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liar ~嘘が真実~  作者: 菜須 よつ葉 / 原案 武 頼庵 
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17/20

Liar other story @早坂家 

武 頼庵さまからのプレゼント作品です。




[ 仁美の日課 ~母の平穏な?日常~ ]




いつからだろうか――


「おはよぉ……」

ダイニング……とまでは言えないけど、家族そろって食事のできるスペースのある我が家ではキッチンから家族《かぞく》の顔が見えるようにオープンな空間《くうかん》になっている。

――理由はそれだけじゃないんだけど、それはまた後で……

ドアを開けて入ってきたまだ寝《ね》ぼけたままで、どう寝たらそんなに跳《は》ねるのか分からいような髪《かみ》に寝ぐせのついている息子の頭を見ながらクスッと笑う。

「ちょっと慶《けい》……寝ぐせがついているわよ!! ちゃんと顔洗って!!」

「はぁ~い……はわわわぁ……」

そのまま洗面所《せんめんじょ》の方へ歩いて行く息子。

目の前には四人掛《よにんが》けのテーブルと人数分の椅子《いす》があり、すでに娘の渚《なぎさ》がしっかりと学校へ行く準備《じゅんび》を整《ととの》えて、制服姿《せいふくすがた》でテレビを見ながらクチを動かしモグモグと朝ごはんを食べている。

テーブルには愛する旦那様《だんなさま》の姿《すがた》は無い。ここ数日は仕事の都合《つごう》で帰ってきていない。後で逢《あ》うことになっているので着替《きが》えとお弁当を届《とど》けようと思っている。


こういう日常が[いつも]と思うようになったのは――


事の始まりは、息子の慶がチカラに覚醒《かくせい》したあの日に遡《さかのぼ》る――

私達夫婦が目を覚ますとすでに黒いスーツに身を包《つつ》んだ男女が、家の玄関先《げんかんさき》に詰《つ》め掛《か》けて来ていた。

そのままにしておくわけにもいかず、旦那の相談の上で家にあげると、あれこれとまずは尋問《じんもん》をされた。起きてきた子供たちにも同じような事を繰《く》り返す。そして一通りの説明を終えると入れ替《か》わるように現《あらわ》れた、数人の男の人に慶と渚を学校に送り届《とど》けてもらった。

その後で私は旦那と一緒にとあるビルへと連《つ》れていかれた。旦那は会社に「連絡《れんらく》しなくちゃ」とか騒《さわ》いでけど、無言《むごん》の威圧感《いあつかん》に一蹴《いっしゅう》されるように黙《だま》り込《こ》むしかなかった。

――なに……ここは?



本当に何の変哲《へんてつ》もない外見《がいけん》は凄《すご》く古そうなビルで、人すら出入りしているようには見えなかったのに、中に入るとハイテク化された機器《きき》と数十台にものぼるモニターがあり。所狭《ところせま》しとスーツ姿の男女が動き回っている。身体の前には首から下げたIDカードのようなものが下げられていることから、どこかの企業《きぎょう》のようでもあった。


「お二人にはここで働《はたら》いてもらいます」

案内役《あんないやく》をしていた男性の方が振り向きながら話を切り出してきた。

「「は!?」」

私と旦那は言葉を発《はっ》した後にお互《たが》いの顔を見合わせた。突然《とつぜん》の事に何を言っているのか理解《りかい》が追いつかない。


「ちょ、ちょっと待ってください!! 旦《だん》……夫はともかく、私はただの主婦《しゅふ》ですよ?」

男性はこちらを向いて深くため息をついた。

「いいえ奥さん……あなたと旦那さんは息子さんがチカラを覚醒してしまった以上……た(・)だ(・)の(・)一般人ではなくなったんですよ。能力者の両親という立場になった」

「そ、そんな……」

愕然《がくぜん》とする私。

「わ、私は今の会社を……」

旦那が男性にお願いするかのように言葉を発した。

「残念ですが、旦那さんもすでにこちらに来てもらう事が確定済みです。今朝《けさ》のうちに退社願《たいしゃねが》いが受理《じゅり》され、前の会社に籍《せき》はありません」

「な……」

旦那も茫然《ぼうぜん》とした表情《ひょうじょう》になる。


そしてまた男性はため息を一つついた。


「いいですかお二人とも。既《すで》にあなた方は国家の機密《きみつ》を知ってしまった。息子さんともどもわれわれの監視対象者《かんしたいしょうしゃ》なのですよ。諦《あきら》めてこちらで我々に協力《きょうりょく》してください」


こうして私たち夫婦は国家機関によって監視されるとともに協力をさせられることになったのだ――



――あの時は本当に突然だったもんねぇ……

ふふふっと自然と笑いが込み上げる。


「お母さん、そろそろお兄ちゃんの事を急がせないと間に合わないよ?」

いつの間にか食べ終わった食器を手に持って渚が横に立っていた。

「え!? あ!! そうね」

テーブルの方へ顔を向けると、ゆっくりとモグモグと食べている慶の姿がある。


「慶!! あなた急がないと間に合わないわよ?」

「へ!? そんなに……ってうわぁ!! まずい!!」

時計に目を向けたであろう息子は慌《あわ》てながら自分の部屋へと戻って行った。


その様子にまた笑いが込み上げる。


――これが普通の生活なら……


数十分の後、息子がカバンを持って戻ってきた。既に渚の姿は無い。先に学校へと出かけて行ったのだ。玄関まで息子を見送りに歩いて行く、そこにはすでに一人の女の子が立って待っていた。


――恋人になったのかしら?

よく知っている美由ちゃんだ。


「今日も悪いわねぇ美由ちゃん」

そう言いながら彼女に微笑《ほほえ》む。彼女は「いえ!!」っと笑いながら首を横に振った。

その後すぐに二人一緒に仲良く話合いながら出掛けて行った。手を振って見送る。


「よし!!」

――今度は私だ!!


それからキッチンで食器などを片づけ、自分たちの部屋へと行き服装《ふくそう》を変える。ビシッと紺色《こんいろ》のスーツ。


――まだイケるじゃない?

自分の姿を鏡で確認しながらちょっと笑う。


キッチンへと戻ってお弁当を二人分持ち玄関へ向かう。


――さて……今日もあの子達を見守るとするか!!

ドアを開けカギをかけて空を見上げながら両腕《りょううで》を伸ばした。


いつからだろうこれが私の日課になっていた――

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