雪山、一人歩く。
はじめまして。くろなです。
今回初めて小説を投稿してみようかと思い、書きました。拙い文章ではありますが、楽しんで頂けたら幸いです。
初めに注意事項を。
誹謗中傷、周囲の方に迷惑のかかるような行為、及び無いとは思いますが、パクリなどはお控えください。
作者は飽き性なので、投稿が著しく遅い場合があります。これでも努力しておりますので、ご容赦ください。
お気づきの方もいるでしょうが、TRPGの某山脈の某実況者様の動画を見て、感化されて書いたものです。もし、興味を持った方は是非そちらも見てみてください。分かった方は同志です。
感化されて書いた作品とは言え、作者のオリジナル小説です。パクリなどはありません。
山や登山の知識に関しては完全に素人です。
私なりに調べて書いてはおりますが、事実と異なる部分も多々あると思います。ご容赦ください。
以上の前書きを読んで、大丈夫だという方は是非、ご一読ください。
降り積もった雪を疲労の溜まりきった足で、しかし力強く踏みしめる。
男が立っているのは地球上で恐らく最も過酷な山。
吹く風は身を切り裂くほどに冷たく、少しでも油断を零せば煽られて倒れ込んでしまいそうなほどに強い。
動植物も存在しない高所。周囲は白い雪と黒い岩壁、それから真っ青に広がる空のみ。
男は全くの孤独であった。
だがそれでも、一歩一歩縋り付くように歩いていた。
K2。それがその山の名である。カラコルム山脈の一角であるこの山は、標高8611m。かのエベレストに次ぐ世界ニ位である。
人里離れた奥地に存在する為、その知名度は低いものの、アクセスの無さ、厳しい気候条件、急峻な山容などが重なり、難易度はエベレストをはるかに凌駕する。死亡率は驚異の23%越え。四人に一人は命を落とす「非情の山」。
事実、男が登って来た数々の山の中で、間違いなく最難関と言えた。
海抜8000m地点。ここからはデスゾーンと呼ばれ、人間が生存できないほど酸素濃度が低下する死の世界。
この場所に長く滞在すれば、間違いなく命は無い。
死の空気は常に男にまとわりついている。
その毒は、一歩間違えれば男の内臓や血液、身体のありとあらゆる器官を凍りつかせてしまうだろう。
そんな危険を犯してでも、男にはどうしてもこの山を登らねばならない理由があった。
決意を今一度胸に刻み、一人、アイゼン―氷や雪の上を歩く際に滑り止めとして靴底に装着する登山用具―の爪を岩壁に突き立て、登攀する。
男の名を間宮治、登山家である。
登山家と言っても山に登るのは実に五年ぶりであった。
しかしこの山登ろうと決意した三年前から必死に身体を作り上げてきた。間宮にはそれほどの覚悟があった。例えこの地で命尽きる事になっても、彼に会わねばならなかった。
間宮はニ年のブランクを諸共せず、見事な登攀で岩壁を登りきった。
「もう少しだ、シマ。」
もう少しでお前に会いに行ける、と薄い酸素の中、七年連れ添った相棒の名を呼ぶ。
寺島輝昇。間宮の大学時代のサークル仲間であり、五年前まで相棒としてザイル―登攀するときに安全のために体を結び合い、確保や懸垂など登攀の補助のために用いる綱―を組んでいた男である。