管理者
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「私は・・・どこかで・・・間違ってしまったのか・・・」
自分の執務室にゆっくりと視線を回してつぶやく。
魂の成長は全て自己的成長に任せてある、神による横やりやテコ入れは創造神が自分で器を創り転生しなければならず、そのような事態に有る星に措いては「星の救済」が第一なので、個々の魂など気に掛ける事など皆無である、悠久の時を転生神として魂の成長を見つめて来たペインとて魂を自由に出来るものではなく、魂は数多存在した創造神が器と共に創成し生命界に放ったもので、創造神が創りし星々へと土着させている。
ペインはゆっくりと立ち上がり執務室を出るため歩を進めるが、これから向かう先の事を考えると足が重い、転生神として双璧を成すオシリスの執務室へ、同じ転生神とはいえ管轄が違う、ペインは善行を積みながら輝きを増して行く魂の管轄、オシリスは悪行を繰り返して光を無くし暗黒へと沈み続ける魂の管轄である。
天界の中層部から下層部へ降り転移門群へ向かう、冥界への転移門を目指して歩いていたのだが・・・
「ペイン様、どちらに向かわれるのでしょうか?」
「ユルトか下層の管理御苦労だな、これからオシリスの所へ向かおうと思ってな。」
「オシリス様と申しますとあの冥界の・・・」
「うむ、冥界の転生神であるオシリスの所へちょっとした事での相談にな・・・私一人では解決出来かねる問題に見舞われてな。」
「冥界へ赴かれるのがペイン様となると少々問題がございます、夕闇の間にてお待ち頂きたい。」
天界の管理者とは、神域の全てを管理しいる者であり、神域に住まう神や付随する天使や使徒に至るまで全てを把握し管理する事に責任を負っている、そんな管理者に言われたのでは是非も無し、ペインは静かに頷くと踵を反して夕闇の間へと歩き出した。
ユルトはペインが夕闇の間に向かったのを見送り、オシリスとペインの会談予定を組むために冥界の管理者の側近へ念話を飛ばすのであった。
「ヒース様、ユルト様より急ぎオシリス様の動向確認の為の直通念話による申し合わせ願いが届いております。」
「あいわかった、ユルト殿へ即時連絡するので通常業務に戻れ。」
天界からこちらへの会話要請とは珍しく、しかもオシリス絡みである、本日のオシリスの業務は最下層で転生を諦められた魂の廃棄業務、年間数度の大事な仕事を邪魔出来るはずもなく、取り急ぎユルトと打ち合わせをするべく溜息と共に念話を送る。
「天界へのパス確認、こちらは冥界管理者ヒース、ユルト殿聞こえますか。」
「おおヒース殿こちらはユルトですお久しぶりに御座います、急な申し出に対しての素早い対応有難うございます、急ぎですので一方的な口上ご容赦願います、こちらの転生神ペイン様がそちらの転生神オシリス様との会談を急ぎ希望なされております、ペイン様は直接そちらへ伺おうと致しましたので私の独断で御止めし、お待ち頂いている状況です、理由についてはヒース殿もおわかり頂けますでしょうが、何百年も天界からお出になった事が無かったペイン様はオシリス様との会談を急ぐあまり、ご自分が「光の魂の守護者兼転任者」を担っている事をお忘れなさっているようでした、天界をお出になる事によって「穢れ等々」を少しでも御受けになられた場合、その後のペイン様がお受けする影響がどれ程ものか判りかねるものでして、ペイン様の突然の行動に対して天界の管理者としては御止めする以外無く、ヒース殿にはご迷惑をお掛けするのだが急ぎでオシリス様とペイン様の会談を、日時、場所、さらに両転生神さまに影響無きよう取り纏めたいのでお力添え願います。」
「なるほど、急ぎの理由が分かりましたが、本日のオシリス様は年数回の重要業務『魂選別・廃棄』の業務についておりまして現在は取次しかねますので、オシリス様の現在業務が終了致しましたら即時ユルト殿に連絡させて頂きます。」
「有難うございますキース殿、こちらもその旨ペイン様に伝えておきますのでオシリス様の事宜しくお願い申し上げます。」
ユルトは、フゥーと息をつき会話を思い出しペインへどのように伝えるか考えながら夕闇の間に向かうのだった。