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14歳の死

<20歳編>

【14歳の死】


とある田舎町で14歳の女子生徒がいじめが原因で自殺した。

自宅から近くの高層マンションの20階から両手を広げ、空でも飛ぶかの様に飛び降りたそうだ。

日付は11月26日。時間は20時半。マンションの管理人が侵入者に気付いた事にはじまった。オートロックをかいくぐって侵入してきた女子生徒はしっかりカメラに写り込んでおり、すぐに管理人に追われた。しかし管理人は少女のスピードに間に合わず20階のエントランスの手摺に立ちあがり、管理人の制止も無視して飛び降りたとのこと。

即死。

服装はかなり着衣の乱れがあり、飛び降りたものとは関係のないような乱れや破れがあったそうだ。

しかし20階からの落下ダメージの為、詳しくは判定出来なかった。

司法解剖の結果女生徒は集団で性的暴行を受けていたようで。

その細い体からは複数の精液と傷ついた膣が確認できたとの報告。

また手首や足首に強く押さえつけられたような跡がり、事の凄惨さを想像させた。


当日、夕方頃に近所のコンビニの監視カメラにも女生徒の姿は写っていた。数時間後そこからマンションに辿りついた時、既に髪も制服も乱れていたが住宅の監視カメラのぼやけた映像では分かりにくく。決定打に欠けた。

女生徒の自宅の机には【みんな嫌い】と走り書きが見つかった。また部活で作った数々の作品が破壊されていたそうだ。恐らく自分で破壊したものと思われる。

女生徒の部活は家庭科部。ファッションが大好きで将来はデザイナーになるのが夢だったそうだ。自宅には自分でデザインした衣服のイラストがあちこちから見つかったという。

女生徒の母親はこの事態を把握しておらず、そんな事になっていたのすらも気付かなかったと言った。

3つ上に姉がいるが、姉も同じく。妹の異変には気付かなかったと証言した。

父親に関しては、難しい年頃なのでそういうのは全て妻に任していましたと出張先からピンと来てない口調で述べたという。

状況として女生徒の死は、あきらかな事件性を指しており。家族は娘の自殺をいじめが原因とした。そして、その責任を全面的に学校に押し付けた。


さぁ、ここで大事なのは学校側の証言となる。

学校側はこう返した。

【調査結果】

・いじめのような事実は確認できなかった。

・女生徒はいつも明るく悩んでいるそぶりはなかった。

・また女生徒は塾を言い訳に夜遅くでも出歩く事があった。

・本校で数人の男子生徒と交際があったようだが詳細はプライバシーもあるので伏せてほしい。

・本校の男子生徒に確認を取ったが暴行するような事はないと確認が取れた。

・他校の男子生徒とも交友があったようだが詳細は分からない。


この回答はいじめよりも衝撃的な性的暴行についてあくまで個人の問題と言わんばかりの回答だった。

本人の男性関係の乱れではないか?責任は学校側ではなく、家庭での管理ではなかろうか?

この回答に警察もマスコミも揺れたが指して有意義な証拠も証言得られず。あっという間に年が明けた。

一向に前に進まない捜査状況に女生徒の両親は怒りを露わにしたが全てが起こってからは遅い。

性的暴行についてだが、精液が複数になると特定できなくなる。明らかな事件にも関わらず本人が飛び降りをしてしまった為、体に残された証拠が本人の血液で汚染され回収が出来なかった敗因を警察はやんわりと両親に伝えた。

また証言を回収する相手が同じ14歳であり、保護者からの承諾がなければ証言が聞き出せない難しさが更に上乗せされた。各両親は我が子を守るのに必死になり貝のように閉ざした。

何故もこんなに非協力的なのか?

調べた結果、それは女生徒の母親が学校の行事毎に自身の宗教の勧誘行為を行って居た為、保護者間ではかなり疎まれていた。

女生徒の葬儀も独特の儀式があるようで、生徒及び保護者は参列を見送る事態となった。形だけではあるが参列した担当の教諭と校長は門前で母親から返されたようだ。

以上の様な事があり私の所に母親本人から調査依頼が来た。

娘本人の自殺について真実が知りたいと。

涙をぼろぼろと床に落としながら握りしめていた女生徒の写真を机に並べた。

「そんな子じゃないんです…とっても優しい普通の女の子なんです。」

当時影で、あばずれとやじられた事が悔しくてたまらないのだろう。性的暴行について聞き出す際には手が震えきつく唇を噛み込むのが確認された。

本件は14歳で死を選んだ少女について調査する事とする。

また警察の機関ではないので調査した全ては証拠能力は、ないものとする。

上記納得の上母親は書面にサインをした。震えていた手が力強く名前を記載した。

事件が起こったのは6年前、14歳だったかつての同級生も今や20歳になっている。むしろ6年待ったのは得策かもしれない。今なら保護者の同意もいらず、個別にアポイントが取れる。

また、証言に関しては場合によっては証拠能力となり得るものもある。あまり期待させてはいけないと思い母親には【証拠能力は、ないものとする】と伝えたが6年の歳月が同級生の頑なに閉ざした、口を緩めている気がしてならなった。


「いじめ調査ってのは同級生の証言が大事なんだ。」

「じゃぁなんでこいつらこんなに口を閉ざしてるんですかね?」

隣で調査員の福田が資料を見ながら発言した。口が悪いがよく人見ている調査員だ。女性なので今回の以来を担当してもらう予定だ。

「閉ざすというか…口を塞がれた感じ。」

「あーね。保護者に?学校に?警察に?」

「それを調査しに行くんです。」

福田は感じ悪くにやりと笑った。いつも浮気調査ばかりなので飽きていたのだろう、福田が久々にやる気になっているのが見に見えて分かった。



【14歳の死】→【選別】へ続く。

続きます。

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