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ほんとは怖い異世界転移  作者: なかかな子
序章 異世界は最高!だと思っていた
1/10

最初の夜 最期の夜

 まさか異世界に来た最初の夜に、

『どうしてこんなことになったんだろう』

 って後悔するとは思わなかった。


 おれは壁にもたれかかり、ガラス片が深々と刺さった太ももを眺めていた。新品のズボンは自分の血で真っ赤に染まり、水分を含んで重たい。


 あぁこりゃあ中までびっちょだな。あーぁ。


 動かせなくなった左腕はだらりと床に下がったままで、なんとか動く右腕も脇腹から流れる血を抑えるのが精いっぱいだ。


 よくこんなにあちこちから血が出るもんだ。人間の九割は水分って本当だったんだな。


 そんな、どうでもいいと分かっていることを考えてしまうのは、肝心なことが分からないからだ。


 どうしてこんなことになったんだろう。


 おれたちは今日、異世界に転移してきた。

 中学の最後の思い出にと登った山の中で迷子になり、足を滑らせて崖下へ落ちた直後、とある屋敷の庭で目を覚ましたのだ。

 屋敷の人たちは快く迎え入れてくれた。あたたかな湯で泥を落とし、新品の服を用意してくれた。


 ここが異世界アースフィアだと知ったのは夕食の席。

 お腹いっぱいになったので、詳しい話は明日聞くことにしてベッドに潜り込んだ。

 明日からはじまる異世界生活を満喫する英気を養うために。


 ……どうしてこんなことになったんだろう。

 

 あいつ――あの女のせいだ。

 ()()()()()をしたからだ。


「ウァああアア」


 悲鳴とも絶叫ともつかない雄叫びを上げ、暗闇の中で『そいつ』が体を揺らした。

 体を低くし、鎌首をもたげる蛇のように頭部を激しく上下させる。乱れる黒髪が何度も顔を覆う。


「ぎィイイいイ」


 歯ぎしりするような甲高い声で鳴いて、暗闇の中で『あいつ』が立ち上がった。

 首をのけぞらせ、敵を威嚇する雄鶏のように腕を広げる。極限まで見開かれた目は壊れたオモチャのように眼窩を廻る。


 分からない。

 滑落して、転移して、食事をもらって、眠りに就いただけじゃないか。

 悪いことをしたわけじゃない。

 だれかを傷つけたわけじゃない。


 これまでずっと一緒で、これからも一緒に過ごしていくって、そう願っただけだろう。


 おれ()()は。


「もうやめてくれよ……星華せいか……昂介こうすけ……」


 幼なじみを呼ぶ声は届かず、ふたりは再び床板を踏みしめて跳躍した。


 そして何度目かになる殺し合いがまた始まってしまった。

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