第1話 不思議なチカラ
「お兄ちゃん、おっはよう!!」
「おう……おはよう」
先に起きていてテレビをつけて寛いでいた妹の渚
「お兄ちゃん、ご飯にしようよ」
「あぁ、そうだな」
母が準備してくれている美味しそうな朝食が食卓に並んでいた。
ふたりで食卓につき朝食が始まる。
食べる音と食器を出す音が静かに響いていたとき点けていたテレビが緊急速報を流していた。
[緊急速報です。今朝アメリカで大統領が狙撃を受け重傷を負ったと今速報が入ってまいりました……]
つけっぱなしだったテレビから聞こえてきたニュース。
「すごいよねぇ~アメリカって。大統領大丈夫なのかなぁ……」
「さぁなぁ……俺にもパン取ってくれよ」
「はぁい」
別段俺は話が苦手という訳ではない。むしろいろいろと話したいし、もっと騒いだりしたい。妹との仲も悪くないし、父さんも母さんも俺と妹の事は同じように愛情を注いでくれていると思う。
それから俺は決して反抗期という訳でもない…。
でも、思ったことを簡単にはクチに出せない…。
だから無口で暗い男の子だと認識されていた。
本当の自分の性格からすると「全然違う!!」って叫びたいんだけど…。
「そろそろ学校に行かなきゃ!!」
「そんな時間か…」
「朝からず~っと大統領の話ばっかりでさ…つまんないよ」
「あぁ…仕方ないなそれはどうせ[生きてるなんて嘘]かもしんねぇけどな…」
ピシーン!!
しまった!!
目の前の映像が切り替わる。
カラーからモノクロに…そしてまたカラーな現在に。
「たった今!! 最新情報が入りました!! アメリカの大統領が亡くなったと正式発表がなされたそうです!!」
「あれ? 亡くなってたんだ。お兄ちゃんが言った通りだね!!」
テレビの声を聞きながらはしゃぐ妹とは対照的に頭を抱え込む俺。
それを見つめるキッチンの母のまなざしにも気づく。
「慶…あなたまた…」
「ごめん母さん…ま・た・やっちゃったみたいだ…」
俺の名前は早坂慶
この特殊な能力のおかげで国家から監視されている者の一人。
[ liar ライアー ]
ウソが真実になる能力。
俺にはそのチカラがあるらしい…。