第17話 良かった……
この第17話は、武 頼庵さまからのプレゼント原稿です。
寺田さんの家に行こう――
そう俺が口にしてからすでに三十分が経過していた。そしてワゴン車に俺達三人と大人の女性二人が乗ったまま寺田家に移動中である。
あの場所で俺は二人に電話した。一人はこの状態を納めるために実働部隊として動いてくれている母さん。もう一人は最近ほとんど会ってないけど、たぶん本部にいるであろう父さんだ。
父さんにはこれから行う事を事前に話してその後に起こりうる事態に備えてもらうために先行して動いてもらい、母さんにはこれから行こうとしている寺田家に先に移動してもらってことを納める準備をしていてほしい旨を伝える。ついでに俺達三人の移動手段も何とかならないかとお願いした。
そしてその五分後に俺達に車が用意されソレに乗り込んで移動しているのだ。
車の中ではほとんど会話が無い。重い沈黙というよりは寺田さんが今起きていることを理解しようとしてる時間なんだと思う。寺田さんの隣に座る美由が時々声を掛けているのは聞こえるし、彼女も特に混乱は今のところない感じだ。
――いや見せない様にしているだけか……そりゃ生き返ったなんて経験したんだ。頭が混乱するのは当たり前だよな。
助手席に座る俺は後ろを振り返りながら二人の様子を見ていた。
「心配ですか?」
運転している女性が俺の方を向いてニコッと笑う。
「え!?」
それまで話しかけてこなかったから驚いて隣を見つめる。
「あぁごめんなさい。声を掛けたりして。お邪魔よね?」
女性は優しい声音で問いかけてきた。
「いえ……平気ですよ。あんまり大人の女の人と話したことないので。その……少し苦手なだけですし」
するとクスクスと笑い出した。
「な、なんですか?」
訝し気に思って問いかけた。
「ごめん……なさいね。ふふ……。君があの仁美さんの息子さんだと思えなくて」
「は、はぁ……」
それがどういう意味なのかいまいち呑み込めない。
「あ、ごめんなさい。自己紹介がまだだったわね。私は佐野で後ろに居るのが大野です。よろしくね」
その言葉を聞いて後ろを振り向くと、寺田さんと美由を見守るように座っていたスーツ姿の女性がぺこりと頭を下げた。
「え、あ。こちらこそ……すいません。運んでいただいて」
「いいのよぉ。これも仕事の内だしね。それにあの慶君とお話しできるチャンスを貰えたんだもん」
そんな事を言いつつ上機嫌な様子でニコッと笑いかけてくる。
「俺に……ですか?」
何の事だか分からないから素直に聞いてみた。
「ええ。慶君は結構人気なのよ……ね?」
後ろに向けて同意を求めるように問いかける佐野さん。
「はい。慶君は仁美さんの息子さんですし……その……いろいろと人気ですね」
――いろいろと人気って何だよ?
「は、はぁ……そうですか」
訳も分からないまま相槌だけはしておいた。
後ろに居る美由は大きな眼をして女の人たちを交互に見ているけど、何を気にしているのか分からないし。気にしない事にしてまた正面に顔を戻して前を見る事にした。
武 頼庵さま、
素敵なプレゼントをありがとうございました。
第18話も、武 頼庵さまからのプレゼント原稿ですので楽しみにしていてくださいね。




