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22. 4月21日:イルミナイト王都

「まだ貴族街のごく一部しか調査していませんが、記憶水晶らしき物は見当たりませんでした。……知り合いの貴族の屋敷にお邪魔して中も見てみましたが、やはり見つかりませんでした」

「そうですか……。すぐに見つかるとは思っていませんから、気長に待ちましょう。また明日もお願いしますわ」

「お疲れ様でした、リリィ。今日はありがとう」


夕方、ベテルギウスの診療所では貴族街調査を終えたリリィが――本当は全く調査していないのだが――結果報告をしていた。診療所にいるのはベテルギウスとアイリスのみで、他は全て外出して対『エクソダス』のための作戦行動を取っていた。


「ところで、他の方々はどうしたのですか? 昨日はもうリゲルさんとアークトゥルスさんもいましたよね?」

「他の人達は別の作戦行動を取ってるわ」


リリィの話を聞いてメモを取りながらアイリスが答えた。


「別の作戦……?」

「『エクソダス』対策ですわ。移動用の転送ポイントを設定しています」

「そういう事ですか。確かに城下町は広いですから転送で移動できたら便利ですね。進捗はどうです?」

「まだ半分、といった所ですわね。まあ貴族街の調査が終わるまでに済めば良いですから、急ぐ必要もありません」

「……そうですか」


ベテルギウスはリリィに行っている作戦内容を伝えた――リリィが『ステラハート』の内情を探っているとは疑いもせず。

既にリリィはネビュラから記憶水晶(メモリクリスタル)関連の真実を聞いており、『エクソダス』に協力する事を約束してしまっていた。貴族街調査をしなかったのも、既に記憶水晶がない事を知っているためである。当然『ステラハート』の情報も話してしまっている。


「リリィは明日も同じように調査するの?」

「そうですね。別に急ぎの仕事もありませんし、明日も一日調査に回そうかと。……あなた方は明日も同じ事を?」

「そうですわね。他の作戦はまだ考えている途中ですし、今はできるのはこれだけかと」

「分かりました。……では、そろそろお暇してもよろしいでしょうか?」

「ええ、今日はありがとうございました」


ベテルギウスが例を言うとリリィは軽く会釈をして診療所を出ていった。


「さて……アーク達はもうしばらく帰ってきませんし、今日の話を纏めておきましょうか。少しだけですけど」

「そうですね。……ところで、作戦に関して1つ気になっている事があるのですけど」


アイリスは資料を纏める準備をしながらベテルギウスに質問した。


「何ですか?」

「『ステラハート』は7人いるんですよね?」

「ええ、そうですわ。それが何か?」

「まだ1人出会ったことのない人がいるのですが、何故姿を現さないのですか?」

「ああ……プロキオンですか。そう言えばまだお話してませんでしたね」

「プロキオン……?」

「いま彼女には王都外で別の仕事をしてもらっています。少なくとも記憶水晶捜索が終わるまでは続けるようにお願いしてますわ」

「別の仕事? ……何かは分かりませんが、『エクソダス』との戦いには参加しないんですか?」

「ええ、プロキオンは今の仕事に専念してもらいます。それに、もしかしたら『切り札』を用意できるかもしれない、と言っていましたし、それを期待していると言うのもあります」

「切り札……ですか」


『切り札』とやらが何の事かは分からなかったが、プロキオンが信頼されているのは間違いなさそうだ。


(プロキオン……。最近何処かで名前を見たような……?)


アイリスはリリィの報告を纏めながら考えていたが、残念ながら思い出すことはなかった。


************************************************



リリィは家に帰った後、早速ネビュラと連絡を取った。


「……ネビュラさんですか?」

≪リリィさんですか、どうでした? 彼女達の次の計画は?≫

「彼女達はしばらくの間、あなた方との戦いに備えて王都内での移動用転送ポイントを設定するようです。明日も行うようなので、ベテルギウス以外は王都内に散ると思われます。今日と同じ事をするとなると、夕刻から夜にかけて拠点の診療所に戻ってくるのではないかと」

≪そうですか……。こちらも急拵えですが準備は整いましたし、今は彼女達も油断しているでしょう。その時を狙って彼女達を奇襲しましょうか≫

「恐らく中にはシリウスもいますよ? 彼女も相手するのですか?」

≪彼女だけは厳しいですね。我々全員で当たってやっと……彼女はそれほどの強さを誇りますから。とりあえず彼女以外を王都から排除するだけでも十分です≫

「……分かりました。ただ、分かってはいるでしょうが決して民衆に危害を加える事の無きように」

≪ええ、もちろんです。それは十分に配慮します≫

「それと、先日お伝えした通り、『ステラハート』に協力している私の友人――アイリスにも手を出さないで下さい。彼女は恐らく彼女達に騙されているのです。でなければ、シリウスに襲われたのに『ステラハート』に協力するはずありません」

≪大丈夫です。先程申し上げた通り、『ステラハート』以外には決して手を出しません≫

「本当にお願いしますよ? 作戦が終わったらご連絡下さい。アイリスを説得に向かいますから」

≪承知しました。では、準備いたしますのでこれで……。≫


ネビュラは通信を切った。リリィはしばらく黙ったまま呆けていたが、大きく息を吐いて通信機をしまった。

明日は大きく事態が動く。どうなるか分からない。リリィはもう寝ようとして横になるも、不安を拭えず眠る事ができなかった。



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