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年の暮れのある日、隆士は自分の携帯に不在着信が入っているのに気付いた。
普段はメールくらいでしかやり取りしない同期から電話であった。
めずらしいなと思いつつ、隆士はその同期に電話を掛け直した。
「もしもし。 めずらしいな。 どうしたん?」
と、隆士は軽い出だしで話を始めようとしたが相手は神妙な面持ちでそれに返した。
「宮ちゃん。 落ち着いて聞いてくれよ」
「お、おう。 え、どうしたん……」
「松もっちゃんが、亡くなった」
「へっ。 いや。 意味がわからへんねやけど」
「……俺だって信じられない。 でも聞いた話だと何日か無断欠勤が続いて、それで上司がアパート訪ねた時には、もう駄目だったらしい」
電話を切ってからも隆士の頭の中はしばらく真っ白で何も考えられない状態であった。
隆士は松本の友達と言うには微妙な立ち位置にいたが、それでもちょくちょく集まりに呼んでくれる松本にそれなりの親近感を感じていたのだ。
お葬式は関東の斎場で簡素に行われた。
火葬場に運ばれてくる棺。
遠く離れた実家から駆け付けた松本の親族はすでに最後の別れを終えたのだろう。
その棺の蓋は既に閉じられ、すぐそこにあるのに、その最後の姿を拝することはもはや出来なかった。
火葬炉からおよそ10メートルというところで我々は一人一人焼香をしていく。
およそ20名は来ていたであろう同期の人数が、彼の人望の高さを物語っていた。
こんなときに不謹慎かもしれないが、
もし自分が今死んだら、いったい何人の同期が駆けつけてくれるのであろうか。
浜口くらいは来てくれるだろうか。
などと考える隆士がいた。
そして思う。
俺は自分の職責から逃げて、そしてこうして今ものうのうと生き恥をさらしてる。
松本は自分の職責から逃げず、そして死んでしまった。
無責任な奴が生き残ったこの世界……。
……なんという不条理。
いい奴の方が死に急いでしまうこの世の中に隆士は違和感を禁じえなかった。
あのとき、もっと強く休職を進めておけば、あるいは、もしかしたら今回のような事態は避けられたかもしれない。
だが、もし本当に俺が会社に戻れないのを見て休職を思いとどまっていたのだったとしたら……。
彼の死の一因に自分が関わっていたことになるのかもしれない……。
そして松本は最後までその姿を棺の中から見せぬまま、火葬炉へと運ばれていくのであった……。




