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旅立ち

ーーside 聖ーー


 いや~、ビックリした。

 いきなり賢者さんが殺されそうになってるんだもんな。


 ちなみにこの『グリットクロス』は俺の家の地下室で埃を被っていたものだ。『グリットクロス』含め、ダンジョンなどで収集した伝説級の武器はまとめて木箱に突っ込んであるのだ。

 『グリットクロス』ならまだ二本眠っているはずだ。


 ただ、さっきみたら一本カビが生えてしまっていた。

 地下室は通気性がないからこういうことが結構起きてしまう。何気にショックだった。


 これからはこまめに換気するとしよう。


「お、おい。僕をどうするつもり……ですか!?」


「どうもしない」


 賢者さんが委縮している。

 ひとまず下ろしてあげるとするか。

 周りに魔物などがいない草原を選んで俺たちは降り立った。


 ドサッと担いでいた賢者も下ろす。


「ぐぁっ!」


 ぽいっと下ろしただけなのにそんなダメージ受けたみたいな声出さないでほしい。

 あそこにいたら殺されそうだったので適当なことを言って連れてきてしまったが……どうしようか。


 とりあえず友好の印として手を差し出した。


「立てるか」


「……ッ! いい、自分で立てる」


「そうか」


 賢者は一人で立ち上がると、一瞬こっちを見たがすぐに顔をそらした。なんだか、好かれてはいなさそうだ。まぁ初対面だしな。


「此度は情けないところをお見せしました。それと……助けていただき感謝します」


「構わない」


「……チッ……余裕ぶりやがって。同じ『四聖』でどうしてこうも差がある……」


 賢者が消えるような小声で呟いた。


「? どうかしたか」


「いえ、なんでもありませんよ」


 とっさに聞こえていなかったふりをしたがバッチリ聞こえた。舌打ちされたのもしっかりわかりました。しかし『四聖』ってなんだろう。あとでセラルタさんあたりに聞いてみよう。


「私の判断で賢者殿とその支援者との関係を絶ってしまった。……これからどうされるか」


「それは……いや、それより一つ聞きたい。……僕は弱いのでしょうか?」


 おや?

 ははぁん。

 賢者さんは今回の出来事が相当堪えたようだ。うむうむ、いい傾向じゃないか。


今は(・・)弱い。だが、ポテンシャルはあるだろう」


「……そうですか。サクリードさん、一つお願いをしてもいいでしょうか」


「なんだ」


「カバンなど持たずに来ましたから僕には今金がないのです」


「なるほど。路銀がいるか」


「いえ、それよりも僕に合う杖を見繕ってほしいのです」


「杖、か? それなら『グリットクロス』が」


「違います。『グリットクロス』を持つにはまだ僕は弱すぎる。私に合った杖が欲しいのです」


 そう断言する賢者ヨハネスの眼はたしかな決意を現していた。キリッとした顔になるともうイケメンで……とても腹が立つ。

 それはそれとしてなるほど、彼は自分を見つめなおしてちゃんと強くなろうとしているようだ。


「そういうことならば」


(【神眼】)


 どこかによさげな魔物はいないだろうか。

 業物級(メイクス)以上のランクの武器になると俺では無理だが一般級(コモン)ならなんとか作れる。武器としては一般級(コモン)って最低ランクだけどな。


 周りを探していると、雲の上の上空でワイバーンが飛んでいるのが見えた。ワイバーンならグリフォンと同ランクの魔物だしちょうどいいだろう。


(【サイコキネシス】)


 便利スキル、【サイコキネシス】で引き寄せる。

 ワイバーンが「え?え?」みたいな顔をしているのがけっこう面白い。


 ――ォォォ……


「な、なんだ? 魔物の咆哮?」


 当然、ワイバーン氏の状況など分かるはずもない賢者はキョロキョロと周りを見渡している。


 ――ォォォォオ………


「なんだ。何が起きている……」


 ――グゥゥォオオオオオオオオオオッッ!!


「サ、サクリードッ! 空だ! 空からワイバーンがっ!!」


 賢者から「空から女の子がっ」みたいなセリフをもらったところで無事致命傷を負ってワイバーンが地面に激突した。


「グ、グゥゥ……ッ!」


 『心域』から『天沼ノ神矛』、通称『テンショウ』を取りだす。

 悪いと思いながらもワイバーンの首を落とした。


「こ、これはサクリード殿が引き寄せたのか? ……ワイバーンの固い外皮を槍の一振りとは……」


「たいしたことではない。賢者殿もすぐにできるようになる」


「そ、そうですか……」


 槍を使ってワイバーンの心臓、というか魔石を取りだす。

 手のひら大の水晶がワイバーンから出てきた。うん、純度の高い良質の魔石だ。


 杖は魔石と魔力伝導率の高い素材があれば作れる。ミスリルなんかを使えたらいいんだが、そんな貴金属はここにはない。

 ということでその辺に生えている木を切って杖の形にした。


 あとは先っぽに魔石をくっつけて……完成!


「これでも十分に使えるものだ」


「これを僕に?」


「ああ、そのあたりの店で売っているものと性能は大差ない」


「確かにこの粗悪品でちゃんと戦えるようになれば……」


 賢者はうんうんと思案顔で頷いてから杖を受け取った。

 ごめんね、粗悪品で(ピキピキ


「世話になりましたね、勇者サクリード。ですが、やはり言ってきておきたいことがあります」


 杖を握った賢者は神妙な顔で言葉を発した。


「僕はお前が気に食わない」


「……そうか」


「だが今回の一件で認めた。お前の実力と僕の弱さを。心底頭にくるが、僕よりお前の方が上という世間での評価は正しかった」


「…………」


「だが、もう僕は負けない。必ずやお前より強くなってみせる!」


「…………ふっ」


「なにを笑うっ!」


「いや失礼。まあなんというか……やるじゃないか」


「なんだと?」


「すまない。口下手で上手く伝えられんだけだ。気にするな。そうだ、やはりこれを渡しておきたい」


 俺は『グリットクロス』を差し出す。


「いや、だからこの杖ははまだ……」


「杖にふさわしい強さを得たと思ったときに使えばいい。それまでは『心域』にしまっておけ」


「……ふん」


 賢者は一瞬躊躇いながらも最終的には受け取った。


「まあいいでしょう。それでは僕はもう行きます」


 おっ、敬語に戻った。

 お前呼ばわりとか、タメ口とかは彼なりの本気の証だったんだろう。

 あれ、でも金持ってないって言ってなかったっけ?


 などと考えているうちにも賢者はすたすたと歩きだしていた。

 その背中に声をかける。


「路銀なら貸すぞ」


「いりません。自分の足で歩きます」


 賢者は振り返ることなくそう答える。

 こっちだってお前のことは気に食わない。イケメンだからな。


 でも……顔抜きにしてもかっこいいじゃないか。

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