたのだが、俺がいる間は(というより人がいるとダメらしい)そこに食料や物資が送られてくることはなかった。


 こんな世界を維持するには、常時魔力で世界に干渉する必要があると思うのに、磨上の魔力はどうしても感じ取れない。俺と神原は完全に手詰まりになってしまった。町の酒場で二人して頭を抱えてしまう。


「先輩が何考えてるか全然分からない!」


 全く同感だ。同感だが、そんなことを言っても意味はないだろう。


「カズキ! あんた先輩の彼氏でしょう? 彼女の考えている事ぐらい分からないでどうするの?」


 無茶を言うな。確かに、俺と磨上は元の世界では結構近しい存在だったという自負はある。だが、磨上は本心を韜晦する術に長けているから、あいつの考えが読めた事なんてほとんどないんだから。


 俺が憮然としていると、神原はやれやれと言うように首を振った。そして俺の事見て小馬鹿にしたように微笑んだ。


「……そうなんだけど、でもね、先輩はあんたについては結構分かり易かったわよ?」


 俺が目を丸くすると、神原は少し意地悪そうに目を細める。


「いつもあんたを見てたもの」


 ……それはちょっと気が付かなかったな。いや、そういえばそうだったかもしれない。磨上とは、事ある毎に目が合った。教室でも通学路でも、異世界でも、俺の家でも。……俺もつい磨上の事を見てしまう自覚があったから、それで目が合ってしまうのだと思っていたけど。


「あんたに私が触ろうものなら凄い目で睨まれたからね。よっぽどあんたの事が好きなんだろうなぁ、って思ってたわよ」


 く……。客観的に見ていた神原にそう言われると、なんだか物凄く恥ずかしい。何故なら、磨上の想いが見えていたなら当然。


「あんただって磨上先輩の事大好きなんでしょう? 見え見えよ」


 俺の気持ちもバレバレだったに決まっているのだ。


 認めたくない事だが、いや、そんな筈がある筈もない。勇者と魔王の関係なのだから、優等生な磨上と平凡な俺の関係なのだからあるわけがないと思いながらも、俺はやっぱり磨上に惹かれていた、捉われていたのだ。


 磨上からの想いが、俺の勘違いでなかったのなら、神原にはっきり見えてしまうような明らかなものであるのなら、俺は磨上に言いたいことが、伝えたい事がある。


 しかしどうやって。この世界に磨上がいるのは間違いないのに、どうしてもこの世界の神である磨上に声を届ける方法が分からない。


 ……。一つ、思い付いた。


 磨上はこの世界の神だ。神はいつでも見ている。天網恢々疎にして漏らさず。そう、この世界における俺たちの一挙手一投足は磨上の監視下にあると考えて良いだろう。そして、神原はさっき言っていたな。


 俺は、テーブルに乗っている神原の手をわしっと掴んだ。


「は?」


 神原が思い切り戸惑ったような顔をする。まぁ、そうだろうよ。俺は構わずその神原の小さな手を持ち上げ、自分の唇のところに持って行き、チュッと吸った。


「ぎゃー!」


 途端に神原が大声を出す。俺は即座に魔力を使って神原が逃げられないように拘束した。神原の表情は引き攣った。


「磨上が出て来ないんじゃ仕方がない。帰るか、サツキ」


「誰がサツキよー!」


「帰って二人で幸せに暮らそうじゃないか。磨上なんて放っておいて」


「あんた正気なの?」


「正気だとも。磨上がいないんだから、サツキも気持ちを隠す必要はないんだぞ? 俺の事好きなんだろ」


 もちろん出鱈目である。


「誰がよー!」


 神原は顔を真っ赤にして涙目で抗議した。しかし俺は演技を続ける。


「可愛いサツキ、大事にするからね」


 神原の手を頬擦りする。「ひー!」っと神原が悲鳴をあげているが、魔力で拘束してあるので動けまい。


 ……さっき、神原は磨上は俺が神原に触れると凄い顔で睨むと言っていた。俺だって磨上が他の男に触れたり触れられたりしたら嫌だ。俺の目の前で磨上が口説かれたり、磨上が男と宜しくやっていたら?


 俺なら……。


『いい加減にせんか!』


 ドーンと頭の中に声が響いた。グワっ! 俺は思わず衝撃に仰け反る。


『このエロ勇者め! 成敗してやる故そこに直れ!』


 大きな声が脳内に響き渡り、次の瞬間、酒場だった筈の周囲の風景が音も無く燃え上がった。紅蓮の炎が辺りを埋め尽くすと、その炎が一気に広がり、俺と神原は漆黒の円盤の上に取り残された。


「な……!」


 愕然とする俺と神原の上から、今度は肉声が、懐かしい声が降って来た。


「見事誘き出されてやったぞ。満足か? 勇者よ」


 見上げると、赤黒い空の中に燐光を纏った女性が浮いていた。黒髪を靡かせ、エロはどっちだと言いたいような魔王装備で肉体の曲線を誇示し、怪しくも美しい微笑みを浮かべて。


 探し求めたその人。磨上 洋子がそこにいた。


  ◇◇◇


 あれほど会いたかった磨上だが、その姿を見ても嬉しくないのは何故だろう。


 それはあれだな。磨上が何だか知らないけど、物凄く怒っていたからだ。怒髪天を突くというけどな。本当に磨上の黒髪が逆立っていたからな。そしてバリバリと燐光を放っている。


 俺もだが神原の表情が恐慌寸前という感じになった。彼女は必死に磨上に向けて叫んだ。


「せ、先輩! 違うんです! 私は無罪です! こいつが、こいつが無理やり!」


 うん、確かに神原は無罪である。俺が魔力で拘束して動けなくしたのだから、神原に罪は一切ない。ないのだが……。


「もちろん。ちゃあんと分かっておるとも。サツキ」


 磨上の猫撫で声に神原はホッと胸を撫で下ろす。しかし魔王は冷酷にもこう言った。


「しかしのう。満更ではなさそうだったではないか? 手を握られて顔を赤くしていたであろう?」


「そんな事ありませんー! 信じて先輩ー!」


 神原は悲鳴を上げたが磨上は聞いちゃいなかった。うん、多分、磨上にも神原が無罪であることは分かっているんだと思うぞ。磨上が神原に対して怒っているのは違う事だ。結構余計な事言ったからな。


 神原へのお仕置きは後で存分にさせれば良いとして、せっかく出て来てくれたのだ。ここで磨上を説得してなんとか元の世界に彼女を連れ戻さなければならない。


「おい! 磨上! 一緒に日本へ帰ろう!」


 俺は叫んだのだが、磨上は表情一つ変えなかった。


「断る! 我はこの世界の神じゃ」


「そりゃそうだろうが、お前が本来いるべき世界はここじゃないだろう? 生まれた世界に帰るべきだ」


「あの世界とは縁を切ったわい。今や誰も我の事を覚えてはおるまいよ」


 確かにそれはそうなんだが、そんな物は再び磨上自身が改変して元に戻せば良いのだ。しかし問題は、なぜそんな事をしたのか、という事なのだが。


「我はもうあの世界には飽き飽きした。何の未練も無いわい」


 本当かよ。俺の見るところ、磨上は元の世界でもそれなりに楽しそうにやっていたと思うんだけどな。俺の母親や妹とも仲良くやっていた。それがある日突然の出奔だ。俺だって、磨上が現実世界で迫害されているとか、嫌な事が続いているとかいう理由なら、磨上が異世界に逃げても異論は唱え難いんだけど、どうもそんな感じは無かったのだ。


 それはちょっと後回しにするとして、問題なのはこの世界だ。俺と神原は恐らく、磨上が改変した空間に転移させられている。ここが神としての磨上の住処なのだろうか? 真っ暗で殺風景で何も無いようだが。それこそ、何の楽しみも無さそうに見える。漫画もゲームも無い。


 磨上だったら自分の空間はもっと豪奢に造って、それこそ宮殿の様に仕上げて美男子の魔族でも侍らせているイメージだったのだが。


 ……もしかしたら、理由があるのかも知れない。


「磨上、この世界は何なんだ? 何のためにこんな世界を創った? 人間も魔族も遊んで暮らす、そんな世界は不自然だろう?」


「しかし、一番平和で安定した世界であろう? この世界なら永遠に平和に、魔王も勇者も存在せずに存続させる事が出来る」


 この磨上の答えで、俺の仮説が間違っていなかった事が分かった。そして、もう一つ。


「……それはつまり、磨上は長続きしなかった世界を知っているんだな」


「……」


「え? どういう事?」


 神原が戸惑ったように口を挟む。


「俺は、勇者が魔王を倒しても魔王は何度でも出現し、魔王が世界を滅ぼしても何度でも希望が生まれて勇者が降臨すると仮説を立てたが、実際に見たことは無いし、そういう世界は知らない。しかし、磨上は本当に『知っている』んだよ。そうだろう? 磨上?」


 磨上は不機嫌そうに眉をしかめて俺を睨んで、吐き捨てるように言った。


「勘の良い奴じゃ。流石はカズキ。伊達に十回も勇者を続けてはおらんな」


 磨上は腰に手を当ててふんぞり返った。


「おうとも。その通りじゃ」


「……何回目だ?」


「最初の数回じゃな。一度では無い」


 俺は思わず絶句する。


「数回?」


「ああ。一回目の冒険が終わった後、我はその世界に残った。勇者としてな。栄耀栄華を楽しんだのじゃ」


 勇者として魔王を倒して凱旋すると、国中の人々から感謝され、王様より金銀財宝を授かり、ずっとこの世界で暮らしてくれと頼まれる事が多い。俺だって毎回頼まれた。俺はそれを振り切って帰ったのだが、磨上は残ったというのだ。……元の世界に帰りたくない事情があったのかも知れない。


「じゃがな。数十年経つと、魔王の記憶は忘れ去られ、人々は争うようになり、再び魔王が出現するのじゃ。我はまた勇者となり、再び魔王を倒す旅に出た。そして、魔王を倒し平和が来て、我は讃えられる。しかし、また数十年経つとまた魔王は出現する」


「ちょっとまて!」


 俺は磨上の話を思わず遮る。


「……今、数十年と言ったか?」


「最初の世界には結局、数百年はいたのではないかのう」


 俺も神原も間抜けに口を開けてしまった。数百年? つまり、磨上の精神年齢は数百歳以上という事になる。そりゃ、貫禄もあるわけだ。


「そうやって懸命に魔王を滅ぼし続けていたのじゃが、人間というのは愚かなものでな、その内に我の事を畏れ疎むようになる。我がいるせいで魔王が出現するのだと言い出すのじゃよ」


 ……これは俺にも覚えがあるな。勇者なんかを召喚したから魔王が暴れるのだ、という意見はいろんな世界で時々聞いた。人間は冷静に理屈で動くとは限らない。磨上は数百年、不死の存在として人類社会に君臨したのだろうから、人々にとっては魔王と同質に恐るべき存在に思えた事だろう。


「で、我は排斥された。呆れかえった我は元の世界に帰った。数百年が無駄になったわけじゃの」


 磨上はふーっと。色っぽい溜息を吐く。


「二回目も同じじゃ。何百年か経つと、戦い続けてやっても勇者は排斥されるようになる。これは人類の習性としか思えぬ。三回勇者をやって、我はほとほと人類に愛想が尽きた。すると今度は魔王として魔族に召喚された。我は喜んだぞ。魔王ならあの愚かな人類に鉄槌を下すことが出来るからの」


 どうも魔力があって、正義の心を失うと、魔王として召喚され易くなるらしい。


「我は力を振るって勇者を退け、世界を滅ぼした。そしてそのまま魔王として君臨した。……じゃが、数十年すると、勇者が生まれ人類が再興し、再び戦いが始まってしまった」


 ……それは辛い。


「何度徹底して人類を滅ぼしたつもりでも、あいつらはしぶとくてな。何度でも蘇ってくるのじゃ。で、そうしていると、魔王である我の力を疑う魔族も出てくるわけじゃな」


 ……辛い。それは辛い。結局、磨上は魔族に追われて元の世界に帰ってくるしか無かったのだという。


「魔界でも色々試したのじゃがの、結局は同じじゃ。我は異世界では勇者としても魔王としても永住出来ぬ。最終的には異物として排斥されてしまう事になる。あまりの馬鹿馬鹿しさに、我は出来るだけ召喚に応じないでも済むようにするようにして、召喚されてしまったら魔王として世界を滅ぼし、その後に魔界も滅ぼしてから帰還する事にした」


「は? 魔界も滅ぼした?」


「全部燃やしてしまってな。無の状態にする訳じゃ。ま、それでもあやつらはしぶといから、どこかから湧いてきてしまうのじゃろうが」


 そう語る磨上の目は暗い洞窟のようだった。虚無に、絶望に満ちている。


 ……絶望の深さが違った。磨上は恐らく、千年以上の時を人類や魔物の為に費やし、彼らのために尽くしてきた。しかしその報いは結局は排斥であり、自分は異世界では完全なる異物である事を思い知らされる事でしかなかったのだ。そして渋々元の世界に帰ってくるしかない。


「其方も覚えがあるじゃろうが、元の世界に帰ってもな、自分が異物であるという思いが拭えんのじゃよ。人間にはあるまじき力を持っているのじゃからな」


 それは分かる。高レベルの勇者としての力は、元の世界では異端でしかない。本気で力を振るえば自衛隊にだって勝ててしまうような人間は元の世界で普通の生活を送ることは難しいのだ。慎重に力を隠し抑えて自分を偽って生きるしか無い。


「つまり我は、何処にも行き場が無い存在になってしまったのじゃ。さて、では我はどうすれば良いのかの?」


 咄嗟に言い返すのも難しいほどの絶望が、磨上の言葉からは感じられた。魔王サーベルの絶望が浅いと叱責した理由がよく分かった。一千年の絶望を前に、たかだか数十年勇者をやっていたに過ぎない俺の存在は如何にも薄っぺらい。


 そしてその絶望の果てがこの理想の世界という訳だ。


「なるほど、人類が争わなければ魔力の核から魔界は生まれず、魔物が人を襲わなければ勇者も召喚されないという事ですね? 凄い」


 神原が心底感心したように言って、磨上は満足そうに頷いた。


「我が神として管理すればこんな世界の維持も可能じゃ。さすれば我はこの世界に永遠に君臨する事が出来る」


 そうすれば我が二度と居場所を失う事は無い、と磨上はポツリと呟いた。そのセリフにはなんというか、軽々しく言い返してはいけない深刻な色合いを帯びていた、が。あえて俺は言った。


 磨上の欺瞞に気が付いていたからだ。


「本当に永続するならな」


 俺の言葉に磨上はビクッと身体を振るわせた。神原が戸惑う。


「どういう事?」


「おかしいと思わなかったのか? この世界に供給される物資はどこから湧いて出た?」


「そりゃ、先輩の魔力からでしょ?」


 神原は自明の事だとばかりに言った。俺は頷く。


「そうだ。磨上の魔力からだ。しかしだな、磨上の魔力がいかに絶大だとは言え、一つの世界を維持し続けられるのか? しかも、無から有を生み出して配るという、歪な世界を」


 千年くらい生きたらしい磨上のレベルがどれくらいなのか、俺には見当も付かないが、俺では一つの村に必要物資を生み出して供給するような真似をしたら、多分半年も保たないな。それくらい事象を改変するには魔力が必要なのだ。


 それを広大な異世界一つを全て維持するなんて、どんな魔力があっても難しいだろう。多分、本物の神様にだって無理だと思う。だからそんな夢の世界はこれまで存在しなかったのだ。


「この世界を既に何年維持しているのかは知らないけど、いくらなんでも磨上でも魔力が保たない筈だ」


 俺の指摘に磨上は顔を歪める。「勘のいい奴だ」とでも言いたいのだろう。勘が良いついでにもう一つ踏み込んでやろう。


「他の世界から持ってきたな?」


「は? なにそれ?」


 神原が驚愕する。俺は磨上から目を離さないままで説明した。


「おそらくだが、他の異世界に行って食糧なり物資なりを奪って来ているんだろう。そうすれば無から有を生み出すよりは容易いからな」


 つまり略奪だ。よその世界から奪ってきたものでこの楽園世界を維持している。なんという歪さなのだろうか。俺はそう思ったのだが、磨上は皮肉そうに笑った。


「なるほど、そういう手もあるな。しかし我はそんなまだるっこしい手段は取らぬ」


「? なんだと?」


 磨上は魔王そのものの笑みを浮かべて恐ろしいことを言った。


「世界のそのものを分解して、魔力に変換して吸収したのじゃ。その魔力で思い通りの物資を生み出せば良い」


 世界を分解して魔力にする? あまりのトンデモ発言に俺は頭の中が空白になる。そ、そんな事が出来るのか? 間違いなく俺は出来ない。しかし、俺よりもはるかに高レベルの磨上には出来るらしい。


 な、なんという事だ。ということは……。


「一つの世界の生きとし生けるもの、それ以外にも世界を形作るものを、文字通り滅ぼして分解する。そして魔力にしてこの世界の維持に使う。どうじゃ、簡単じゃろう?」


「せ、世界を完全に滅ぼしたという事か?」


「小さな意味ではそうじゃな。この世界は、魔力が世界の形を作っている。じゃから、我のやったことは形を失わせ、魔力に戻したということじゃな」


 やってることが天地創造レベルじゃねぇか! 磨上の力は俺の予想の遥か上を行っているらしい。一体全体、今のレベルは幾つなんだろう?


 しかしそれにしてもそんな事をしたら……。


「そんな事が許されると思っているのか?」


「我の世界を維持するためじゃ。やむを得ぬ」


 流石に許されるとは言わなかったな。世界を消滅させるなんて、魔王として世界を滅ぼすのとは次元の違う悪行だ。


 それにしても……。


「しかし、そんなとんでもない事が簡単に出来るものなのか?」


「……簡単ではないぞ。世界には、神がつきものじゃからな」


 神……。磨上はこの世界の神だけど、他の異世界にも神がいるらしい。


 そして磨上はその神と戦って、勝って、その異世界を滅ぼして分解して魔力に変えているらしいのだ。


 「神」がどんな奴らかは知らないが、容易な相手ではないことは分かる。俺は何度も異世界に行っているけど、一度も神に出会った事はない。異世界を創り上げ護っている存在。場合によったら勇者や魔王を生み出して世界のバランスを取っている存在。


 そうであれば勇者である俺の上位に位置する、運命すら操る存在だという事だろう。磨上はそんな存在と戦って世界を奪っているのだという。想像を絶する話に俺はゾッとした。


「ふん。結局は戦わねば世界は維持できぬ。居場所を維持するというのは綺麗事ではないのじゃ」


 ずっしりと重いセリフに、俺は声も出せなかった。


 磨上はこの楽園世界を維持するために、神々をも敵に回して戦っているのだ。……自分の居場所を守るために。ただそれだけのために。


 俺はこれまで、異世界に召喚されても、異世界の人類を救うため、つまり他人のためにしか戦った事がなかった。そのため俺は、自分の正義に疑いを持った事がなかったのである。


 俺の正義はいつだって周りが証明してくれた。救われた人がいつだって俺を讃えてくれた。なので俺は戦う以外の事を考えずに済んだのである。


 しかし磨上は「正義」というモノを自分自身で証明しようとしている。それはまだ神になる前、勇者であり、魔王である頃に「敵」を滅ぼした後に異世界に残り続けていた頃からそうだったのだろう。そして、何度も挫折してきた。


 最終的には神となり、自分の正しさを証明するために他の神々を滅ぼしてまで自分の世界を護るまでに至ったのである。


 その苛烈さ、意志の強さ、そして深い絶望は俺の浅薄な正義感や同情を寄せ付けるようなものではなかった。俺は言葉を失って暗い空に燐光を纏って浮かぶ磨上を見上げるしかなかったのだ。


 しかし、その時神原が言った。


「居場所は、あるじゃないですか。そんな事をしなくても」


 神原は茶色いツインテールを振って首を傾げた。


「家に帰ればいつだって。お父さんお母さんや弟がいます。学校には友達がいますし、ネットにも友達がいっぱいいますよ?」


 神原は純粋に分からない、という顔をしながら磨上に言った。


「私が魔王討伐が終わっても異世界に残らないのは、私の居場所は元の世界だと思うからです。先輩だって元の世界に家族も友達もいらっしゃるんだから、そこが居場所じゃないんですか? 元の世界に帰りましょうよ」


 ……間違ってはいない。間違ってはいないよ神原。


 でもな。その、家庭の事情というやつは個人個人によって違ってだな。その、あんまり踏み込むのはデリカシーが欠けるというか、なんというか。


 磨上は神原の言葉を聞いてキョトンとしていたな。そして口を三日月のように歪めて笑った。


「なるほど、普通に考えればそうじゃろうな。しかしなサツキ。世の中はそれほど単純でもない」


「え? でも、先輩ってカズキの事好きなんですよね?」


 いきなりとんでもない爆弾を投げ付けやがったぞこいつ。しかし磨上は眉も動かさずに頷いた。


「そうかも知れんな」


「なら、帰る理由はあるじゃないですか。カズキは元の世界に帰るんだから、カズキと一緒にいたければ元の世界に帰るしかないわけですよ」


 神原の言葉に磨上は沈黙したそれで俺は気が付く。


 磨上は元の世界に帰りたくない理由は、元の世界での状況が気に入らないからではないのだ。お、俺の事はともかくとして、俺の家族とか、クラスメートとかあるいは神原とかと二度と会いたくないからこの世界を創造した訳ではないのだろう。


 たぶん、逆だ。おそらく……。


「もう良い。時間の無駄じゃ。貴様らは元の世界に帰れ。記憶を消してやる故」


 磨上の魔力が膨れ上がる。圧倒的な魔力だ。以前よりもよほど大きい。それはそうか。磨上は神々すら戦って倒したと言っていた。神様を倒したらどれくらいの経験値が入るのだろうか。


 この魔力差では、如何にこの俺でも瞬殺されてしまうだろう。全然勝てるイメージが湧かない。今の磨上の魔力だと神原なんて魔力を吹き付けられただけで消滅しかねない。


 しかし、諦めるわけにはいかないだろう。


 俺は勇者だからな。悪を倒してお姫様を取り戻すのは古来勇者の役目なのだから。


 ◇◇◇


  まともにぶつかり合ったら勝てる訳がない。相手は何せ神様だ。この世界を創造した神。ここは言うなれば磨上の体内と同じなのである。


 俺は即座に神原に魔法を掛けた。


「結界魔法!」


 呪文は適当だ。要するに、神原の周辺の空間をこの磨上の世界から切り離した。神原の周辺に俺の世界を構築したわけである。神原の魔力では磨上の魔力を正面から受けただけでダメージを負いかねないからな。


「ほう、其方にも創造魔法が使えるとはの」


 結界魔法自体はポピュラーな魔法に含まれるが、世界から空間を切り離すのは一般的ではないなろうな。要するに世界に中に俺の世界を創造しているわけだから。俺にはせいぜい神原を保護するので精一杯だけど、磨上くらいのレベルになればこの空間を広げて世界の大きさレベルに出来るという事だろう。


「勇者になれば誰にでも使えるという魔法ではないぞ、それは。やはりカズキは面白い」


 磨上がヌッと俺の方に手を伸ばした。


「どうじゃ、カズキ。其方もここに残らぬか。我と共にこの世界を護ろうぞ」


 磨上は微笑む。何となく、寂しそうにも見える表情で。


「我は、其方がいてくれれば心強いのじゃ」


 俺は内心で激しく動揺しながらも、意を決して言った。


「それは、魔王として、この世界の神として、俺の事が必要だという意味か?」


 磨上はコクリと頷いた。


「そうじゃ」


「ならばダメだ。断る。俺は勇者だ。魔王や邪神の誘惑に乗るわけにはいかない」


「こら、カズキ!」


 神原が小さい声で俺を叱る。言いたいことは分かる。ここは磨上を落ち着かせるために、嘘でもいいから磨上の話を聞く場面だ。だけど俺は無視した。


「それに俺はもう決めてるんだ!」


 磨上が唐突な俺の宣言に戸惑う。俺は勢いに任せて物凄く恥ずかしい事を叫んだ。


「俺は告白するなら元の世界でするって決めてるんだ!」


 その告白する当人の前でこんな事を言うのは本当に恥ずかしかったぜ。


 ところが、磨上の表情はスッと冷たくなった。え? なぜに?


「ふーん。ほーん」


 磨上は何だか拗ねたように言った。


「元の世界にそんな相手がおったとはの。知らなんだわ」


「どうしてそうなる!」


「あるいは神原か? そうか。そうじゃろうな。真っ先に保護しておったからの」


「わ、私は無実です!」


 神原が即座に叫ぶ。そうとも。俺は神原に告白する気なんてない。神原はまぁ、可愛いけど、胸は小さいしじゃなくて、神原よりも俺の前にはもっと強烈な美人がいるからな。


「お前以外に相手なんているかー! お前だー! 告白する相手は!」


 結局俺はここまで言ってしまった。ここまで言う気はなかったのに。


 ううう、神原なんてニヤニヤしてるじゃねぇか! なんてこと言わせやがる。


 しかし、磨上は悠然と微笑んでいた。


「ほほう。そうか。良いぞ。告白してくるがよい。ただし、我は元の世界には帰らぬ」


 磨上は俺に向けてヒョイと指を振った。それだけで巨大な魔力が襲い掛かってくる。神原が「ぎゃー!」っと叫んだ。


「そして我は、我を倒せぬ程度の男に靡く気はないぞ」


 以前に磨上にやられた時と同じ魔力攻撃だ。前回は為す術無く敗れた俺だが、一度見た技だ。ちゃんと対策も考えたさ。


 俺は剣を抜き、魔力を集中させると、降り掛かってくる魔力の固まりに剣を斬り付けた。ただし、真正面からではない。受け流すように、逃すように。


 それで魔力の球はわずかに軌道を変え、俺と神原から逸れた。


 炸裂すれば一つの星を消しかねないほどの魔力だったが、俺に受け流された魔力は特に何も起こさずに虚空に消えた。


「うむ。流石じゃな。カズキよ。それでこそ我が見込んだ男じゃ」


 知ってる。磨上は俺の事を気に入ってくれていた。だから何かと目を掛けて勉強を教えてくれたり家に遊びに来たりしたのだ。気に入らない奴とはそんなに仲良くしないだろうよ。


 それが未熟者を可愛がる師匠としての感情だったとしても、そういうふうに磨上と仲良く出来て、俺は嬉しかったのだ。それはそうだろう? こんな美少女と仲良くして嬉しくない男がいるもんか。いやいない。


 俺は磨上の事が好きになっていたのだ。とっくの昔に。単に、勇者のプライドが邪魔して認めたくなかっただけだ。だが、磨上が元の世界からいなくなって、俺は認めざるを得なくなった。磨上がいないと寂しい。嫌だ。なぜか。俺が磨上のことが好きだからだ。


 く、くそう。こんな恥ずかしい事まで言ったんだ! 何がどうしても俺は磨上を連れて帰るぞ! そんで元の世界で告白するんだ!


 しかし、磨上の魔力は圧倒的だ。受け流すだけでは攻撃に繋がらない。攻撃しなければ倒せない。あの魔王は、俺が自力で倒さない限り元の世界には帰らないだろうし、俺の告白など受けはしないだろう。


 磨上が腕を上に伸ばして手を広げた。途端に俺と神原の足元に魔法陣が広がる。こ、これはあれだ! 魔王サーベルを消滅させた煉獄の檻だ。俺は咄嗟に結界を張る。


 グワっと炎が遅い掛かって来るのを必死にレジストする。全力で魔力を結界に注いで抵抗するのだ。しかし、魔力は磨上の方が圧倒的に上だ。魔力比べになると分が悪い……。


 と、思ったのだが、磨上は舌打ちして術を解いた。フッと魔法陣が消えて、炎が消える。


「しぶとい奴じゃ」


 なぜか少しイラついたような響きがある。なんだ? なにしろ神をも倒すという磨上の魔力なのだ。こんなものではない筈なのだが……。


 いや、もしかして。


「本気を出さない、のではなく、出せないのか」


 俺が言うと磨上は今度こそ本気で嫌そうに顔を顰めた。


「つくづく勘が良いな貴様は」


「ど、どういうこと?」


 炎に巻かれて息も絶え絶えになっていた神原が戸惑ったように言う。


「磨上は今現在も、この世界を支えるために膨大な魔力を注ぎ込んでいるんだろう。そのせいで、全力で魔力を使う事が出来ないんだ」


 世界というのはけして停滞しないものだ。常に動き続けている。それを支える磨上は一瞬たりとも休むことが許されないのである。


 なるほど、どうりでこの磨上の存在空間が殺風景なわけだ。贅沢三昧をして男を侍らせている暇などないのだろう。


「侮るなよカズキ。それでもレベル30程度の魔力は使えるとも。貴様は27じゃろう。勝てはせぬ」


 実は俺のレベルはこの世界に来た時になぜか28に上がっているんだけど、それは内緒にしておこう。というか、内緒に出来るのだから確かに磨上と遥かに離れている筈のレベル差が圧縮されてしまっているな。


 それと忘れちゃいけない要素がある。


「神原、連携しろ。出来るな?」


 神原とてレベル12の勇者サツキだ。神原が剣を抜くと、磨上の顔が引き攣った。


「うぐ……。勇者はこれだから……」


 勇者には仲間の能力を引き上げるバフと、パーティの動きを一つの生き物のように連携するスキルがある。これを使うと、勇者のレベルと同程度までパーティメンバーの能力が引き上げられるのだ。そしてスキルや呪文が共有出来、意思疎通も出来て有機的な連携が可能になるのだ。磨上が言った「勇者は存在自体がチート」だというのはこのスキルを指している。


 俺と神原は連携スキルで完全に「繋がった」。神原の戦闘能力も魔力も、俺と連結されて同様に使えるようになる。神原は勇者らしい覇気のこもった視線で磨上を睨んだ。


「先輩、勇者サツキ、先輩のためにあえて先輩を倒させてもらいます」


「大きな口を叩くものじゃな、サツキよ!」


 磨上が魔力を巨大な剣に変えて上段から神原に撃ちつける。しかし神原は自分の金色の剣に魔力を込めてこれを受け流す。さすが勇者。戦い慣れているな。


 下に見ていた神原にいなされて、磨上は少しムキになったのだろう。二撃三撃と神原に攻撃を加えた。そしてそれだけ、俺への警戒が疎かになった。


 慎重な磨上の見せた僅かな隙。これを見逃すようでは魔王には勝てない。そして俺は十六回も魔王を倒してきた勇者だ。


「拘束魔法!」


 俺は最大級の行動阻害魔法を磨上に掛ける。ガクンと、磨上の動きが止まる。ググっと磨上が俺を睨み付ける。


「こざかしい真似を!」


 磨上は魔力を放出しながら艶かしくその身体をくねらせた。あっという間に拘束魔法は破られる。しかし俺は続けて拘束魔法を重ね掛けした。磨上が苛立ったように叫んだ。


「ええい! 鬱陶しいぞ貴様! 正々堂々と戦わんか!」


 磨上は全身を雷光で包むと、俺に向けて右手を伸ばした。


「コンプレスアトミック!」


 何やら物騒な呪文を磨上が唱えた瞬間、俺は叫んだ。


「今だ!」


 神原が魔力を全開にして呪文を発する。


「封印魔法!」


 磨上の足元に魔法陣が浮かび上がる。磨上が意外そうに目を丸くする。


「封印じゃと?」


 封印魔法は魔族を切り離した空間に隔離する事で、魔力の供給を絶って衰弱死させる事を狙う魔法だ。正面からの戦いでは苦戦を免れ得ない格上の相手と戦う場合に使用することが多い。


 しかし、磨上は鼻で笑った。


「其方ら程度の魔力で我が封印できるものかよ」


 磨上の魔力は絶大であり、封印するには相応の魔力が必要となる。世界を支えている分で魔力を使用しているからどうにか俺と神原の力で磨上と戦えているだけで、本来の魔力を磨上が振るえば俺たちなど瞬殺だ。


 しかし、俺が(連携スキルで俺が神原に指示を出したのだ)封印魔法を選択した理由は、封印魔法の特性にある。


「封印魔法は結界魔法の強化版だ。結界魔法では外部からの魔力を遮断するだけだが、封印魔法では内側から外側へも魔力が届かなくなる」


 俺は同時にさっき神原に掛けたのと同じ、空間を切り離すスキルも使用しているので、結界に囚われた磨上は魔力的な意味でこの世界と完全に切り離された事になる。


 この世界と磨上を切り離す。それが俺の目的だったのだ。


 次の瞬間、世界が鳴動した。それだけで磨上が俺の狙いに気が付いた。


「カズキ! 貴様!」


 磨上が怒りの表情をあらわにし、結界を破ろうとする。俺と神原は魔力を振り絞って抵抗した。


「諦めろ。この世界はお前の魔力がなければ一瞬だって維持出来ない。磨上が結界に切り離された時点で魔力供給は途切れ、世界の崩壊は始まっている」


 全てを神の、磨上の魔力に依存した歪な世界の哀れな末路だ。


「止めよカズキ! 貴様は勇者であろう? その貴様が世界を消滅させようというのか! 無辜の民をまとめて消し去ろうというのか!」


 それを言われるとちと辛い。この世界で平和に生きている、何も知らない人々を、俺は世界と共に消し去ろうとしている。大罪だ。何も知らないで俺がその所業を見たら、俺は俺の事を魔王め! となじるだろう。


 しかし俺は開き直って叫んだ。


「愛する女を取り戻すためだ! 世界の一つや二つはやむを得ない!」


 その瞬間の磨上の顔は見ものだったな。おそらく二度と見られまい。


「こ、こ、こ、この痴れ者が!」


 磨上の叫びと同時くらいに俺たちの足元の空間が崩壊した。世界が壊れると虚無が現れる。光を通さぬ真っ暗な闇が、世界を呑み込もうとしていた。空間が弱い光を放って次々と虚無に飲み込まれて行く。磨上がああ、と嘆いた。


「また、我の居場所がなくなってしまう……」


 俺は、磨上の手を握って言った。


「居場所はある! いつだってある! 俺が、お前の居場所を創ってやるさ!」


 神原が呆れ果てたような顔で見ているが、やめろ。勇者が最終決戦でカッコいいセリフ言うのは仕様だ。そんな冷めた目で見るんじゃ無い。


 磨上はなんとも言いようが無い、という顔で俺の事を睨んでいたが、やがて少し意地の悪そうな表情になって言った。


「ところでカズキよ。どうやってここから脱出するのじゃ? 算段は考えておるのだろうな?」


 は? 脱出?


「虚無に呑み込まれたら、レベルに関係無く消滅じゃぞ? なにせアレは物事の根源。呑み込まれれば還元されて我らは無に返る。それ、もうそこまで迫っておる」


 ……ぎえー! マジか! とはいえ、脱出と言ってもどうすれば……。


 俺は磨上との戦いでかなりの魔力を消費してしまっていた。神原の魔力も同様に使ってしまっている。転移魔法を使うにはもうMPが足りない。そして、世界はドンドン崩壊してしまっている。逃げ場がない。や、ヤバい!


「まさか考えていなかったのではあるまいな?」


 磨上の優しい微笑みに俺が「えへへ」っと笑うしか無かった。神原が天を見上げて慨嘆する。


「カズキを信じた私が馬鹿だった」


 ま、まて、えっと、どうにか抜け出す方法は……。無理! だってもうそこまで虚無が満ちてきているし! 俺は磨上にしがみ付いて思わず叫んだ。


「た、助けてくれー!」


「やれやれ、カズキはやはり締まらんな。まだまだ甘過ぎる」


 磨上は呆れたように笑って、そして俺の腰を抱いて引き寄せた。


「ま、迎えに来てくれて嬉しかったぞ。それと、言った事の責任は取ってもらうからの?」


 そして彼女は俺の顎をくいっと摘まんで、そのまま俺の唇に自分の唇を思い切り押し付けた。き、き、キス!??


「お手並み拝見じゃの。ダーリン?」


 次の瞬間、俺たちの身体は光に包まれ、浮遊感と共に世界を転移した。


  ◇◇◇


 ……元の世界に戻った俺たちは、何もかもが元通りになっていた。


 磨上の痕跡も元通りになっていて、クラスの座席はちゃんと俺の隣だったさ。俺の家に磨上を連れて行けば母親も妹も大喜び、いつも通りに夕食も一緒に食べた。ちなみに日付は巻き戻らず、磨上がいなかった二日間の記憶が改ざんされた感じだったな。そのくらいの記憶操作は磨上にはお手の物なんだろう。何しろ磨上は神様なんだから。


「あの世界を維持しないで良くなってしまったからの。魔力が有り余って困る」


 らしい。俺が封印魔法であの世界と磨上の魔力的な繋がりを断った時点で、磨上の魔力は本来の物に戻っていたのだから、その気があればこいつは俺と神原を一瞬で消滅させ、そこから魔力を振るって世界の崩壊を止める事も出来た、と思う。


 しかし磨上はそれをやらなかった。結局は俺たちと元の世界に戻ることを選択してくれたという事なんじゃないかなぁ、と思う。思うことにする。


 そして、俺は自分の発言の責任を取ることにした。磨上が異世界に自ら転移して、元の世界から消えようと決心した理由が何かある筈だ。俺は磨上に直接問いただしたのだが、この期に及んで磨上は言葉を濁した。俺は妹に「磨上は何か悩んでいるらしい」と話を持ち掛け、それを聞きつけた母親も磨上を心配してしつこく聞き出そうとしてくれた。


 根負けした磨上がようやく口を割った事には。


「親が再び海外に転勤になり、私も付いて行く事になった。大学も海外の大学を親に勧められている」


 という話だった。


 ……そういう事情であれば、俺にも考えがあるぜ!


 ということで、俺は磨上の家に押し掛け、磨上の両親が帰宅するまで居座り、驚き訝る磨上のご両親に「洋子さんを海外に連れて行かないでください!」と叫んで土下座したのだった。


 ……いや、言うな。みっともないし、馬鹿な事なのは分かっている。しかし、他に方法が思いつかなかったのだから仕方がないだろう?


 あの磨上が、魔力でちょいちょいと両親の記憶や事象を改竄せず、悩みに悩んだ挙げ句に異世界への家出を選んだ理由を察すれば、俺だって魔力や勇者の力に頼るわけにはいかなかったのだ。後は一般的高校生に出来る事で頑張るしかないだろうよ。


 まぁ、話は簡単じゃ無かったよ。ご両親はそれはもう不審がって、俺の話を聞いてはくれたが、俺の事なんか知らないんだから、俺の頼みを直ぐには承知してくれなかった。俺は粘りに粘って、終いには家に電話して母親にも来て貰った。帰宅が早かったから父親まで来てくれたな。


 話は一気に両家の家族会議になり、俺が何度も促して(こいつは両親にだけはどうも口が重いのだ)「自分は日本に残りたい」と言わせることに成功したこともあって、磨上家と浜路家の話し合いの元、磨上 洋子は日本に残ってここで一人暮らしをするものの、食事などの世話は浜路家が支援するという話になったのだった。


 磨上の両親は磨上のことをちゃんと愛していて、親の言うなりにあちこちに引っ越さなければならない磨上の事を心から心配していたから、彼女が日本に残りたいという意思表示をしたことに喜んでいたな。磨上はあれで色々捻くれているから両親とだけは上手くコミュニケーションを取れていないみたいだったけど、これをきっかけに関係が上手く回れば良い。


 ちなみに、娘の彼氏たる俺に対する磨上のご両親の態度は、当たり前だがちょっと怖かったな。特にお父様の方にはかなり怖い目で睨まれた。それでもそれから何度か磨上家で面会してかなり打ち解け、ご両親の出国の時にはお母様から「洋子をお願いね、和樹君」と頼まれるくらいにはなったけどな。


 という事で、俺と磨上は両家公認の仲という事になった。どうしてこうなった? 


 そんな関係になったという事は何故か学校中に広まり(俺は話してないから、磨上がどこかで漏らしたのだろう)ちょっとした騒ぎになった。婚約したとか言う噂になって学校の先生にまで呼び出される事態になったな。俺の親が来てちゃんと説明してくれたみたいだけど。


 神原は磨上の事を非常に心配して頻繁に会いに来てくれて、磨上も神原を随分可愛がっていたな。「愛い奴じゃ。どれ、ちょっと育つように揉んでやろう」「ちょ! 止めて! 胸を揉まないで! みんな見てるから! うにゃぁああああ!」とかちょっと目のやり場に困るようなじゃれ合いは止めて欲しいけどな。異世界仲間の神原といると、磨上も色々本性が出せてリラックス出来るようだった。


 俺たちは出来るだけ魔力の使用を抑えているせいか、あれから異世界から召喚を受ける事は無くなっていた。……どうだかな。磨上が神の力を使って異世界召喚をブロックしていてもおかしくないけど。この世界の神様は磨上の事をどう思ってるんだろうか。


 色々心配な事やこれからどうなるか分からない事もあるけど、人生なんてそんなもんだろう。異世界で勇者をやったって、魔王を倒せば全て終わり、というような単純な話では無かったし、魔王が世界を滅ぼした物語にも続きがあった。神様でさえ自分の行く末が分からないんだからな。俺たちは分からないなりに頑張って進むしかないんだよ。


 帰り道、俺と磨上は手を繋いで坂道を下っていた。真っ直ぐに家に帰り、俺の家で夕食を摂るのだ。もうなんだか当たり前のような感じがする。平凡なこの俺が、こんなクラス一の美少女にして、異世界の魔王、いや神様と彼氏彼女の関係になるなんてな。異世界に行くよりも信じられないぜ。俺がそんな事を思いながらちょっとニヤニヤしていると、磨上が不意に言った。


「そういえば、カズキよ」


「あん?」


「我は待っておるのだがの」


 待つ? 何をだ? 何の事か分からず首を傾げる俺に、磨上は八重歯を見せてニーっと笑いながら続ける。


「告白をじゃ。この世界に戻ったら、盛大な告白をしてくるんじゃろう? 何時になったらしてくれるのじゃ?」


 は? 俺は硬直した。いやいや、ちょっと待ってくれ。告白ならもうしちゃわなかったか? 愛する女のためとか言ってしまったじゃん。そんでもうキスもしたよな。今更……。


「勇者ともあろうものが約束を軽視するものではないぞ? 勇者なのだから、さぞかし盛大で華のある、見事で詩的で感動的な告白をしてくれるんじゃろうのう。さぁ、言うてみよ」


 ハードルを上げるなこの魔王め! 俺に勇者の決め台詞以上の事を求めるんじゃありません! ヒロインへ詩的な告白をするなんて勇者の仕事じゃないだろうよ!


「何を言っておる。姫君を救い出した勇者は姫君にプロポーズするものじゃろうが。さぁ、勇者らしく求婚して見せよ!」


 いつの間にか求婚する事になってるし。俺を見やる磨上の美貌は夕焼け空に照らされて、ふわりと笑っていた。……確かに、今の磨上は魔王でも神でもなく、ヒロイン、姫君と言うに相応しいな。俺は苦笑した。勇者の仕事ならやむを得ない。しかし、俺の文才に期待するなよ? 変なセリフを言ったら磨上は何度でもダメ出ししてきそうだけどな。


 仕方ないな。俺は学校の制服姿のまま、磨上の右手を取り、俺のヒロインの前にゆっくりと跪いたのだった。



  終わり

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「私をそんな二つ名で呼ばないで下さい! じゃじゃ馬姫の天下取り 」(SQEXノベル)イラストは碧風羽様。「貧乏騎士に嫁入りしたはずが!? 」(PASH!ブックス)イラストはののまろ様です。好評発売中です! 買ってねー(o゜▽゜)

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[一言] 世界を巻込んだ痴話喧嘩、めでたしめでたしですね!!お幸せに!! 神原ちゃんが本当にいい子だ…!頑張った…!!
[良い点] おもしろかった。 [気になる点] 家出のスケールがデカ過ぎる。 海外の大学、行きたくないなら行きたくないて言えば良いだけでは? [一言] 世界を滅ぼしてでも手に入れる!!みたいな展開、好き…
[一言] とても面白い!一気読みしてしまった! 最初は他の作品と一味違う感じがして少し驚いたが、レベルや世界の設定がありふれ過ぎたものではなく、人物描写が後半になればなるほど味が出る作品だと思う。 …
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