プロローグ
初投稿です。
私を見下ろすその白い巨躯に肉と呼べるようなものは見当たらず、無機質な長い手は私の首を絞めている。
長く私を支えてきた白獣と呼ばれるもの。
「元が分からない程に変質と肥大化を繰り返した個体、君がこうさせたのか?」
男性が一人、白獣越しに私に話しかけている。
彼の傍には狼のような白獣の個体が守るようにして佇んでいる。
「君はその子に”命令”できない、つまり正しい使役者ではないわけだ」
彼の淡々とした発言からは感情が読み取れない。
「にもかかわらず暫定的ながら使役をしていた」
私は必死になって声を出そうとするが、喉を絞められて息すらできない。
「二度はない」
彼は”やれ”と短く発すると、首を絞める圧力が一気に増した。
パキ、と折れる音がした。
瞼を感じる、手があり、冷たい床を感じる。
自分が生きていることを理解し、目を開け、体を起こす。
目の前には人が一人、恰好は白い薄手の服で必要最低限のものを身にまとい、袖を通した手は折れそうなほど華奢だった。
乾燥した唇の間から辛そうに浅く息をもらしながら、私を見るその瞳は歓喜の色をたたえてうるんでいた。
「--っぁ」
喜びを表そうと動かした彼女の口は言葉を紡がず、隙間風のような音だけを鳴らしていた。
私は望まれる立場だった。祈られ、願われ、私はそれに応えてきた。
なのに今は目の前の、何かを求める目に私はうろたえた。
ただ怖かった。
私が戸惑っているうちに彼女が倒れた。
見れば服の下から血がにじんでいるのが見えた。
私はこんな事にすら気づかないほどに動揺していたのか。
我に返った私は彼女に手当をしようと試みる。
手のひらに意識を集中する、淡く黄色い液状のものが右手から泡のようにぽつ、ぽつと出てくると、重力に逆らうようにゆっくりと浮かび、一つの球体を形作る
「少ない…」
それでも私ができることの中ではこれが最善手のはずだ。
右手を傷口に持っていくと浮かんでいた黄色い球体も追従し、そのまま傷口に吸い込まれていく。
それでも量が足りず、彼女の流血を止め切れていない。このままでは間に合わない。
「っ!」
もっと量が必要だと集中をしていると、右手がまるで火傷をしたかのように変色していくのが見て取れた。
それでもやれることはこれしかなかった。痛みに耐えながら傷口を塞いでいく。
「頼む、お前の名前を聞かせてくれ」
口をついてでた言葉はもはや懇願に近かった。
私の呼びかけに答えようとしたのか彼女は再び発声を試みていたが、口から声の代わりに血を吐いてしまった。
「待ってくれ、頼む!」
何を言えばいいのか纏まらないまま声をだす。
せめて楽な姿勢をと思い彼女を抱え上げようとしたが、彼女を抱えれるほどの腕は無く、持ち上げられるほどの力もなかった。
私はやっと自分の体が小さくなっていることに気が付いた。
そして目の前の者を救うことすらもできないほどに弱い体であるということを。
彼女は私を見つめたまま、動かなくなっていた。
彼女の名前すら、その口から聞くことができなかった。
救う力を失くし、救う者すら亡くした、二回目の誕生を果たした。
人は若いうちにかかっておく病が3つあると私は考えています。
一つ目ははしか、二つ目は恋の病、三つ目は中二病です。
私は子供のうちに中二病にかかったのはいいものの、うまく治せずここまで来てしまいました。
つたない落書きを見て見ぬふりをしていただければ幸いです。
思いついたらぽつぽつ投稿するつもりなので更新はかなり不定期になると思います。