DLC2 談笑するオタクたち
「ところで空殿は、自分のスレを覗いたことがあるでござるか?」
「……はあ? 何言ってんだ」
オタキングの意味のわからない質問に、俺はそう返す。
ここはオタキングの所属する愛機場最前線の秘密基地だ。何回も出入りするうちにフリーパスを貰えた俺は暇な時はここに入り浸っている。
VR設備も整ってるし親の目もないし飲み物もタダで飲めるしで最高の環境だ。
「『青き疾風スレ』のことでござるよ。まさか自分のスレがあることを知らなかったでござるか?」
「それくらいは流石に知ってるさ。でもそんなの自分で見るもんじゃないだろ?」
「拙者は自分のことが言われてたらチェックするでござるよ」
「誰もがお前みたいに鉄の心臓じゃないんだよ!」
そも俺はヒーロー活動という、自分で言うのもなんだが『ちょっとイタめの活動』をしている。
当然アンチも多いだろうし、もし自分を悪く言ってる書き込みがあったら立ち直れないだろう。だから俺は自分のことは検索しないし、SNSでも『青き疾風』をミュートワードにしてるんだ。
「おや、では自分がネットでどのように言われてるか知らないでござるね?」
「まあな。ヒーローっつうのは名誉のためにやるものじゃないしな。決してアンチコメントを見たくないからじゃないぞ」
「ふふ、そういうことにしておくでござる。しかし……今は昔と状況が変わってるでござる。少しは自分がどう見られてるか知っておいた方が良いと思うでござるよ」
「んまあ、一理あるかもな」
今から三週間ほど前にあった国内最大級のRe-sports大会、ROJ杯。その決勝で俺は自分の素顔を明かした。つまり今までは切り離せていた『青井空』と『青き疾風』が世間的に合体してしまったのだ。
「確かに校内では奇異の目で見られてるな。最初みたいにもみくちゃにされる事は減ったけど」
「ほほぉ。しかし正体がバレたからモテたりしてるんじゃないでござるか? 大会での格好良い姿も見られてるわけでござるからな」
「そういやあれから五人の女子に告白されたな。まあミーハーなだけで本気じゃないだろうから全部断ったけど」
「このラノベ主人公がッッ!!」
「おわっ! なんだ急に!?」
「と、取り乱したでござる。申し訳ない」
「そ、そうか」
なんだったんだ今のは、びっくりした。
まあこいつの言動が変なのは今に始まったことじゃないか。
「しかも何か怜奈さんの様子も変なんだよな。そっけないっていうか。この前も『最近はおモテになって良かったですね』って冷たい顔で言われて。いったい何が言いたいのやら」
「このッ! 鈍感系ラノベ主人公がッッッッ!!!!」
「うわあ!? 落ち着けオタキン! ほら水飲め水!」
「はあ……はあ……すまないでござる。しかしこう、いざ目の前にするとツッコミを入れてしまうもんでござるな」
「だから何の話だよ」
「……まあいいでござる。拙者が変に茶々を入れて二人の仲が拗れるのも嫌なので傍観に回らせていただく。そうか……こうして鈍感型主人公は生まれるんでござるね……」
相変わらず何言ってるのか分からねえ。
まあいい。話を戻そう。
「で? 俺のスレがなんだっけ?」
「そうそう、それでござった。空殿は自分がどのように思われてるかちゃんと知っておいてほうがいいと思うのでござるよ」
「俺がどう思われてるか、ねえ。正直気乗りはしないけど、この先Re-sportsで顔を晒す機会は増えるんだし知っておいた方がいいのかもな」
でもボロクソに言われてるんだろうなあ。
はあ、憂鬱だ。パッと見てすぐにやめよう。
「心構えは出来たようでござるね。ではとあるスレを用意してるのでそれを一緒に見るでござる」
オタキングがスイッチを押すと、部屋が暗くなりプロジェクターが起動し壁に映像が映し出される。
この感じはワクワクするけど、映されるのが俺の評判なのがつらい。
「いったい何を見せられるんだ俺は」
「空殿の正体が明らかになった時、つまり拙者と試合を行った時の空殿の専スレを見ていただくでござる。ここのスレの熱狂……こほん、盛り上がりを見て貰えれば空殿も自分がどう思われているか分かるでござるよ」
「そうかい、まあ早いことやってくれ」
「了解仕った!」
こうして何の罰ゲームか、俺はオタキングと一緒に俺の専スレを見ることになるのだった。




