第4話 深まる謎
見上げた私の眼に映ったのは……
「深田先生……」
目の前には養護教諭の深田先生ともう一人綺麗な女の人が私を見つめていた。
「どうしたの? こんな図書準備室で誰にこんなことされたの!」
深田先生が手足の拘束を解きながら話しかけてきた。
「わかりません。トイレから出て歩いてたら……気づいたら此処で」
涙を浮かべながら説明をする美由。
「そう、怖かったわね。保健室で少し休みましょうか」
「はい」
女性は、深田先生と美由が保健室へ向かうのを心配そうに見送り携帯を手に電話をかけた。
『母さん何? 今、忙しいんだ』
『その忙しいって、人探しかしら?』
『えっ、何で知ってるの?』
『だって今、学校にいるんだもん』
『あぁ? いるんだもんじゃねーよ』
母さんから電話が来るなんてちょっとタイミングがいいような気がすると思いながらも、その話を聞いてみる。
『慶、美由ちゃんの居場所教えてあげないわよ』
『何で母さんが知ってるの?』
『それは……学校に来てるからよ』
『それより美由何処なの?』
『もう、そんなに慌てなくても大丈夫よ』
電話でのやり取りにイライラしてきた俺は、美由の居場所さえ教えてくれれば長電話などしていたくないと思い確信に迫る。
『母さん、美由に何かしたの?』
『いやぁねぇ、もう。何もしてないわよ。ちょっとどんな子なのか気になって眠らせて連れてきちゃっただけじゃないのぉ。そんなに怒らないでよ』
『美由は何処!』
俺は遂に怒鳴ってしまった。周りにいた生徒たちが驚いていたが、そんなこと気にしていられない美由を早く見つけたい。
『もう、わかったわよ。深田先生と保健室へ行ったわよ』
俺は、保健室と聞いて通話を切り携帯をポケットに突っ込んで保健室へ向かって走り出していた。
保健室前に着いて中に入るのを躊躇ってしまう。
(ってか、俺が入って良いのか? 保健の先生に何か言われたらどう答えるんだ? 美由に何て言うんだ?)
そんなことを思っていると保健室の入り口が開いた。
「さっきから、何してるの?」
「えっ? 否、何でも無いですけど」
「あっ、そう。それじゃあね」
深田先生が、保健室の中へ戻ろうとしていた。
「あっ、ふか……」
「?」
「あのぉ、深田先生」
「何かしら?」
「あのお…………」
「はい?」
「否、怪しい者じゃありません」
「うん、ウチの学校の生徒だからね」
俺は、言いたいことを言えずにいた。
「あのぉ、椙野保健室に来てませんか?」
「美由さんのことかしら?」
「はい、そうです」
「あなたは?」
「同じクラスの早坂 慶です」
「そう」
やっと、美由を見つけた。
「会えませんか?」
「美由さんの彼かしら?」
「いえ、違いますけど……」
「そうなの? どうしてここだと思ったの?」
(「母に聞いた」なんて言えないよなぁ。どうしたら良いんだ? やべぇなぁ)
「・・・・・」
「まぁ、良いわ。どうぞ」
深田先生はそう言って俺を中に入れてくれた。美由はベッドで横になっていた。
「美由……」
「うん」
「大丈夫か?」
「……うん」
美由は青白い顔をしていて怯えていた。
この状況を作り出した本人を知ってるだけに、美由に対して罪悪感が押し寄せる。そしてナゼ美由がこのような形で連れ去られたのかを話すかどうかを悩んでしまう。
この怯えた様子…。
「美由…あの実は…」
「慶…ど、どうして私なんだろ?」
「へ!?」
「どうして私がこんなことになったんだと思う?」
まだ青い顔のままの美由が震えながらも濡れた瞳をこちらに向けながら真剣な顔をする。
どきっ
その顔を見た俺の胸に感じた事のない鼓動が…。
「そ、それは…」
どうしようか…。
話すかそれとも誤魔化すか…。
目の前の顔を見ながら答えの出ない考えがグルグル巡る。
美由は美由で、慶が来てくれた事で安心できる事そして自分の想いに気がついた。
美由への想いを大切にしたい慶。
慶が抱えている何かを支えてあげたい美由。
この事がきっかけで、お互いに気づいた想い。
この先、ふたりに何が待ち構えていてどう進んでいくかわからないけど、この気持ちだけは大切にしようと思っている。