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EP3 竜峡谷《ドラゴンキャニオン》

 第八エリア、トト竜峡谷。

 ニューメイクシティ北部にあるそのエリアは、その名の通り竜が住む巨大な峡谷だ。


 基本的には谷の底にある一本道を進めば最奥までたどり着くマップなのだが、崖の隙間には多数の竜が潜んでおり、一度見つかるとあっという間に多数の竜に囲まれてしまう。


 その為このエリアは、崖に空いている無数の洞穴の中を通りなるべく竜に見つからないように進まなければならない。本来であれば……。


「うおおおっっ! フルパワースラッシュ!」


 スキルが発動し小太刀がオレンジ色の光を纏う。

 地面を蹴り、相手に接近した俺は小太刀を強く握り、目標の首元めがけ思い切り振り下ろす!


『ゴギャアアアアッッ!!』


 けたたましい断末魔を上げながら、青輝石の竜(サファイアドラゴン)は青く光る美しい鱗を散らしながら絶命する。倒したドラゴンの体はすぐに消え、その場にドロップアイテムだけが残る。うひょひょ、後で確認するのが楽しみだぜ。


「次ィ!」


 手早くドロップアイテムを回収した俺は再び小太刀を構えると、大口を開け今にも火を吹きそうな竜のもとに駆け寄り、刃を振る。


「これで十……四体目か? クソッ! キリがねえ!」


 現在俺たちは竜の峡谷に足を踏み入れて三十分ほど歩いた地点にいる。ボスエリアまで丁度半分を切ったところであり、ここら辺から竜の数も増え出してくる。


 そんな危険地帯で俺と銀城さんは竜の群れと正面から斬り合っていた。


「ちょっと銀城さん!? なんで僕たちは竜と馬鹿正直に真正面から斬り合ってるんですかねえ!?」

「それは……ふっ! ここで一定数竜を倒せば……はっ! 秘境に行けるからです……そこっ!」


 銀城さんは真白い装束をはためかせ、細剣レイピアを振り回しながら質問に答える。


 どうやら彼女も俺と同じく速度重視の構築ビルドみたいだな。敵の攻撃をステップで華麗に躱し、ドラゴンの首や胸などの弱点を的確に突いている。


「ていうか普通に上手いな……あのryoって奴よりずっと上手いだろ」


 俺の見立てだとあいつはニューメイクタウンに来れるか来れないか程度の実力しかない。とてもじゃないがここ竜渓谷を突破できる器ではない。

 まさか売り込んでいる相手が自分より強いだなんて、ryoは夢にも思わないだろう。哀れなやつよ……。


「ところで銀城さんよ、いつまでこの強行軍を続ければいいんだ?」

「そろそろのはずですが……あっ! あそこです!」


 彼女はそう言って近くの岸壁を指差す。そこには一匹の竜がおり、のそのそと岸壁にある洞穴に入っていくところだった。

 モンスターが洞穴から出てくることはあっても、プレイヤーを目の前にして逃げ帰ることは珍しい。確かにあれは怪しいな。


「あの竜について行きます!」

「おう!」


 彼女の言葉に従い洞穴の中に入って行く。洞窟は短く、二分ほど歩くと出口へと辿り着いてしまう。

 期待しながら外に出てみると、そこは大きく開けた別の峡谷だった。今までいた峡谷は緑など一切ない岸壁だったが、ここには至る所から木がポツリポツリとだが生えている。土に含まれる栄養が豊富なのだろうか。


『秘境・竜の喉仏に到達しました』


「うお!」


 突然メッセージウィンドウが開き、驚く。

 秘境に来たのなんて久しぶりだからウィンドウが出ることをすっかり忘れてたぜ。


「うお、結構経験値貰えてんじゃん! これがあるから秘境はうまいんだよな」


 俺のレベルはとっくに100(カンスト)だが、このゲームはレベル100になってからが本番だ。なぜなら新しい職業ジョブを取るのもスキルを習得するにも経験値が大量に必要になるからだ。なので廃人たちはレベルがカンストした後も、日夜経験値稼ぎに勤しみキャラを鍛え上げているのだ。


 だから自分しか知らない経験値集めの場『狩り場』は非っ常に重要だ。なんせモンスターが再出現リポップするには時間がかかるからな。良い狩り場の情報はすぐに広まり人が殺到してしまう。


「ちなみにこの秘境に湧く竜の中には高経験値のものもいます。存分に狩って頂いて大丈夫ですよ」

「うひょー! 待ってました! 根こそぎ狩り尽くしてやるぜ!」


 今日を久々の経験値稼ぎの日にした俺は意気揚々とドラゴン狩りに精を出すのだった。


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