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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

DREADNOUGHT WEAPON

作者: 宮本シグレ

DREADNOUGHT WEAPON


******


金属と樹脂の小部屋。

風を切る音は聞こえない。

コックピットには一切の揺れもなかった。

すぐに軽快で短い電子の通知音が鳴る。

『目標対象確認』

目標地点まで、あと10秒。


『始まる』


灰と煤によって摩耗した純白は灰色となっている。

【無尽機関粒子】を攻撃エネルギーへと変換して放出する兵器を幾つも備え、

敵機体を遠隔で無力化する【マルチアンカーシステム】で多くの戦場を渡り歩いた兵器。


機体の名は【ノヴァ】

搭乗者は【ジーク】


そして決戦の地【エリアNDZ】へ。


******


そこは、嵐の最中だった。

倒壊したビルが海に沈没し、海面から露出した屋上。

嵐は雨へと変わり、次は吹雪。


『どれくらい、経っただろうか、あの夜以来だ』


回線で聴こえてくる宿敵の声。

この天候は、その声の主が原因。


無尽機関粒子技術によって、強大なプラズマを発生させる銀の機体が、白い航空機ブーストユニットに覆われて、嵐を裂くように横切る。

嵐の中の流星、竜を思わせる程の圧倒的な巨体。

一世紀前に封印されていた設計データを、現代技術によって復元、改善した【アヴラム】


『約束通り、【新しい時】、その準備は、出来ているな?』


その言葉に、【彼女】は、応えなかった。



******


アヴラムの航空機ユニットから巨大なミサイルが粒子を放ち、追尾。

一つの球が弾け、八つへと分裂し、逃げ場を狭める。


視界は吹雪で遮られレーダーの反応も最悪だが。


『……』


ノヴァのマルチアンカーシステムが展開され、小さな流星群は海へと沈み、爆発。


そして接近。

お互いの機体が、燃え上がった。

無尽機関粒子技術【超自然発火】、アヴラムがデフォルトで運用していたものを、ノヴァはこの決戦のために備えていた。


だが、炎を纏いながらも戦闘を維持できる力は、ノヴァよりも数倍の巨体であるアヴラムが上だった。

それはジークも理解している。だからこそ、狙うのは【超自然発火】を制御しているであろう航空機ユニット。

粒子の障壁を貫通する実大剣を突き刺す。


『よくやるねえ、ジークくうん』


アヴラムを影で支援している存在の声は、余裕の態度だった。


『これなら、どうかな』


航空機ユニット、ブースターをパージし、あらわになる究極形態。

銀に統一されたアヴラムはパージされたユニットから無尽機関粒子カノンを両アームに携え、ノヴァを狙いながら、


『マルチアンカーシステム 起動』


アヴラムはそう言い放った。


『!?』


海面、地上から浮き上がる機体の残骸が集合。

計5つの機体は、操り人形のように、アヴラムに支配されていた


『ジークくうんが運用する技術、この僕が興味を抱かないハズがないだろう?』


稼働している機体を掌握、無力化し、制御するシステム。

アヴラム達は、既に大破した残骸を、さらに無尽機関粒子技術の【物質のプラズマ化による再構築】によって、自身の駒【セルCP】へと変えたのだ。


お互いが、お互いの戦法を吸収し、応用する。


『君独りで、戦えるかな?』


アヴラムの【超自然発火】の制御が無くなり、ジークとノヴァが運用する無尽機関粒子技術が、同様の【超自然発火】を止め、【天候制御】へと切り替える。


嵐は打ち消され、雲が消し飛び、天の光が広がる視界は開けた。


独りで戦えるか、どうか。

いや、彼女は独りでない。


ならば、戦えるかどうかの答えは、


可能だ。


******



追尾を続けるミサイルの雨をかいくぐり、時には一発の弾で相殺。


マルチアンカーシステムの展開範囲が拡大すれば、一瞬でも、アヴラムのセルCPを無力化し破壊。


すぐに再生されるが、そのインターバルで、可能な限り、アヴラムをロックオン。


発射。そしてロックオンを解除。

『ぎゃははははっははははははっは』

囲まれた、だが、近すぎる。

彼女の範囲内にいた二機は、腕部に備わった実大剣で串刺しになり、墜落。

隙を与えないミサイル攻撃を、ブースターの出力を切り替え離脱し回避する。


『練度が足りてねえな、その複雑な処理も出来ねえなら、ゲームハード以下だぜ?』


ジークの愛機【ノヴァ】は、どこまでも彼女の思考を繋がり、補助し続ける。


『っ……相変わらず、ウザい機体だ』


出力を上げ急接近し、実大剣で、削り取る。


巨大兵器をぶら下げ、それを拳銃のように取りまわすアヴラムの強靭な四肢のつなぎ目を、

見極めながら、弱点をマーク。


瞬間、銀色の雪のような粒子が、吹きあがった。


『読める』


ブースターの最大出力を瞬間的に発し距離を離すのだ。


すぐノヴァの目の前で、無差別の粒子爆発。

燃え上がる橙色の雪が、地から天へと上昇しながら、周囲を破壊する様は、この世の終わりを体現するかのような威力を示していた。




『ムキになるな、【ユーザー】。あの機体はお前の性格、勝手を把握している』


爆発、爆発、炎上、爆煙。

激しい爆発音と銃声ミサイル銃声カノン


『そして、私と彼女の【静寂】にこれ以上割って入るならば、分かっているな』


サブガトリング砲の連射が、最後のセルCPを破壊。

セルCPの再起動は無い、その制御に回すエネルギーを、主兵装に回すのか。


再び、無数のミサイルが降り注ぎ始め、直撃コースを圧倒的な機動力でよけていく。

予測修正予測修正予測修正。ノヴァの逃げ道を塞ぐように、追い込む。

直撃、大破。違う、ジークがマルチアンカーシステムで制御したセルCPの残骸。


アヴラムの背後に、ノヴァが回り込んだ。

大破の爆風を使い、そしてレーダーが認識出来ない速度で、背部の弱点を狙い撃つ。


!!!!!!!


纏う粒子障壁バリアを超え、弱点に何発もの圧縮エネルギーが当たる。

同時に、ノヴァの機体を抉る、槍となった残骸セルCP。

防御機構のエネルギーさえも、攻撃に回す程の必殺の一手であったがゆえに、マルチアンカーシステムが機能していなかった。

お互いの一撃は、どちらも致命傷。


けれども、それは機体だけのことだ。

パイロットが生きていれば…………。



******


勝敗を分けたのは、パイロットの生存。


アヴラムを操縦したパイロットは居ない、アヴラムの機体そのものが、思考をし、戦っていた。


《ユーザー》もまた、アヴラムに搭乗していたものではなく外部の者。


『ジーク、お前なら……、いいや、その必要はないな』


ノイズが増えていく声。


【今なら理解わかるよ、アヴラム】


銀色の粒子が溢れ始めた。

フレームが剥がれ落ち、剥き出しになった鉄の躯。


ノヴァは破損部の再結合を進めながら、残った腕でカノンを構え続けながら、後退。


【生きることは何かと戦い続けること、どんな時代でも、どんな場所でも】


【そして、生きることを続けるなかで、分かり合えることもあること】


『私には、意味がないことだ』


【私が貴方の意志を継ぐ】


【貴方が誰にもいう事が出来なかった、本当の意志を】


大きな大きな爆発が、決戦の地に深い傷を遺した。

一度だけの爆発が静まり、銀色の粒子が空へと昇る。


高く、より高く、その美しくも残酷な光の粒が、太陽が輝く天へと消えていくのを、


彼女はしっかりと見届け、


『これで終わりじゃないさ』


『勿論』


ノヴァの言葉に頷き、次の戦いに備え、帰還するのだった。



エイプリルフールなので、悪ふざけで気楽に書きました。


完全に人気ロボットゲームを意識していますが、まあもう何番煎じだと思うので、楽しんで読んでくだされば幸いです。

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