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夏恋物語

作者: ☆いちごミルク☆

「死にたくない」と泣き叫ぶ姿が「忘れたくない」としがみつく姿が今も頭から離れない。


【夏恋物語】


ひまわりは僕の幼なじみ。家が隣で小さい頃からいつも一緒だった。小さい頃から髪の毛に付けている「ひまわり」のゴムもよく似合っている。

ひまの周りには必ず人がいて、ひまは必ず笑ってて、そんなひまに僕はいつの間にか、恋をしていた。


プルルルルルルプルルルルル

「もしもし」

「もしもし翔くん?」

「だってこれ僕の携帯だから」

「あ、そっか!」

「それでどうかしたの?」

「なんか緊張しちゃって、明日から新しい世界が待っているのかと思ったら…!!」

「ただの入学式でしょ?大袈裟だよ」

「…そうだよね!!でも翔くんの声聞いたら落ち着いた。おやすみなさい!!」

「うん、おやすみなさい」


僕に電話することに緊張はないのだろうか、僕は電話越しでもこんなに緊張するのに。



それから入学式が始まりクラス発表もあった。


「ねぇ!翔くん!同じクラスだよ!!やったー!!」

深い意味などないとわかっていてもドキドキしてしまう。

「うん、よかった。ひま1人だと心配だから。」

「それ、どーいうことー!?」

わかりやすくむくれている。


でもよかった。初めての場所で同じクラスになれて。

伝えられなくてもいい。ずっと隣にいれるのなら友達でいい。



中学と同じバスケに入るのかと思いきや、ひまは部活には入らなかった。




しばらくたって高校生活最初の夏休みがきた。

夏休みが始まったのにひまからは連絡が来ない。


プルルルルルルルルプルルルルルルルル


電話が繋がらない。




夏休みも終わりに向かっている頃、電話がかかってきた。


プルルルルルルルルプルルルルルルルル

「もしもし?翔くん?」

「なに?」

「え?怒ってるの?」

「怒ってない」

「怒ってる…よね?ごめんなさい!電話出れなくて、どこも行けなくて…!」

「いいよ、別に怒ってないって。友達とどっか行ったんでしょ?」

「………行って…ないよ?どこも…行ってない!」

「え?じゃあ何してたの?」

「実は……ずっと…入院してた!」

「…入院?」


それは10年以上隣にいて初めて聞く言葉だった。


「うん、そのことで電話した。」

「…え?どういうこと?どこか悪いの?」

「翔くん?落ち着いて!」

「あ、ごめん」

「明日いつもの公園に来て」

「……分かった」

「じゃあ、おやすみなさい!」

「…うん、おやすみなさい」


一生懸命、笑っているような気がした。





「あ!翔く〜ん!!」

手を振るひまを見て僕は驚く。長かったはずのひまの髪の毛は短くなっていて、男の僕にもわかるぐらい傷んでいる。そしてチャームポイントであったであろう「ひまわり」のゴムは付けていなかった。


「それじゃあ行こ」と半ば強引に連れてこられたのは病院だった



「…ひま?ここって……」

「病院の屋上だよ」

「そうじゃなくて!!」

「うん」


なんで僕は病院に連れてこられたの?なんで僕の手を掴んで離そうとしないの?なんでそんなに泣きそうな目をしているの?

聞きたいことは山ほどあるのに声が出ない。


「ごめんね、ずっと黙ってて。」

「……何が?」

「私はもう……長くないんだよ」


時が止まったような気がした。理解が追いつかない。


「奇跡なんだって!高校生になれたのが!」

「…そんなこと聞いてない!!いつから?いつから知ってた?」

「…最初から。出会った日から。」

「…どういうことだよ!?嘘だろ?ドッキリだろ?」


ひまが僕の腰に抱きついた。涙で濡れる。

「…本当」

ひまが僕の顔を見て言った。

嘘じゃない。傷んで短くなった髪の毛と明らかに細くなったひまの体がそう言っている。本当は気づいていたのかもしれない。

あんなに運動が得意だったひまが僕より出来なくなっていたり、好き嫌いのなかったひまが食べず嫌いになっていたり、保健室に行く姿を見てしまったり。気づく機会は何度かあって、その度に僕は見て見ぬふりをしていた。だんだん悪くなっていくひまを僕は「気のせいだ」と一言で自分の中で片付けていたのかもしれない。


僕の涙でひまの髪が濡れる。すると、ひまは両手僕の頬をで包んだ。

「泣いちゃダメだよ?」

ひまだって泣いてるのに、本当は「死にたくない」と思ってるくせに。

「…今からひまを困らせてもいい?」

「なあに?」

「僕ひまのこと恋愛対象として好き」

「…そっか、ごめん、私は好きじゃない」

「うん、知ってる」

「翔くん今までありがとう」


また声が出なくなる。何を返せばいいのかわからない。ひまのいない世界を僕は想像できない。





夏休み明け、ひまは学校には来なかった。

僕の机の中には手紙が入っていた。


『翔くんへ

これを読んでいるということは私はもういないのかな?

覚えてる?小さい時に連れていってもらったひまわり畑。

綺麗だったよね!今でも忘れられない。翔くんはきっと覚えてないだろうけどあの時「結婚しよう」って私に言ったんだよ。

嬉しかった。でもそれは出来なかった。その日泣いた。

なんで私が?って思った。悔しかったけど何も出来なくて、いつか話さなきゃいけないってわかってても言えなくて。ごめんなさい。翔くんが私のことが好きって事も知ってたよ。でもね、翔くんには幸せになってもらいたいんだ。自信を持って!強く生きてね!ひまわりより』


ひまは夏休み明け学校に行けないことを分かっていた


封筒の中にはひまが使っていた「ひまわり」のゴムが入っていた。





蝉の鳴き声で僕の泣き声は揉み消された。





【終】






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