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EP1 試合翌日《アフター・バトル》

 銀城さんとRe-sportsの大会を観に行った次の日。


 いつものように朝のヒーロー活動を終えた俺は、リビングに降りて朝飯を食べようとしていた。すると、


「いやほんっと信じられない! こいつ誰なの!?」


 俺の妹君が不機嫌そうに吠える。こいつはやれ好きだった俳優が結婚しただの引退しただのと下らない理由でよく騒ぎ立てる。朝くらい静かに出来んもんかね。


「どうしたんだ妹よ。静かに食えないのか?」

「聞いてよお兄ちゃん! 私の推しが昨日酷い目にあったの! せっかく優勝できたのに台無しよ!」


 そう言って妹は一つのニュース記事を空中に映し出し、俺に見せてくる。

 その記事に掲載されていた写真を見た俺は、口に含んでいた牛乳を全て吹き出してしまう。


「ブフーーーーーッ!! なんだこりゃあ!?」


 そこに写ってたのは紛れもなくRe-sportsをしている俺の姿だった。忍者のマスクをしてるが間違いない。まさかこんな写真が撮られていたなんて気が付かなかった。


「『謎の忍者がプロ選手を瞬殺』……だって!? なんだこの記事は!」


 ネットニュースを見るのは好きだが載りたいわけじゃない!

 ど、どどどどどうすりゃいいんだ!?


「お兄ちゃん、汗すごいけど大丈夫?」

「あ、ああ。だだだ大丈夫だ妹よ」


 震える手で自分でもニュースサイトを開いてみる。すると俺の試合のことを書いてる記事が何個も出てくる。悪夢だ。


「お兄ちゃん本当に大丈夫なの? 目泳いでるし顔青いよ」

「ききき気のせいだろ?」


 不審そうに俺をみる妹。

 こいつは基本バカだが変なところで鋭い時がある。ボロを出さないようにしなければ……。


 妹はしばし俺を怪しげに見て……何か気づいたようにポンと手を叩く。


「あ、分かった! お兄ちゃん……ryoさんの写真見て、ファンになったんでしょ!」

「いやそれだけは違……いや。そ、その通りだよ……」


 俺はあえて誤解を解かなかった。忍者の正体と感づかれるよりはマシ、そう判断し涙を飲んでファンだということにする。


 うう、なんで俺があんな奴のファンにならねばならんのだ……。


「この覆面の人、誰なんだろうね。ryoさん強いはずなのに手も足も出なかったみたい」

「ま、まあリアオンはRe-sportsをやらずにひたすらゲームをやる『VR派』も多いからな」


 ちなみにRe-sportsばかりやってるのはRe-sportsの頭二文字を取って『リス派』と呼ばれる。ryoとかいう奴もこのタイプだったのだろう。俺の苦手なタイプだ。


「お兄ちゃんもリスポやんないでVRばっかやってるよね。この忍者のこと知らないの?」

「おいおい確かに俺は自他ともに認める生粋の廃プレイヤーだが、リアオンの全てを知ってる訳じゃないぞ。リアオンの深淵は深く、覗き込めば常人ではたちどころに発きょ」

「なーんだ、つまんないの」


 妹君が俺の言葉を遮るようにそう言うと、席を立って行ってしまう。どうやら乗り切れたみたいだ。


 まったく、朝からこんなに気を使うイベントが発生するとは思わなかったぜ。にゃろう、恨むぜ銀城さんよう。


◇ ◇ ◇


 学校でも忍者の話で持ちきり……というわけではなかったが、それでも何人かのクラスメイトはこの話題をしていた。俺は世俗に疎いから知らなかったのだが、あのryoってのはかなり人気がある人物だったみたいだ。

 あんな弱小プレイヤーにお熱な人が多いとは、世も末だな。


「こんにちは空さん。ご機嫌は……あまり良くはなさそうですね」

「ああ、誰かさんのせいでな」


 教室で居心地悪くしていると銀城さんが話しかけてくる。ご機嫌斜めな俺とは対照的に、彼女は機嫌が良さそうだ。


 彼女は辺りを見渡すと、申し訳なさそうに口を開く。


「まさかここまで大事になると思いませんでした。申し訳ありません」

「やっちまったものは仕方ないから気にすんなよ。それにあいつにムカついたのはマジだからな。やり返せてスカッとしたぜ」


 俺みたいな不審人物にコテンパンにされ、あいつの評判もさぞ落ちたことだろう。俺の憧れを馬鹿にした罰だ、ざまあみやがれ。


「それで……迷惑をかけてしまったお詫びをさせて頂きたいのですが、よろしいですか?」

「お詫びなんていらねえよ。むしろこれ以上俺に構わないでくれ」


 銀城さんと話してるせいでさっきからクラスメイトたちが見てヒソヒソ話している。

 そら俺みたいな日陰者と銀城さんみたいな高嶺の花が話してたら噂話もするわな。なんて言ってるかは知らないが俺のことを良く言ってないのは確かだ。


「預かってる忍覆面を返して俺たちの関係は終わりだ。どんなお礼を掲示されようと俺の決意は変わらな……」

「リアオンで隠しダンジョンを見つけたのですが興味はないですか、残念です」

「行こう、すぐ」


 レアダンジョンが絡むなら話は違う。俺は僅かな間も置かず彼女の提案を受け入れる。


「場所は? どこから行くのが近い? 何系モンスターが出てくるんだ? 属性に偏りはあるか? 斬撃打撃刺突どれがゆうこ」

「ちょ、ちょっと! 質問が多いですよ!」


 おっといけない。つい興奮してしまった。

 しかしこれも隠しダンジョンが悪いのだ。


 リアオンの隠しダンジョン、いわゆる『秘境』と呼ばれる場所はマジで分かりにくい場所に隠されていて、その情報は高値で取引されることもある。


 『秘境』にはレアモンスターが生息してることが多く、レアなアイテムや武器を手に入れることが出来る。しかし一定数を超える人が秘境に足を踏み入れてしまうと、そこは秘境じゃなくなってしまいレアモンスターが出現しなくなってしまうのだ。


 なので秘境を見つけても仲間内でその情報を共有するか、一人で独占するかになってしまう。

 俺も二つほど秘境を隠し持っているがそこでドロップする物はコンプリートしてしまい、ただの経験値を稼ぐためだけの場所になってしまった。ここで新しい秘境に行けるなんてツイてる!


「いつ行くんだ!? 放課後? それとも昼休みか? 何なら今から学校サボって……」

「あの、その、いいんですか……?」

「ん? いいって何がだ!?」

「いやあの……みなさんこちらを見てますが……」

「あ」


 気づけばクラスメイトたちが俺のことを厳しい目で見ていた。

 そりゃそうだ、傍から見れば俺が彼女に言い寄っているようにしか見えない。あろうことかテンションの上がった俺は銀城さんの手を掴んでしまっている、これはどう足掻いても言い逃れ出来ない。


 銀城さんも銀城さんで、雪のように白い頬をほんのりと赤く染めてしまっている。終わった。


「あ、あはは……握手握手……なんちゃって」


 静まり返る教室。


 この後壮絶な質問攻めと華麗なる逃避行があったのだが、それは割愛させて貰う。

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