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アドニスとアネモネ

こんにちは、八咫烏です。

拙い文章ですが、読んでいってくださると嬉しいです。

僕は現在高校一年生です。進路だの職業だの学力だのと、なかなか忙しいので、書き進めるのは遅くなると思います。申し訳ないです。(誰も読まないとかは言わないで下さい笑)

この物語は、主人公の「僕」と「倉科さん」の2人の物語です。ただ、実を言うと、作者である僕が今をどう見つめているか、僕自身はどうありたいのかを模索する物語でもあります。高校生活で、自分の役割や居場所を確保するのに忙しい自分は、やりたいことをやろうとする「僕」そして「倉科さん」を生み出しました。この2人の行く末は、僕が本当になりたい姿なのではないかと、無責任に考えています(笑)。

どうぞ、作者の自分探しの旅に御付き合い下さい。

「君は本が好き?」

首を傾げて僕を覗き込む君の顔を思い出す。

一緒になって痛み出した左胸をそっと撫でる。優しく、壊れてしまうことがないように。

この痛みが、世界から溢れてしまいそうになった僕をこの世に繋ぎとめたのだ。何度も。

授業までまだ時間があることを確認した僕は、引き出しの中から、束になった原稿用紙を取り出した。埃をかぶっていた。最後に読んだのはいつだったか…。そんなことを考えながら、少し下手くそな文字の羅列を目で追っていく。あの夏が蘇る。


その年の終業式の日は雨だった。校長の話が、ちょうど半分すぎた辺りで、小さく雷が鳴ったのを聞いた。その音を聞き取れたのは、せいぜい数人程度だっただろう。

終業式が終わり、教室に戻り帰る準備をしていた。今日は美術部顧問の遠藤先生がいないから、美術室へは行けない。さっさと帰ろうと、下駄箱へ向かった。

下駄箱で靴を取り出そうとした時、ロッカーに体育シューズを入れ忘れていたのを思い出した。めんどくさいが、取りに行かないわけには行かない。少し駆け足気味で、教室へ戻った。肩で息をしながら教室の扉を開けた。すると、教室の端の席に居た女の子がビクッと震えてこっちを見た。倉科さんだったか。体が弱いらしくよく学校へ遅れてくる。机の上には原稿用紙と筆箱のみが置いてあった。

「ど、どうしたの?」

倉科さんが尋ねてくる。席が近いのもあって、何度か会話をしたことはあったので、向こうから話しかけてきた。

「体育シューズ忘れちゃって」

自分のロッカーへ歩きながら、僕は答えた。

「そうなんだ…」

「倉科さんこそ、どうしたの?もうみんな帰っちゃったよ」

別におかしなことを聞いたわけでは無いはずだ。だが、その瞬間、僕と倉科さんとのあいだの空気を、沈黙が支配した。

「べ、別に、どうもしてないよ!ぼーっとしてただけ」

沈黙を破って倉科さんが答えた。

「何か書いてたの?」

僕は聞いた。

倉科さんは顔を伏せて、机の上にあった原稿用紙を腕で隠した。

「ご、ごめん。僕、嫌な事聞いちゃった?」

慌てて聞いた。なぜ彼女が顔を伏せたのか、全くわからなかった。

「大丈夫だよ。わたしもそろそろ帰ろうと思って」

これ以上原稿用紙のことに触れるのは憚られた。

「じゃあまたね倉科さん」

そういって僕は教室を出た。彼女はバックに原稿用紙を入れていた。


蝉の声がうるさい夏休み一日目だった。特に予定もなかったから、家で惰眠を謳歌していた。両親は共働きだったので、平日は家で一人だ。明日は遠藤先生が出張から帰ってくる。久々に絵がかけると思うと、わくわくした。そんな心境なのだから、宿題なんか手につくはずもない。その日は課題帳に落書きをいくつか描いて終えた。

2日目だ。しばらく入らなかった美術室には、独特の空気が漂っていた。壁に飾られたいくつかの絵や彫刻。先生が出張していた間の1週間、閉じ込められていた空気。なんだか、教科書で見た、古代の遺跡のようでどこか神秘的だった。

創作意欲がふつふつと湧いてくる。ほかの数人の部員と、久々の筆の感触を楽しんだ。



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