表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

夾竹桃でおままごと

作者: 昼咲月見草
掲載日:2021/01/06

わたしが子供の頃、母と祖母は商店街で店をやっていた。

その店の裏は駐車場になっていて、近所の子供達と一緒に遊ぶにはちょうど良かった。

店の裏手だから、親もそこまで心配しない。

引きこもりのわたしもすぐに部屋に戻れるので安心。

ずっとそこで遊んでいたわけではないが、その駐車場は遊び場としてはとてもいい場所だった。


その駐車場には、夾竹桃が一本生えていた。

ピンク色の花を咲かせる、細い木だったような覚えがある。

美しい花だった。


わたしたちはその花で遊んだ。

女の子らしい事が好きではなかったわたしは、おままごと遊びもあまり好きではなかったと思う。

だが、この夾竹桃の木の下で、花や葉を集めてそれらしき事をしていた記憶はある。

わたしにとって夾竹桃の花はおままごとの花だった。

美しい濃いピンクの花びらを集めて小さな器に盛る。

花びらや葉の細い傷口からは白い、粘りのある液がにじみ出てきて、ベトベトした感触だけが手に残る。

糊のような不快感が好きではなかったし、水で洗い流しても、また花を触れば同じように指につく。

でもどんなに気持ち悪くても、わたしたちは夾竹桃で遊んだ。

本当に、美しい花だった。


夾竹桃に毒があるということを知ったのは、あれはいつの事だったのだろうか。


多分、小学生の頃。植物図鑑を見ているときだったと思う。

弱い毒なのだろうと思った。それは間違い無い。

なぜなら、毒があると感じた事がなかったから。


次に認識を改めたのは、友人が貸してくれた短編集。

夾竹桃のお皿を作る話。

人を死に至らしめる毒なのだと気がついた。

でもまだ信じられなかった。

だってわたしたちは生きている。


けれど、夾竹桃には毒があるのだ。

人を死へと追いやる毒が。

あの美しい花に。


わたしたちが遊んでいたあの駐車場。

愛してやまなかったあの花。

わたしたちの誰をも傷つけなかったあの花。

あの愛しい花は、本当に夾竹桃であったのだろうか。あの美しいピンク色には、本当に毒があったのだろうか。

わたしの記憶の中にその答えはない。

ただ、美しい濃いピンク色の花と、子供たちが戯れている。あふれるような強い光の中で。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ