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EP10 果てぬ野望《オタクドリーム》

「で? そのオタクロスさんが俺の控え室に何の用だ。まさか挨拶のためだけに来たってわけじゃないよな?」


「そのまさかでござるよ。拙者は普通に挨拶しに来ただけでござる。しいてもう一つ目的を挙げるならば……それでござろうか」


 そう言ってオタキングは俺のことを指差す。いや、正確には俺ではなくその頭、シャドウブルーのマスクを指差している。


「ふむ、映像を見てもしやと思ってはいましたが、それは本物の『シャドウファイブなりきりセット』ですな。そんなお宝を持っているとはお主のオタク度、練り上げられているでござるな。至高の領域に近い……!」

「へ、気づくとはお前も中々やるじゃないか。たいしたもんだ」

「あの、いい加減私を置いて行くのはやめてもらっていいですか?」


 怜奈さんに嗜められ、俺たちはオタク特有のふざけ合いをやめる。やってる本人はめちゃくちゃ楽しいけど、傍から見たら気持ち悪いんだよなこういうのって。反省。


「さて……そろそろお暇させて頂くでござる。試合、楽しみにしてるでござるよ」

「なんだ、もう帰っちまうのか」

「うむ。これ以上なれ合えば余計な情も生まれるでござる。絶対に勝たねばいけぬ試合ゆえ容赦願いたいでござる」

「へえ、そんなにこの大会にかけてるのか」


 俺の何気ない言葉に、オタキングは眼鏡を光らせ真面目なトーンで答える。


「当然。我々『愛機場最前線アキバフロントライン』はネオ秋葉原の活性化を目標とする組織。ならば今もっともホットなRe-sportsにおいても活躍しなければなりませぬ。拙者が有名になればなるほど、ネオ秋葉原の名は世界に広がるのですからな」


 そう語るオタキングの姿は、とても堂々としていて格好良かった。これが組織を引っ張ってる者のオーラってやつか。俺とは背負ってるものが違う。

 だけど。いやだからこそ、こいつには負けたくないと強く思った。

 他のことでは負けても、ゲームだけでは負けたくない。


「お主はいい人でござったが、この勝負は貰うでござる」

「上等だよ、やれるもんならやってみやがれ」


 視線をバチバチとぶつけ合った後、オタキングは控え室を出ていく。


「すごい人でしたね空さん」

「ああ、キャラも強烈だったけど、あいつ絶対に強いぞ」


 この大会に優勝することが『愛機場最前線アキバフロントライン』の得になることならば、当然オタキングはその組織のバックアップを受けている。装備の貸し借りや情報収集、経験値稼ぎの手伝いなど助けられることはいくらでもある。


 つまりこれは俺VSオタキングというよりも、俺VS愛機場最前線(アキバフロントライン)という方が正しい。


(忍者状態を封印したままで勝てるか……?)


 流石に能力を制御した状態だと分が悪く感じる。かといって本当の姿を晒すわけにもいかないからな……。


「空さん」


 そんな俺の不安を察したのか、怜奈さんは俺の正面に立ち名前を呼ぶと、まるで俺を励ますように肩にポンと手を置いてくる。


「確かに向こうはチームの力があるかもしれませんが、空さんにも私がついているじゃないですか。大丈夫です、私の知ってる『青き疾風』はこんな所で負ける人じゃありませんよ」

「……そうだな。その通りだよ」


 まさか怜奈さんに励まされる日が来るなんてな。

 しかしちょっと励まされるだけで不安がなくなるとは、もしかしたら俺も案外ちょろいのかもしれない。


 ぐぬぬ、俺はそんなキャラじゃないと思ってたんだけどな。


「見てな怜奈さん。青き疾風の力を見せてやるよ」

「はい。楽しみにしてますね」


 次の試合の勝利を彼女に約束し、俺は準決勝戦に臨むのだった


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