Liar other story @早坂家
武 頼庵さまからのプレゼント作品です。
[ 仁美の日課 ~母の平穏な?日常~ ]
いつからだろうか――
「おはよぉ……」
ダイニング……とまでは言えないけど、家族そろって食事のできるスペースのある我が家ではキッチンから家族の顔が見えるようにオープンな空間になっている。
――理由はそれだけじゃないんだけど、それはまた後で……
ドアを開けて入ってきたまだ寝ぼけたままで、どう寝たらそんなに跳ねるのか分からいような髪に寝ぐせのついている息子の頭を見ながらクスッと笑う。
「ちょっと慶……寝ぐせがついているわよ!! ちゃんと顔洗って!!」
「はぁ~い……はわわわぁ……」
そのまま洗面所の方へ歩いて行く息子。
目の前には四人掛けのテーブルと人数分の椅子があり、すでに娘の渚がしっかりと学校へ行く準備を整えて、制服姿でテレビを見ながらクチを動かしモグモグと朝ごはんを食べている。
テーブルには愛する旦那様の姿は無い。ここ数日は仕事の都合で帰ってきていない。後で逢うことになっているので着替えとお弁当を届けようと思っている。
こういう日常が[いつも]と思うようになったのは――
事の始まりは、息子の慶がチカラに覚醒したあの日に遡る――
私達夫婦が目を覚ますとすでに黒いスーツに身を包んだ男女が、家の玄関先に詰め掛けて来ていた。
そのままにしておくわけにもいかず、旦那の相談の上で家にあげると、あれこれとまずは尋問をされた。起きてきた子供たちにも同じような事を繰り返す。そして一通りの説明を終えると入れ替わるように現れた、数人の男の人に慶と渚を学校に送り届けてもらった。
その後で私は旦那と一緒にとあるビルへと連れていかれた。旦那は会社に「連絡しなくちゃ」とか騒いでけど、無言の威圧感に一蹴されるように黙り込むしかなかった。
――なに……ここは?
本当に何の変哲もない外見は凄く古そうなビルで、人すら出入りしているようには見えなかったのに、中に入るとハイテク化された機器と数十台にものぼるモニターがあり。所狭しとスーツ姿の男女が動き回っている。身体の前には首から下げたIDカードのようなものが下げられていることから、どこかの企業のようでもあった。
「お二人にはここで働いてもらいます」
案内役をしていた男性の方が振り向きながら話を切り出してきた。
「「は!?」」
私と旦那は言葉を発した後にお互いの顔を見合わせた。突然の事に何を言っているのか理解が追いつかない。
「ちょ、ちょっと待ってください!! 旦……夫はともかく、私はただの主婦ですよ?」
男性はこちらを向いて深くため息をついた。
「いいえ奥さん……あなたと旦那さんは息子さんがチカラを覚醒してしまった以上……ただの一般人ではなくなったんですよ。能力者の両親という立場になった」
「そ、そんな……」
愕然とする私。
「わ、私は今の会社を……」
旦那が男性にお願いするかのように言葉を発した。
「残念ですが、旦那さんもすでにこちらに来てもらう事が確定済みです。今朝のうちに退社願いが受理され、前の会社に籍はありません」
「な……」
旦那も茫然とした表情になる。
そしてまた男性はため息を一つついた。
「いいですかお二人とも。既にあなた方は国家の機密を知ってしまった。息子さんともどもわれわれの監視対象者なのですよ。諦めてこちらで我々に協力してください」
こうして私たち夫婦は国家機関によって監視されるとともに協力をさせられることになったのだ――
――あの時は本当に突然だったもんねぇ……
ふふふっと自然と笑いが込み上げる。
「お母さん、そろそろお兄ちゃんの事を急がせないと間に合わないよ?」
いつの間にか食べ終わった食器を手に持って渚が横に立っていた。
「え!? あ!! そうね」
テーブルの方へ顔を向けると、ゆっくりとモグモグと食べている慶の姿がある。
「慶!! あなた急がないと間に合わないわよ?」
「へ!? そんなに……ってうわぁ!! まずい!!」
時計に目を向けたであろう息子は慌てながら自分の部屋へと戻って行った。
その様子にまた笑いが込み上げる。
――これが普通の生活なら……
数十分の後、息子がカバンを持って戻ってきた。既に渚の姿は無い。先に学校へと出かけて行ったのだ。玄関まで息子を見送りに歩いて行く、そこにはすでに一人の女の子が立って待っていた。
――恋人になったのかしら?
よく知っている美由ちゃんだ。
「今日も悪いわねぇ美由ちゃん」
そう言いながら彼女に微笑む。彼女は「いえ!!」っと笑いながら首を横に振った。
その後すぐに二人一緒に仲良く話合いながら出掛けて行った。手を振って見送る。
「よし!!」
――今度は私だ!!
それからキッチンで食器などを片づけ、自分たちの部屋へと行き服装を変える。ビシッと紺色のスーツ。
――まだイケるじゃない?
自分の姿を鏡で確認しながらちょっと笑う。
キッチンへと戻ってお弁当を二人分持ち玄関へ向かう。
――さて……今日もあの子達を見守るとするか!!
ドアを開けカギをかけて空を見上げながら両腕を伸ばした。
いつからだろうこれが私の日課になっていた――




