第11話 実行前の新たな事実
俺は、実行日を前日に控え落ち着かない気持ちでいたが、美由を早く笑顔にしてやりたかった。
ただ訳もなく美由に会いたくて校舎内を探した。何処を探しても居なくて、一瞬もう帰ったのかと思ったが、俺の心がざわついて仕方ない。
――何か嫌なことが起きてなきゃ良いが……
俺の予感は大抵外れたことがない。
「美由!」
いるはずもないが何故か名前を呼んだ俺。
音楽準備室からフラフラと足取りの覚束ない美由が出てきて廊下を歩いている。
「美由? どうした?」
「……慶」
「うん、どうした」
「あのね」
「うん」
「…………」
慶は、美由を支えながら話しやすい場所に連れていく事にした。
「ここなら大丈夫、話してみて」
美由は周りを珍しそうに見渡している。
「俺の母親の姉夫婦のやってるカフェだから」
そこに背の高い優しそうなエプロン姿の女性がやってきてお水とおしぼりとメューをテーブルに置いて慶に声をかけた。
「もぉ~、隅に置けないわね! アンタって」
「いや、違うって」
「良いわよ、隠さなくても。メュー決まったら教えて」
「うん、わかった」
カウンターで叔母さんと言葉を交わし、おばさんのウインクから逃げるように美由の方へ振り返った。
「美由、まず何か飲んで落ち着こう?」
「うん」
「何がいい?」
「ココアがいい」
「うん。わかった!」
カウンターまで行き伯母に
「ココアとアイスティーお願いできる?」
「はいはい! かわいい子ね」
「来ないでよ!」
「いやいや、ココアとアイスティー持っていくわよ。あんた取りに来るの? 邪魔しないから安心しなさい」
「わかった。頼んだよ」
席に戻ると美由がうつ向いて泣きそうだった。
「美由?」
「慶」
「どうした?」
「助けて」
美由が初めて俺に弱音を話してくれた。
「美由、話して」
それから美由は、イジメの現場に偶然居合わせた事で自分もイジメの対象にされ、助けてあげられなかった子の仲良かった友達が美由がイジメを知っていながら助けなかったから自殺したんだと言われて責められているようだ。
もう迷っている時間が無さそうだ。母さんにも手伝ってもらえることになっている。もう少し待ってて美由。本当にあと少し……