表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/58

幕間「温かかった」


 嬉しかった。

 ご主人さまが私を連れて、変な村を出てくれたのが。


 本当は、ご主人さまが私と離れようって思ってたのを知ってた。

 嫌だった。寂しかった。苦しかった。怖かった。気持ち悪かった。

 でも……ご主人さまは私を連れて出てくれた。


 それが嬉しい。


 村を出て、町に行くのは遠いからってご主人さまが火を起こしてくれたから、近くに座る。

 ご主人さまがかっこいい声で寝て良いって言ったから、耳でご主人さまに触る。


 外だけど温かくて、心地よくて、頭をこすりつけてしまっていた。

 ご主人さま、迷惑、かな。


「……ん」

「メアー、近づきすぎだ」

「もっと、居たい。ダメ?」


 いつもみたいにご主人さまの肩に頭を乗せると、そう言われる。

 でも、もっとご主人さまと一緒に居たいって思って見上げると、ご主人さまはすごく困ったみたいに息を吐いて頭に手を置かれる。


 そのままご主人さまが火をいじり始めた。


 ん、許してくれた。


 村に居た人たちと違う、私のやりたいことを優先してくれる、優しいご主人さま。


 ご主人さまを動かなくしようとしてた人はご主人さまに"ころすな"って言われたからなにもしなかったけど、ご主人さまがそれでいいなら、私はどうでもいい。


 でも、このままだとご主人さまが眠れないって思って、ご主人さまの服を引っ張る。


「ご主人、さま」

「なんだ」

「寝ない、の?」

「……火の番と警戒がある」

「土で、覆う、よ?」

「そうしたいのか?」

「ご主人さまが、やすみたい、なら」

「……火があるから、煙突みたいに出来るか?」

「できる、よ」

「なら、頼む」

「ん……『覆って』」


 胸の上で手を握ってから、片手で地面に触って魔力を溶かしこんでいく。


 グネグネと動かして、ご主人さまの命令通り、上をふさがないように、固める、壁をイメージするけど、えんとつって言うのが難しかった。

 なかなか出来なくて、困ってると、上を見てたご主人さまが私を見てくれる。


「……難しいか?」

「ん……」

「そうか。出来るだけでいい」

「分かった」


 出来るだけ……だから、頑張ってご主人さまのためにえんとつみたいな形を作ってみる。

 息が吸えるように穴をあけて、けむりが出ていくように火の上を伸ばす。


 ……ご主人さまと一緒に住んでる家を作ればいいのかな。

 あの家も、えんとつがあって、囲まれてたから、あれを作ればいいのかも。


 なんとか命令通りに固めて、ご主人さまが確認するみたいに壁を見てくれた。


「……無理を言ったな」

「うん」


 時間はかかっちゃったけど、ご主人さまはそういって褒めてくれた。

 うれしくて、温かくて、もう一度座ってご主人さまの膝の上に潜り込む。


 嫌そうだったけど、すぐに頭に手を置いてくれた。

 ご主人さまも安心したみたいで、すぐに穏やかな吐息が降ってきた。



 ああ、やっぱり、私は……。



 少しだけ、前より優しくなったご主人さまに寄り添って、目を閉じた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ