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調査

「じゃあ俺はちょっと仕事してくるから」


「あれ? お父さんこんな時間に出かけるの?」


「まあな」


 深夜11時、俺は早速悪魔の調査に出ることにした。

 悪魔は基本的に夜を好む。

 

 俺は過去に十数回、悪魔と戦ったことがある。

 そしてそのうちの9回が夜戦だった。


 コートを羽織り、腰のホルダーにダガーを収める。

 槍ではなく今回の武装(えもの)はダガーだ。


 レベルが100に到達すると二つ目のジョブ、すなわちサブ職が解放される。

 さらにLv.200になれば三つ目が解放される。

 だから俺は三つジョブがあることになる。


 ただ、Lv.100とLv.200で解放されるサブの方は制限がかかる。

 具体的にはメインジョブの3分の2のレベル相当のスキルまでしか覚えられない。


 つまり俺の場合はLv.300だからサブ職だとLv.200相当のスキルまでしか覚えられないのだ。

 そんなサブ職に俺は、 


 メイン:槍系統(ランサー)

 サブ1:斥候系統(スカウト)

 サブ2:魔術師系統(ソーサラー)


 を、選んだわけだ。

 ちなみにメインは槍系統最上階職の『神槍』、

 サブ1は斥候系統・第4階職の『インビジブル・マーダー』、

 サブ2は魔術師系統・第4階職の『エクス・ソーサラー』である。


 調査には斥候系統が最適なので今回はダガーというわけだ。


「待て! 戦いにでも行きそうな装備じゃねぇか! 何しに行くのか知らねぇが、オレも着いて行くぜ!!」


 玄関の取っ手に手をかけたとき、後ろからシャルの声が飛んできた。


「んぁ? ついてきてもいいけどつまんねぇぞ?」 


「かまわねえよ。セイの戦いが見れるかも知れねえからな!」


「私は眠いので先に寝まーす」


 ルリはベッドに直行してしまった。まあいいけど。

 さて、それじゃあさっさと終わらせますか。


 とりあえず今日は街中を調べてみるとしよう。





ーーーside シャントルーーー






 これはチャンスだ!

 セイがかなり強いことは冒険者の勘でなんとなくわかる。

 だが、どれくらい強いのか(・・・・・・・・・)はまだ掴めていない。


 ちょっと前にレベルを聞いたときは、『レベル? あ~……300だ』なんて面白くない冗談ではぐらかされてしまった。


 ふぁみれす(庶民家族向けの定食屋のことらしい)を出て、セイの観察をしているとダガーが目に入った。

 なるほど、セイは少なくとも超近接系のジョブらしい。

 …………ん?


「なんでセイは武器を()に出してんだ?」


 オレたち人間には、1人1アイテムだけ虚空間にしまえる能力がある。

 その空間のことを『心域』という。

 『心域』にしまった物はいつでも取り出せるし、魔力消費もない。


 一般市民はどうか知らねえが、オレたち冒険者は主武装(メインウェポン)は、『心域』に入れておく。


 己の武器を見せることは弱点をさらす事でもあるし、『心域』にしまっておけば盗まれることもない。


 だからセイがダガーをホルダーに入れて持ち歩いているのには少し違和感がある。


「ああ、『心域』にはメインジョブの武器を入れてるからな。このダガーはサブ用だ」


「なっ……!? セイ、二重職(デュアル)なのかっっ!?!?」


 二つ目のジョブが解放されるのはレベル100になったときだ。

 つまり、レベル100以上ってことになる……!

 S級冒険者上位や王国軍元帥と同等かそれ以上だぞ!?


 嘘をついているようには見えないし、そんな嘘をつくためにわざわざダガーを外に出しているとも考えにくい……。

 でも簡単には信じれねえし……。


 当の本人であるセイは眠そうにあくびしている。

 こっちはかなり動揺してるってのによぉ。


「……なぁ、仮にセイがLv.100以上だとして、どうして飯屋なんてやってんだ?」


「ファミレスくらいしかできそうなのがなかっただけだ。冒険者をやってた時期もあるが、どうも合わなくてな……」


「合わない? 強いのにか?」


 たった一度助けられただけのオレでもコイツが並の冒険者よりずっと強いのはわかった。

 だが、そんな奴がどうして一般市民みたいに生活してんのかがわかんねえ。

 

「単に俺の好き嫌いの問題だよ。それに、真面目に冒険者してた時はそれなりに名が通っていたんだぜ?」


「なに? でもオレはセイ=カタギリなんて冒険者は今まで聞いたことはなかったぞ」


「それは――――待て、何か聞こえないか?」


「……??」


 セイに言われ、耳を研ぎ澄ませる。

 

 ………………。

 ………………。

 ………………。


 何も聞こえねえじゃ――――



            「……ゥゥゥ……ゥゥォォゥ………」



 !?!?

 確かに何か聞こえた……!!

 遠くの方から聞こえてくる。

 地を這うような不気味な声が。



          「ウゥゥ……グゥゥ……ォォ……!!」



「セ、セイ。なんか声が近づいてないか……?」


「そうみたいだなぁ」


「そうみたい、って……」


 ずいぶん落ち着いてるな……。

 セイの方をちらりと横目で見る。

 いや、でも確かにこんな市街地に魔物が現れるはずもない。

 変に気張る必要も無いのかもしれない。


「へっ、こんな声ぐらいでビビるこたぁ「ク゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッッッッ!!!!」ぎゃあああああああああッッ!!」


 視線を戻したら白い影が雄たけびをあげながら、猛スピードで迫っていた……!!


「セイ、セイ! 逃げよう!! なんかヤバいって!!」


 セイの袖をグイグイ引っ張るがビクともしない……!

 コイツ、あのヤバいのが見えてねえのか!?


「おいっ! セイってば!!」


「まぁ落ち着けって。ありゃあゴーストだ」


「な、なんだ……ゴーストか……。

 ……………………………………

 ……………………………………

 ………………ゴーストッッ!?」


 ひぃぃッ……!

 なんでゴーストを前にしてコイツは平然としてんだよ!?


「シャル、ゴーストってのは基本的にはおとなしいんだ。稀に積極的に襲ってくる悪霊もいるが、そんなのは本当に稀だ。現にほら、目の前の奴も今はおとなしくなってるぞ」


 そういえば、いつのまにか先ほどの雄たけびも今は鳴りを潜めている。

 オレは恐る恐る顔をゴーストの方に向けた。

 すると、奴は10メートルほど離れた位置でうつむいたまま静止していた。


「…………」


 確かに何もしてこない。

 ゴーストがゆっくりと顔を上げると、オレと目が合った。

 途端、


「コロスコロスコロスコロス――――。ゼッタイ、コロシテヤルッッッーーー!!!」


「ひいぃぃぃぃぃ!!!」


 突如ゴーストがニタニタと笑みを浮かべ、再び猛スピードで突進してきやがった……!!


「あっ……。スマン、稀な悪霊だったみたいだ」


「ぎゃぁああああああッッッ!!」


 オレは一目散に逃げだした。



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