21
個別説明会に出席する日がやってきた。
鈍行で片道1時間半、初めて来る県庁所在地である。
その会社は県庁所在地の中心駅から歩いて20分のところにあった。
説明会場に入り開始の時間を待つ。
参加者は全部で20人程度といったところか。
さて、先に結果から言うと、隆士は合同企業説明会のときと同じことを繰り返した。
採用担当者による業務内容説明・選考内容説明が終わり、合同企業説明会のときと同じように質問タイムが始まる。
質問は挙手制であった。
1人、そしてまた1人と質問を行い、それにともないまだ質問していない人数は減っていく。
何か、何かあるはずだ。
考えろ、俺!
なんとかしぼりだせ!
……。
……。
「他に質問ある方いらっしゃいませんか?」
数秒の沈黙が流れる。
しかし隆士の手は挙がらない。
「では質疑応答はこれで終了とさせていただきます。 最後に今後の選考日程なんですが~~」
結局、20人いて最後まで質問できなかったのは隆士ただ一人であった。
隆士は失意のうちに帰路につく。
特に何か運動をするでもなく、ただ話を聞いていただけなのに、体が異様に重く疲労感が半端ない。
……もう無理、限界。
隆士は帰りの電車に揺られながら、就職活動の継続を断念するのであった。
たかだか合同企業説明会2回、個別企業説明会1回で根を上げる隆士。
そんな豆腐メンタルを持つ男の未来に待つものは、暗雲しかないのである。




